奥飛騨の温泉熱は、様々な形で活用されています。その1つに源泉を利用して栽培されているバナナがあります。 奥飛騨温泉郷の栃尾温泉にある栽培農家「奥飛騨ファーム」を訪ねました。
熱帯、亜熱帯地域で栽培されるバナナですが、標高800メートルの地にあり、冬は気温マイナス5〜10℃という奥飛騨のハウスですくすくと育っています。
ハウスに一歩足を踏み入れると、夏のような気温とカメラのレンズが曇るほどの湿気。ハウスの中は、気温30℃前後、湿度はほぼ100%と、バナナに最適の環境だと言います。バナナは温度が高いだけではダメで、湿度が高いほど生育が早いそう。
ハウスの床には樋が苗木に沿って設置され、24時間(夏は朝晩のみ)、65〜75℃の源泉が流しっぱなしになっています。ハウス1棟の中に樋が8本あり、ハウス1棟あたりに流す源泉は、1分間に20リットルぐらい。源泉の蒸気がハウス内に立ちこめ、高温多湿の環境を生み出しています。
雨樋のような形の樋の中を源泉が流れる、シンプルな仕組み
奥飛騨ファーム代表の滋野亮太さんによれば、栃尾温泉は、源泉の温度が高く、湯量が豊富で、植物を枯らすような成分が含まれない単純温泉のため、バナナ栽培に適しているとか。
通常、沖縄の露地栽培では開花するまでに1年ぐらいかかるところが、このハウスでは、9〜10ヶ月で開花します。 温泉熱を利用することで、コスト削減ができ、環境にもいいと言います。
花はバナナハートと呼ばれる赤紫色の苞(ほう)に包まれています
手作りのハウスに源泉を引き、試験栽培をスタートして6年。 栃尾温泉にある宿の3代目という滋野さんは、植物好きが高じてバナナ栽培が仕事になったそうです。
「20歳の頃から育てていた鉢植えのバナナを実家の風呂場に置いておいたところ、実がなったんです」。温泉を栽培に利用できるかもしれないと思い、手作りのビニールハウスの中で試しに栽培したところ上手くいったと言います。その後、ハウスを建てて、本格的に栽培を始めました。
バナナは、野生種の種から育てるか、吸い芽(子株)を株分けして増やします。 栽培から出荷まで1人で担ってきた滋野さん。現在は、沖縄の石垣島にある契約農家で育てた株を奥飛騨のハウスに移し、苗木になるまで大きく育てるというリレー方式で栽培しているそうです。
現在、ハウスは全部で2棟。自動換気の設備が施され、温度が高くなりすぎると外気を取り込む仕組み
出荷するバナナの苗木を手にする滋野さん
世界に500品種ほどあるというバナナの中から主に寒さに強い品種を選び育てています。
いちばん多いのは、スーパーミニバナナ。背丈が60センチほどで実がなる品種です。背丈が1メートルぐらいになる実付きバナナも人気があるそうです。ほかにも寒さに強くバニラ風味の味がするアイスクリームバナナなど、約15品種のバナナを育てています。バナナ以外では、グリーンナッツオイルやカカオなど約20種類の植物を栽培しています。
バナナの苗木は年間で約4000本出荷します。春から夏にかけてが出荷のピークだと言います。
「ホームページを見た個人のお客さんがほとんどですが、その8割が男性です」。リピーターも多く、いろんな品種を求めて育てているのだとか。思ったより需要が多く、年々増えていると言い、ハウスも増やしていきたいと滋野さんは語ります。
星のような形をしたグリーンナッツオイルの実
2014年12月2日取材時の情報になります
ライター:田中マリ子
施設名 | 株式会社奥飛騨ファーム |
住所 | 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷栃尾21 |
TEL | TEL0578-89-2404 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
定休日 | 不定休 |
kasagatake@nifty.com |