多種多様の魚介類が獲れ、海の幸の宝庫として知られる三重県。アオサやワカメなどをはじめとした海藻類も豊富です。
ところが、ここ20年ほどは海藻の育つ藻場が減少していると言います。藻場の再生に向けて活動を行う、「一般社団法人海っ子の森」で代表理事を務める山下達已さんに状況を伺いました。
※写真:藻場再生に取り組むメンバーの皆さん
山下さんが藻場の再生活動に関わるようになったきっかけは、「磯焼け」という言葉を聞いたからだと言います。「そのときは言葉の意味も知らなかったのですが、たまたま鳥羽市水産研究所へ出入りしていて話を聞き、興味を持ったんです」。
磯焼けは、海藻が少なくなり海の生態系に影響を及ぼす現象のこと。海藻をエサにしたり産卵や生活場所にしていた魚が減るので漁獲量も減少し、漁師にとっても大問題です。地球温暖化や海洋汚染など地球規模の問題が背景にあると考えられるものの、直接的な原因はわからないそう。
「父が三重県南部で漁師をしていたので小さい頃から海に親しんで育ちましたが、当時はかきわけるほど海藻がありましたね」と山下さんはここ数十年で変化した海の環境について語ります。
潜水士の資格を持っていた山下さんが、3、4人の仲間とともに藻場の再生に関わるようになったのは10年ほど前から。海のボランティアとして、鳥羽市水産研究所の方が答志島の漁師さんたちと行っていた再生活動を手伝うようになりました。
その後、市民レベルの活動にしようと、サークルを「一般社団法人海っ子の森」として法人化し、今では10人ほどが主要メンバーとして関わっています。
植樹による森林保護と同じように、藻場の再生にも海藻の植林が必要だということで、自然の石にアラメ、カジメなどの種苗を取り付けて海に沈め、育てる方法で行っています。鳥羽市水産研究所が20年来研究を進めてきた鳥羽工法をもとにしたものです。「かつてはテトラポットを沈めるなど大規模事業として行われてきたんですが、この方法なら自分たちの手で進めることができます」と山下さん。
環境教育の一環で、山下さんはふるさとの三重県紀北町沿岸に海のビオトープを作りました。「そこでは稚貝の放流や海岸の清掃、海の植林などを通して、子どもや地元の方々に海の環境を意識してもらうような活動を行っています」。
他にも東京の飲食店で活動や特産品をPRするイベントも開いているそうです。
「日本は美味しく海藻を食べる文化があります。自然を守り、資源を守ることは文化を守ることにもつながります」。
2015年6月4日取材時の情報になります
ライター:田中マリ子
施設名 | 一般社団法人海っ子の森 |
住所 | 三重県津市東丸之内26-12 MECビル4F |
TEL | 059-221-0909 |
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