三重県鳥羽市は全域が伊勢志摩国立公園に位置し、豊かな自然と温暖な気候、歴史文化に恵まれたところ。全国有数のカキ産地としても知られています。
もっとも生産量が多く、味のよさでも高い評価を得ているのが、浦村町で生産される「浦村カキ」です。
「浦村でカキの養殖が始まったのは昭和の初め頃、三重県の産地の中でも一番古い歴史があります」と話すのは、鳥羽磯部漁業協同組合 浦村支所理事の村田孝雄さん。
現在生産者は75軒で、年間生産量は約4500トン。三重県は全国4位の生産量を誇り、浦村町はその約70%を占める一大産地です。
浦村町の主産業は漁業。養殖カキを中心に、海女(海士)漁、網・カゴ漁、ノリやワカメ、ヒジキ、アカモクなどの海面養殖が行われています。
浦村カキは、黒潮と穏やかな入り江に囲まれた麻生浦湾で養殖されています。カキの餌になるプランクトンが豊富なため、大きく美味しいカキを育てるのに適しているのだそう。
「“食べやすいカキ”だとよく言われますね。苦みやクセも少ないので、これまでカキが食べられなかった人でも“浦村のカキなら食べられる”という声も多く聞きます。先人達が努力と工夫を重ねて養殖法を確立し、育ててきた浦村カキを多くの人に知ってほしいと思います」。
浦村カキは、海の上に浮かべた木製の筏に稚貝を吊るして育てる筏式垂下法で養殖します。品種は真ガキで、養殖期間は宮城や広島などの2年ガキより早く、1年で出荷できると言います。
カキの養殖は毎年10月初旬、「種さし」作業から始まります。「種」と呼ばれるカキの稚貝が付いたホタテの貝殻の中心に穴をあけ、長さ7mのロープに通して垂下連を作ります。3本一組にしたものを筏に吊るし、翌年4〜6月頃、1本ずつに分けてさらに大きく育てます。
種は宮城県のカキ産地、松島などから購入していますが、最近では地元産の種を作る取り組みも行われています。
翌年9月頃、大きく育ったカキを機械で収穫し、工場でサイズや目的別に選別。異物や不良カキを丁寧に取り除き、養殖ネットに入れて再び海中に戻し、「畜養」します。このときネットに入れるカキの数やネットを吊り下げる深さを調整することで、カキの形や実入りを整えます。
畜養で出荷に適した状態になったら、ネットごと水揚げ。殻についた泥や異物を高圧洗浄できれいに取り除いた後、浄化水槽に入れて滅菌海水で浄化し、出荷します。
三重県では「みえの安心カキシステム」として、生食用カキの出荷に関して国の基準規格に加え、独自の厳しい衛生管理基準を設けています。その一つが、紫外線殺菌海水による浄化の義務化。さらにカキ出荷シーズンには、養殖を行う海域の海洋調査やウイルスの保有状況を調べ、検査結果をホームページ上ですべて公開しています。
この取り組みを主導するのが「みえのカキ安心協議会」。この協議会の役員でもある村田さんに、カキの滅菌浄化について教えてもらいました。
「成体のカキは1日に約400リットルの海水を、餌となるプランクトンと一緒に取り込んで吐き出すといわれています。浦村町ではカキを出荷前に、紫外線殺菌した海水を入れた浄化水槽に18時間以上入れ、殺菌海水を取り込ませて細菌や糞を吐き出させます。海域状況に応じて水槽に投入するカキの数量を変えたり時間を延長するなど、安全で安心な浦村カキをお届けできるよう取り組んでいます」。
約10年前、ノロウイルスによる食中毒が流行した際、カキによる食中毒被害はほとんど無かったにも関わらず、偏ったメディア報道などにより消費者の誤解が生まれ、全国のカキ産地が風評被害を受けたことがありました。
「我々生産者も手塩にかけたカキを美味しく食べてほしいと願っています。きちんと管理したカキは安全ですので、正しい知識、情報を持って安心して味わってください」と村田さん。
浦村カキのほとんどは、市場を通さず生産者が個別に直売・出荷しています。シーズン中はパールロード沿いにたくさんのカキ小屋が並び、焼きガキをはじめ、様々なカキメニューが楽しめます(毎年11月頃〜3月末頃。※年により変わるので確認を)。お店では生カキや加工品も購入できるので、美味しいカキを目指して浦村を訪れてみてください。
2016年2月18日取材時の情報です。
ライター : 梅田美穂
施設名 | 鳥羽磯部漁業協同組合 浦村支所 |
住所 | 三重県鳥羽市浦村町1238 |
TEL | 0599-32-5002 |
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