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琥珀色の醤油「しろたまり」。
昔ながらの天然醸造の味わいを復元
愛知県碧南市
2016.11.13 更新

生揚しろたまり使用
薄口醤油よりもさらに淡い色合いの「白醤油」。素材そのものの色を生かせるため、和食のプロも御用達の調味料です。古くから醸造業の盛んな愛知県碧南市で江戸時代後期に生まれました。
時代とともに材料も作り方も変遷するなか、市内の蔵元「日東醸造」は本来の味わいを取り戻したいと再現を試みます。試行錯誤を経て世に送り出したのが「足助仕込三河しろたまり」です。社長の蜷川洋一さんにその魅力と誕生の経緯をお聞きしました。

甘みが特徴。煮物や吸い物などに幅広く活用

「碧南近辺では、一般的なお醤油のほかに、溜まりと白醤油を常備する家庭も多いんです。素材に応じて、濃厚な味と色をつけたいときは溜まり、彩りや風味を生かしたいときは白醤油と使い分けてきました」と蜷川さん。
独特な香りで甘みが特徴の白醤油。煮物や吸い物、麺類などに幅広く使えるそうです。地域の家庭に加え、料亭や割烹などでも重用されます。
日東醸造は発祥の地で創業以来ずっと白醤油を造り続けています。しかし時代は移ろい、昭和の後半には昔とは異なるものになっていました。材料が、入手しやすいアメリカ産の小麦や大豆が主体だったからです。

日東醸造社長 使用

3代目社長の蜷川さん。碧南の醸造文化をより多くの人に知ってもらう活動にも力を入れています

かつての味を目指し、材料や製法を見直し

「おじいさんが造っていた、かつての白醤油を再現したい」。
昭和60年頃、日東醸造では先代社長のこの思いから、伝統の味づくりが始まりました。
「本来の“白醤油のおいしさ”を目指し、材料を戻し、作り方を見直しました。材料は当時使っていた大豆をやめて、小麦と塩だけに。仕込みはかつて木桶でしたがもはや希少で、全国から探してきたのです。5年ほどかけて少しずつ合計16本を集めましたね。保存料も化学調味料も使わない、木桶による天然醸造です」と蜷川さん。
一般的な白醤油の仕込みには、小麦を95%、大豆5%ほど使います。一方、この製品は大豆を使わず、小麦だけ。白醤油づくりの原点に戻り、もともとの材料にしたのです。
「ところが、どこか味がもの足りない。いろいろと試した結果、小麦を通常の2倍使うとよいことが分かりました」。
ようやく納得の味わいを再現しましたが、もう一つ問題がありました。それはJAS法の規定で、大豆を使わないと「醤油」の表示ができないこと。小麦のみで造るこの製品は「醤油」と名乗れません。理想の白醤油を造っても、法律上、白醤油にはならないのです。
「昔、白醤油はしろたまりと呼ばれた歴史があります。そこでかつて親しまれていた、しろたまりの名称にしたのです」。

商品 使用

右が「足助仕込三河しろたまり」。愛知県産小麦、伊豆大島の伝統海塩を使用。150ml340円(税別)、300ml490円(税別)。ホームページのほか、名古屋市内の百貨店や高級スーパーなどで販売。「三河白だし」は枕崎産本鰹、愛知県産干し椎茸などを釜で煮出し、「足助仕込三河しろたまり」と「三州三河みりん」を合わせたもの。400ml 890円(税別)

地元産小麦、天然水、自然環境。しろたまり造りを妥協なく

さらに、蜷川さんが社長に就くと、材料の産地を地元に絞り、小麦を北海道産から愛知県産に限定しました。次に、醸造にとって重要な水を探し回ります。
「出合ったのが愛知県足助の山里です。閉校となった小学校の校庭に井戸があり、やわらかい天然水が湧き出ていました。当初は水を碧南の工場へ運ぶつもりでしたが、あまりにも自然環境が素晴らしく、決意したのです。この地に蔵を造ろう、と。というのも足助は標高720メートルと夏でも涼冷。醸造に適した気候です。高い気温では、しろまたりの色が濃くなるスピードが速くなりますからね。旨みのためには長期間仕込みたい、しかし長く仕込むと色が濃くなる。色を濃くさせずに長く仕込むにはどうするか。涼しい足助なら、通常より長く仕込めるというわけです」。
一般的に、白醤油の仕込み期間が2〜3カ月に対し、しろたまりは4カ月ほど。足助の蔵では、琥珀色の透き通った色で、雑味の少ないすっきりとした旨みが生まれます。

足助風景 使用

足助の仕込蔵がある愛知県豊田市大多賀町。豊かな軟水と山間の気候がしろたまり造りに最適。同社は毎年イベントを行い、地元の人々と交流を深めています

桶 使用

木桶で仕込む伝統的な醸造法を復活させました。木桶は吉野杉を3年ほど乾燥させ、時間も手間もかけて造られたものだそう

プロと地元に愛されてきた調味料を、広く家庭でも

「足助仕込三河しろたまり」を使うと、料理の風味が引き立つのはプロのお墨付き。一方で、地元以外ではそれほど知られておらず、一般の醤油ほど手頃な値段ではありません。
「白醤油やしろたまりのが“良いもの”“必要なもの”と広く認められれば、これからも継承されていきます。この味や香りを知ってもらう機会を増やし、もっと料理に活用してほしいです」。
日東醸造では全国で「しろたまりワークショップ」を実施。同社が室で仕込んだ麹で、参加者それぞれが仕込み、3カ月後に自家製しろたまりができあがる体験イベントを行っています。
しろたまりを使うと、いつもの炊き込みご飯やだし巻きたまご、おでん、茶碗蒸しなどがぐっと上品で繊細な味わいに仕上がるはず。おせち料理やお祭りのご馳走にもお勧めです。天然醸造の安心とおいしさを、食卓に取り入れてみてはいかがでしょう。

ワークショップ使用

日東醸造の麹を使い参加者が仕込むワークショップ。これまでに全国で1100人以上が体験しました

お問い合わせ
施設名 日東醸造株式会社
住所 愛知県碧南市松江町6丁目71番地
TEL 0566-41-0156
営業時間
定休日
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