岐阜県の中南部、中津川市の最北端に位置する加子母(かしも)地区。
94%が森林という加子母は、古くから上質な東濃ひのきの産地であり、林業、木工業の町として知られています。また、ミネラルトマトや飛騨牛の肥育など農業も盛ん。
自然豊かなこのまちに伝わる、「いももち」を紹介します。
今回訪れたのは「道の駅加子母」。駅長の安藤直樹さんにお話を伺いました。
「いももちは、加子母の小郷地区で古くから栽培している『西方(にしがた)いも』というサトイモを使います。芋が収穫される10月頃から2月頃まで作られるもので、加子母の家庭で受け継がれてきた郷土料理です」。
西方いもの特徴は、ねばりがあってきめ細かく、貯蔵性が高いこと。「地元では『ねばいも』とも呼んでいます。普通のサトイモよりほっくりとしていて、煮物などにすると、とてもおいしいですよ」と安藤さん。
西方いもは飛騨美濃の伝統野菜に指定されており、近年は加子母の主要農産物のひとつです。
いももちの材料はこの西方いもとお米だけ。いたってシンプルです。
道の駅に併設された食堂では、秋から冬の季節メニューとして、いももちを提供しています。作り方を料理長の米田昌弘さんと、スタッフの桂川智子さんに教えてもらいました。
「まず西方いもの皮を剥き、下茹でします。このとき少し塩を入れて味付けしておきます。芋がやわらかくなったら、お米を研いでセットした炊飯器に煮汁ごと加えます。水加減はおかゆを炊くときくらいの感じ、多めですね」と米田さん。
炊きあがりがやわらかいほうが、いももちもやわらかくなるのだそう。お米6合に対して皮を剥いた芋800グラムが目安です。
炊きあがったごはんと芋をすりこぎでつぶし、よく混ぜていきます。「目安は芋の形がつぶれてなくなるまで、はんごろしという状態ですね。」。
西方いもがとれる季節になると、毎年必ず作るという桂川さん。慣れた手つきでどんどんつぶしていく様子は、お餅をついているよう!
「西方いもは粘りが強いので、だんだんお餅のようにまとまっていきます。はい、これでOK」。
出来上がった生地は熱いうちに手で丸めます。時々表面に水を付けるのは、「表面をツルンと滑らかにすることで、焼き上がりがきれいになるから」とのこと。
成形後、フライパンで焼きます。両面に軽く焼き目がついたら、いももちの完成!
「あったかいうちにどうぞ」。出来たてのいももちは、表面はパリッと香ばしく、中はやわらかくて粘りがあり、お餅でも焼きおにぎりでもない不思議な食感。芋とごはんのほのかな甘さもどこか懐かしく、いくつでも食べられそう。加子母では生姜醤油を付けていただくのが一般的だそう。
「私の家では食卓にホットプレートを置いて、焼きながら食べるんです。いももちを主食におかずはおつゆくらい。子供も大好きで、みんなでたくさん食べますよ」と桂川さん。
自身も小さい頃から食べていて、母親から作り方を教えてもらったといいます。「加子母の家庭に伝わる、素朴な料理ですよね。私も伝えていきたいと思っています」。
「本来は家庭料理でお店で食べるものではないのですが、特産の西方いもと郷土の食を伝えたいという思いから、食堂でお出ししています」と米川さん。最近は作らない人も増えており、「『なつかしいね』と食べに来てくれる年配の方や、若い方からの注文も多いですよ」。
食堂で干し柿が縁取る窓の向こうに広がる山々を眺めながら、お茶と一緒にいももちを頂いていると、なつかしくて優しい気持ちになります。素朴でおいしいいももちを味わいに、ぜひ加子母を訪れてみてください。
2014年11月18日取材時の情報になります
ライター : 梅田美穂
施設名 | 道の駅加子母 ゆうらく館 |
住所 | 岐阜県中津川市加子母3900-29 |
TEL | 0573-79-3319 |
営業時間 | 8:30〜17:00 |
定休日 | 元旦休み(食堂は年末年始休み) |
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