岐阜県美濃地方で作られている「みょうがぼち」という郷土菓子があります。
そら豆で作った餡を小麦粉の生地で包み、ミョウガの葉でくるんで蒸したもの。
「ぼち」とはこの地方の方言で団子の意味だそう。
ミョウガの季節にだけ作られる、岐阜ならではの初夏の味を紹介します。
みょうがぼちについて知りたいと思い調べていたところ、ちょうどJAぎふ常磐支店で講習会が行われるとのことを聞き、おじゃましました。
迎えてくれたのは、JAぎふ女性部常磐支部支部長の河野さんと、JAぎふ常磐支店職員の川島さん。毎月1回、料理やクラフトなどの講習会や旅行を行い、部員たちの交流の機会を設けています。
この日は28名の部員が参加して、会場はとてもにぎやか。講師役の河野さんの指導のもと、みょうがぼちと同じく岐阜の郷土食である朴葉ずしの作り方を実習します。みなさん農家の女性たちだけあって手際よく、おしゃべりしながら和やかに講習会が進んでいきます。
講習会の様子。餡を丸める人、生地を伸ばして包む人、葉でくるむ人と、みんなで手際よくぼちを作っていきます
ミョウガの旬は6月から8月頃。葉には殺菌作用があり、古くからおにぎりなど食品を包むのに使われたそう。色をよくするため塩水に浸しておき、一枚一枚きれいに拭いて準備します
「みょうがぼちは、ミョウガの葉があるときだけ、6月から7月頃にかけて作ります。この辺りの農家さんならたいてい畑にミョウガがありますし、昔から家庭で作っているおやつです。田植えの時期なので、手伝ってもらった人へのお礼に差し上げたりしますね」と河野さん。
まずは餡作りから。乾燥そら豆を圧力鍋などでやわらかくなるまで煮て砂糖と塩を加え、水分を飛ばしながら煮詰めます。
「餡の水分をよーく飛ばすのがポイント。水気が残っていると、出来上がりがべちゃべちゃになってしまうの。煮詰めるのに1時間くらいはかかるかしら。鍋をかき回していると餡が腕に飛び散って、それが結構熱いのよ」。
餡となる乾燥そら豆。ちなみにこのあたりでは空豆のことを斗豆(とうまめ)と呼びます
続いて生地作り。ボウルに小麦粉と上新粉を入れ、砂糖と塩を入れて沸騰させた熱湯を少しずつ加えながらよく練っていきます。
これは小麦粉のグルテンを引き出すため。最初べたべたしていた生地がよく練っていくうちに粘りがでてきて、まるでお餅のように。耳たぶくらいの堅さになったら、ラップをかぶせて30分ほど寝かせます。
粉の中に、砂糖と塩入りの熱湯を少しずつ注ぎ入れながら箸でよくかき混ぜていきます。アツアツのうちに手早くすることがポイント
小麦粉からグルテンを引き出し、お餅の状態になったら成功!
いよいよ、ぼちの形にしていきます。寝かしておいた生地をちぎってうすく伸ばし、小さく丸めたそら豆餡を包んで卵形になるよう整えます。
それを青々としたミョウガの葉でくるりと包み、蒸し器で7〜8分蒸せば、みょうがぼちの出来上がり。
そら豆餡は1個あたり約25グラム。生地は約30グラムをちぎり、薄く伸ばして餡を包みます
葉の巻き終わりを下にして、重ならないように並べて蒸します。色鮮やかに蒸し上がりました!
できたてを早速頂きました。ほかほかのみょうがぼちを鼻先に近づけると、ミョウガの葉のさわやかな香りがふわっと広がります。
葉を剥いてひとくち頬張ると、そら豆餡のトロッとした舌触りと優しい甘さ、ねっとりとした生地の食感が素朴で、どこかなつかしい味がします。甘さがしつこくないので、夏のおやつにぴったりです。
「夏を感じさせるいい香りですよね。毎年、みょうがぼちを作ると今年も夏が来たなあと感じます。今は市販の乾燥豆を使いますが、昔は自分の畑で穫れた豆を乾燥させて作ったものです。豆を育てて、乾燥させて、餡を作って、葉っぱを洗ってと全部やるわけですから、昔の人はすごいですよね。なつかしい昔からの味を、これからも大切にしていきたいです」と河野さん。
講習会に参加した方たちからはこんな声も。
「うちのお父さん、普通のお饅頭は食べないけど、みょうがぼちなら一度に3つは食べるの」「独特の香りと食感だから、よその人は苦手な人も多いみたいね。孫も大好きなので、毎年必ず作ります」。
地域の人に長く愛され続けている郷土のおやつなんですね。
家庭で作られるものですが、岐阜市内や周辺の和菓子屋さんで製造販売しているお店もあるので、岐阜を訪れた際にはぜひ試してみてください。
ただし初夏、ミョウガの季節限定ですのでお早めに。
ミョウガの葉の緑色が目にさわやか。ころんとした素朴な形もなつかしい気持ちになります
岐阜の郷土食、朴葉ずしも作りました。朴の葉の上に酢飯を広げ、好きな具材を載せて葉を二つ折りにし、重しをして一晩寝かせます。昔は農作業の日のお弁当として作られたそう
2014年6月18日取材時の情報です
ライター : 梅田美穂
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