「ソマカツオの塩切り」は、カツオ漁が盛んだった南伊勢町に古くから伝わる保存食。全国的にカツオが揚がる土地で作られてきたカツオの塩漬けの一種です。
この地域でも、神事のお供え物などとして昔は各家庭で作られていましたが、最近ではほとんど作ることがなくなりました。
郷土の味を復活させたのが、南伊勢町で家族とともに民宿「とよや勘兵衛」を営む羽根豊樹さん。 昔ながらの製法を生かしつつ美味しく食べやすくした「ソマカツオの塩切り」について、お話を伺いました。
ソマカツオの塩切りは、偶然のきっかけで商品化をすることになったと言います。
「以前から自家用にカツオの塩漬けは作っていました。秋から冬にかけて獲れる脂ののったカツオを漬けて翌年の1、2月に食べていたんです。ただ、作りすぎてしまったことがあり、残っていたものを半年後に食べたら美味しくて…。それから本格的にソマカツオの塩切りを作るようになりました」と羽根さん。
2012年度(平成24年度)の「みえのお宝食材大賞」を受賞し、南伊勢町のブランド認定品として郷土を代表する味の1つになり、遠くから注文が入るほどの人気です。
材料はソウダガツオの中のヒラソウダという種類で、このあたりでは「ソマ」と呼ぶそう。「美味しい魚ですが、生では食べる機会は少ないですね。脂が多く足がはやいので、日持ちがしないことから保存食にしていたと思います」。
ヒラソウダを半分に開き、塩をすり込んで元の形に戻したものを70〜80尾ずつ重ねて樽に入れて重しをします。伝統的な製法では漬け込み期間は2ヶ月ほどですが、羽根さんは3ヶ月以上ねかせることにより、じっくり熟成させてまろやかな味わいになるよう仕上げています。
「最初は1尾700〜1000グラムあったのが、水分が抜けて200〜300グラムぐらいになります。漬け込むと水分や内蔵液が出てきて色もだんだん黒っぽくなってきます」。
熟成させたヒラソウダは、内蔵を取り除き、スライスしてパック詰めします。 身をこわさないようにして薄く切るのが、至難の技だと言います。これができるのは、家族の中でも羽根さんだけだとか。
発酵させることで旨みが凝縮され、独特の味わいを醸し出すソマカツオの塩切りは、お酒にもよく合います。宿では、海士としても活躍する羽根さんが獲るサザエやアワビをはじめとした新鮮な魚介とともに、ソマカツオの塩切りも味わうことができます。「お茶漬けにしても美味しいですよ」と羽根さん。
伝統的な郷土の食を再現しつつ、新しい郷土食作りにも余念がない羽根さん。
今はソマカツオのミンチを唐辛子やにんにくを入れた地元産のオリーブオイルに漬け込んだ「カッチョビ」の商品化に向けて研究中です。新たな郷土の味が誕生するのを楽しみにしたいですね。
※ソマカツオの塩切り 1パック500円(税込み) 「とよや勘兵衛」や東京にある「三重テラス」で直接購入、または通販で購入可能
2014年6月7日取材の情報になります
ライター:田中マリ子
施設名 | 有限会社 とよや勘兵衛 |
住所 | 三重県度会郡南伊勢町礫浦153番地 |
TEL | 0599-64-2038 |
営業時間 | - |
定休日 | - |
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