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“近代養蜂発祥の地”である岐阜のハチミツをはじめとして、 とことん岐阜のものにこだわったお店「ふーちゃんSHOP」
2013.05.13 更新

ケヤキ並木通りのはちみつSHOP

ハチミツを中心に、岐阜県の特産品が多く並ぶ

本郷町通りに面した「ふーちゃんSHOP」

金華山の麓の町・岐阜市の中心部から西寄りにのびる本郷町通りは、
約600mも続くケヤキの並木道があることで知られています。
約100本のケヤキが道の両側に植えられたのは、30年以上前のこと。
今では12mもの高さに成長し、春から夏にかけての緑陰、秋の色鮮やかな紅葉、
冬の雪景色と、四季折々の変化が、緑多い岐阜のまちでも指折りの彩りと潤いを与えてくれます。
ケヤキ並木の一番西の南側、岐阜西通りと交差する少し手前の古いビルの1階に、
雑貨屋さんを思わせるかわいらしい店があります。
これが、藤本芳徳さん・智子さん夫妻の営む「はちみつと雑貨のお店 ふーちゃんSHOP」です。

本郷町通りを覆うケヤキの並木。深緑が涼やかな木陰を演出している

オープンして約1年半。白い壁に囲まれた明るく清潔な店内に並ぶのは、
岐阜県産をメインとするいろいろなハチミツ。
レンゲやアカシア、そしてミカン、クローバー、リンゴなど種類も豊富です。
少しずついろいろな蜜を試食させていただきましたが、色が違えば味もさまざま。
舌に乗せると、それぞれの花の香りがほんのりと口から鼻に抜け、
砂糖や人工甘味料などとはまったく異なる独特の風味とコクが感じられます。
ほかには旧春日村(揖斐川町春日地区)の「傳六茶園」のお茶や
山岡細寒天に飛騨山椒、岐阜市の「ヒロおじさん」手づくりジャム、天然酵母食パンなどなど。
民間でこれだけそろっているのは珍しいと思えるほど、とことん岐阜産にこだわったお店です。

岐阜に住んで「農山村問題」と出会う

藤本夫妻はともに京都の出身。大学で出会った先輩・後輩の間柄だそう。
芳徳さんは学生時代に都市の中心市街地の衰退現象と住民参加のまちづくりを研究し、
就職後は名古屋の公益法人で地域振興の専門家として活動していました。
芳徳さんの仕事は、地域の抱える様々な問題を調べて地域振興の計画を立て、
実現に向け必要な支援をすることでした。
芳徳さんは、学生時代に指導を受けた教授から聞いたある言葉がずっと頭の中にあったといいます。
それは「都市は農村に浮かぶ島のようなものだ。
近隣の農村地帯が豊かで持続性がない限り、都市が栄え続けるのは難しい」という言葉です。

都市近郊で育った芳徳さんは農山村についての見聞がなく、
機会を見つけて農山村の問題を勉強したいと思っていました。
ところが、持ち込まれる仕事の多くは都市部のもの。
目の前の仕事に追われながら年月が流れて行きました。
このころ、芳徳さんは「少しでも山の近くに」と、岐阜市に住んで名古屋に通う生活でしたが、
家と職場を往復するだけで地元のことはほとんど何も知りませんでした。
そこで「独立して岐阜の地域振興の仕事を受けよう」と一念発起、
10年の節目を区切りに勤め先を退職し、自営でコンサルタント事務所をスタート。
地元での活動を模索する中で、引き受けた仕事のひとつが縁になり、
ローカル鉄道を生かしたまちづくりに取り組むNPO法人「樽見鉄道を守る会」と出会います。
当時の法人代表者から「ぜひ仲間になってほしい」と頼まれた芳徳さんは、
その活動の意義に共感するとともに、コンサルタントとしてではなくボランティアとして参加することで、
農山村の暮らしを学びながら、これからの岐阜のまちづくりに一県民の立場で関われれば、と考え、
NPO活動に加わったのでした。

都市と農村を結びつけることのできる仕事を

妻の智子さんと芳徳さん。
商品を販売することで、“第二のふるさと”岐阜県に心からエールを送る

妻の智子さんの理解も得て参加したNPO活動でしたが、
芳徳さんは農山村の現状を理解すればするほど責任の重さを自覚するようになり、
「とことんまでやってみよう」と決意、
コンサルタント事務所に持ち込まれる案件もすべて断って、無償でこの活動に没頭したのでした。

そのころから「交通インフラとしての樽見鉄道をまちづくりに生かそう」という機運が沿線の市町に生まれ、
鉄道事業者とNPOとの役割分担も見えるようになり、
やがて、芳徳さんの中で一つの新しい決意が生まれます。
それは、NPO活動で得た経験に基づいて、ビジネスの仕組みで都市と農村を結びつけることによって、
樽見鉄道沿線にとどまらず岐阜県全域を対象とした地域振興に取り組もう、という決意でした。

まず、芳徳さんは、「岐阜県県民ふれあい会館」の中にある
「(公財)岐阜県産業経済振興センター」が始めた「ぎふ起業家育成塾」の第一期生となり、
今までの観光地めぐりとは違い農村の生活に直接ふれるようなテーマで、
都市部から農村に人を呼び込む旅行企画の事業化を考えました。
塾を卒業して模索していたとき、学生時代のアルバイトでものを売る仕事が
とても楽しかったことを思い出しました。
「人を動かすより、ものを動かすほうがよいかも」そう考え直した芳徳さんは、
作ったものが売れることで農山村の暮らしが少しでも上向き、
跡継ぎの人が希望をもてるようになれば、そしてまちの人にも良いものを届けたい、
との思いから、岐阜の特産品の物販事業を思い立ちました。

でも、何を売ったらいいのでしょう。
そんな時、ふと気づいたのが、妻の智子さんが遠くの友達に会うとき、
手土産にする岐阜らしいものを見つけにくいということでした。
手軽に持ち運ぶことができて、岐阜らしいものはないか…思い悩む芳徳さんの頭に浮かんだものは、
旅行企画のために県内を巡っていた時に出会ったハチミツだったのです。
「そうだ、ハチミツなら岐阜らしいものとして全国に紹介できるはず!」

調べてみると、岐阜県は近代養蜂発祥の地。
明治30年代に養蜂業を始めた渡辺 寛氏が明治42年に月刊誌『養蜂之友』を創刊。
養蜂の普及と欧米の優良品種の導入、養蜂器具の作成にとりかかり、
明治43年には第1回の「全国養蜂家大会」が岐阜県で開催され、
わが国近代養蜂の基礎が確立されたという歴史があることもわかりました。
「近代養蜂発祥の地・岐阜でハチミツを売ろう」そう決めた芳徳さんは、
さっそく県内の養蜂家を訪問。
何のためにハチミツを売るのかという自分の思いを話して理解を求めたところ、
「たくさんは分けられないが」と、取り引きを許してもらうことができました。

ネットショップから実店舗へ

種類も豊富な岐阜県産のハチミツ

ハチミツやプロポリスのはいったのど飴や
「内堀醸造」のフルーツ入りのお酢など、関連商品も充実

ケチャップや食パンなども人気

商材は手に入れたものの、小売りはしろうと。
当時、岐阜県が力を入れていたこともあり、まずはネットショップに挑戦。
ところが数ヶ月経ってもほとんど売れず、
うかうかしているとせっかく仕入れたハチミツの賞味期限が来てしまうと焦りが。
そんな時、NPO活動のラジオ出演をした帰り、JR岐阜駅前の「岐阜シティ・タワー43」の2階デッキで、
当時毎週日曜日(現在毎月1回)に、県内の農家や加工品販売グループなどが集まって、
野菜や惣菜などを販売するマルシェが開かれていること知ったのでした。

すぐに申し込み、ハチミツのほかにもいろいろ取り揃え、
勇んで出店したものの、やはりなかなか売れません。
しかし、半年ほど経ったとき、売り上げが上がるのはハチミツが売れた時であることに気がつきました。
そこでハチミツを中心にした商品展開にしたところ、売り上げが伸びてきたのです。
「最初は品物の種類が多い方が売れるだろうと思っていましたが、
焦点をしぼらないとお客さんにはつかみどころのない店になってしまうことがわかりました。
それで、ハチミツを極めようと思ったのです」と、芳徳さん。
そのうちお客さまの方から「ハチミツ屋さん、お店はどこなの?」とか
「遊びに行きたい」と言われるようになりました。

そんなとき、智子さんが退職。
名古屋で長年勤めた会社を辞めたあと、
岐阜で再就職したもののなかなか新しい仕事になじめず苦労する様子の智子さんを、
心配して見守っていた芳徳さんは、智子さんがいきいきと働ける場所が必要だと考えるようになりました。
智子さん自身もまた、休みの日に手伝ったマルシェでの対面販売などの経験から、
店があれば売れるのではないかという手ごたえを感じていました。
新しい勤め先を離れたころ、今の店舗にあたる物件を見つけたのです。
「何より素敵なケヤキ並木が気に入って。
隣が郵便局で立地条件としてはとても良いと思い、出店に慎重な主人を説得しました」と、智子さん。
こうして、平成23年10月1日、藤本夫妻の「はちみつと雑貨のお店 ふーちゃんSHOP」が誕生したのです。

消費者と生産者の良き出会いの場をつくる

ハチミツのテイスティングができるのも魅力の一つ。
風味も色も蜜源植物によって異なる

ハチミツの販売に携わることで、養蜂業の抱えているさまざまな問題も浮き彫りになってきました。
その一つは岐阜県の代表的な蜜源植物であるレンゲの減少です。
「レンゲ蜜が採取できなくなっている原因をみていくと、
農家・農地の減少、レンゲの花を好んで食べる外来種の害虫の増加など、
さまざまな環境問題、社会問題が背景にみえます。
また山間部でも針葉樹の人工樹林の増加により採れなくなってきている蜜もあります。
養蜂家さんたちは蜜の採れる草や木を一生懸命に植えているのですよ」

「ふーちゃんSHOP」には、ハチミツ好きな人にはたまらないサービスがあります。
それは、ハチミツ全商品のテイスティングができること。
これは藤本夫妻が以前、山梨に旅したときに立ち寄ったワインセラーで、
惜しげもなく、ワインのテイスティングをさせてくれたことに感動して、
ハチミツでもやってみようと思ったのだそう。
「ハチミツはし好品。種類によって味が全然ちがいます。
自分にとって一番おいしいと思うハチミツを見つけていただけたら」と、芳徳さん。
「私は専門的な能力や知識をいかして人の役に立ちたいと思い起業しました。
今、小売りの道に入った以上は商人として、ハチミツを始め岐阜の特産品を中心に、
できるだけ質の良いものを手ごろな価格で提供するのが仕事です。
また、店は生産者の出品の場でもあります。
『みつばちに学んで、楽しく暮らす』、
NPO活動も続けながらこの店を消費者と生産者の良き出会いの場となるような所にしていきたいですね」
と話してくれました。

編集員のココがオススメ!

ハチミツは自然がくれた贈り物。でも、身の周りであまり扱っている店を見かけません。「ふーちゃんSHOP」のようにまちの中にそういうお店があることで、消費者も買いやすくなるし、商品のほとんどが地元岐阜の特産品なので、胸をはって、県外の人たちに岐阜のお土産としてあげることができます。ハチミツのテイスティングができるのも楽しみ。人工では決して出すことのできない、野生の風味と魅力があります。

(松島頼子)

詳細情報

施設名 はちみつと雑貨のお店 ふーちゃんSHOP
住所 〒500-8302 岐阜市本郷町5‐24 本郷ビル1F
TEL&FAX TEL:058-253-4182
営業時間 10:00~18:00
定休日 木曜日/第1水曜日
E-mail lovegifu@alpha.ocn.ne.jp
URL はちみつと雑貨のお店 ふーちゃんSHOP

2013年3月13日現在の情報になります。

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