めっきり寒さが厳しくなり、あたたかい温泉が恋しくなる季節ですね。
今月の特集は、岐阜県奥飛騨地方の「温泉熱」を利用した取り組みに注目。
温泉熱という地域資源をさまざまな形で活用する、人々や事例を紹介します。
今回、温泉熱を利用した施設としてまず注目したのは「新穂高センター(以下、 センター)」。今年4月に岐阜県高山市の北部、奥飛騨温泉郷にオープン。北アルプスへの登山や観光の入口となる、新穂高ロープウェイの駅の目の前です。
このセンターは、観光案内や登山指導、遭難救助の拠点として、高山市が建設したもの。施設内には「奥飛騨温泉郷観光案内所」と「新穂高登山指導センター」が設置されています。
取材日の奥飛騨地方は前夜からの雪が続いており、センターに到着すると辺り一面雪景色。そんな天候の中、施設を管理する高山市上宝支所の担当職員、中林剛さんにお話を伺いました。
「建物の特徴としては、自然エネルギーを活用していることです。まず、地域資源である温泉熱を、床暖房、路面融雪、屋根融雪などに利用しています。さらに太陽光の活用として、太陽光発電型の外灯や、太陽光を屋内に有効に取り込むためのライトシェルフ(窓の外側に付ける反射庇)を設置しています」。
そのほか、ペレット燃料を使用するストーブ、LED 照明器具、節水器具などを採用。施設全体での省エネルギーレベルは対策基準等級4相当とのこと。現在高山市では省エネルギー施策に力を入れており、イメージリーダーとしての役割が期待されている施設です。
「床や外のコンクリート通路の下、そして屋根にパイプを通して、温泉熱で温めたお湯を流しています」。木の床を触ってみると…ほんのりあったかい! 「まだストーブなど暖房を使用していませんが、この部屋寒くないでしょう? 床からの暖気で部屋の空気が暖まるんです」とスタッフの中山みさをさん。確かに屋外の厳しい寒さと較べると、春のような暖かさです。
また建物の中は、床から天井まで木がふんだんに使われており、清々しい木の香りが漂う気持ちのよい空間。「環境にマッチするよう、スギやヒノキなどを使っています。使用した木材はすべて岐阜県産で、そのうち70%は高山市産のものなんですよ」と中林さん。なるほど、ここでも地域資源を活用しているんですね。
続いて、熱交換を行う機械室を見せてもらいました。新穂高センターへ供給されている源泉の温度は68〜70度あり、この熱を利用して水を加温する熱交換システムを採用しています。熱交換器は複数あり、床暖房、屋根融雪、路面融雪など目的ごとに分かれています
実は高山市が温泉熱を公共施設に利用するのは、このセンターが初めての試みなんだそう(※)。「温泉の出るところじゃないと出来ないですからね。奥飛騨温泉郷は豊かな源泉に恵まれた地域ですので、ぜひ活用しようということになったんです」。
※平成17年の市町村合併前、旧町村時代に利用している施設を除きます。
センター内の観光案内所では、奥飛騨温泉郷をはじめ高山市内とその周辺の観光地やイベント情報を紹介しており、常駐スタッフに相談することができます。
また一年を通じてトイレは24時間利用可能で、早朝に出発する登山客たちにも好評。夏の登山シーズンには、県警山岳警備隊や北飛山岳救助隊が常駐し、登山事故に備えるなど、登山者のサポートも万全です。
このセンターへの思いを、中林さんに伺いました。
「ここは槍ヶ岳、穂高岳、双六岳、笠ヶ岳など北アルプスへの飛騨側からの入口なので、登山のベースキャンプとして、安心して利用して頂ければと思います。そしてこの地区のランドマークとして、みなさんに親しまれる施設となることを願っています」。
北アルプスの美しい自然や温泉を味わいに訪れた際には、地域ならではの資源を活用したこのセンターにもぜひ立ち寄ってみてください。
2014年12月2日取材時の情報です
ライター : 梅田美穂
施設名 | 新穂高センター |
住所 | 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂710-9 |
TEL | 0578-89-2458(奥飛騨温泉郷観光案内所) |
営業時間 | 10:00〜16:00(11月〜3月)、10:00〜17:00(4月〜10月)※ゴールデンウィーク、夏休み、紅葉時期は9:00から開館。詳しくは問い合わせを ※トイレは24時間利用可能 |
定休日 | 年中無休 |