長〜くつながった木のベンチ。これ、「ツナガルベンチ」といいます。
見ていると何だかワクワクしてきませんか?。
このベンチが生まれたのは、岐阜県中津川市にある木工業の盛んな町、付知町。
今回は、木の町とそこで生まれたベンチのお話です。
中津川市付知町は、700年前から伊勢神宮式年遷宮の際に良質の檜を納めてきた、「御神木の里」として知られる木材の産地です。豊かな木材資源を背景に、古くから建築や木工などの産業が盛ん。現在も町の多くの人が木工業に携わって生活しています。
付知町に建築事務所を構える早川泰輔さんもその1人。この町で生まれ育ち、建築士としてさまざまな木造建築や木工制作に携わってきました。
ある日、製材所を営む友人の北原信太郎さんから相談をもちかけられます。
「木に関わる仕事をしている仲間が集まって、何かできないだろうか?」。
自分たちにできること、そしてやりたいことは何なのか。議論を重ね、たどり着いたのは、「今という時代にみんなが寄り集まって、何かを共感し、次の場所につなげていく。ひとりでなく、仲間うちだけでなく、みんなで一緒に共有できることをやってみたい」という思い。
もちろん、付知の特産である「木」も使いたい。そうして「ツナガルベンチ」が誕生しました。
ベンチをつなげることにしたのは、「なんかこう、ダーっとつなげてみたら、面白いんじゃないかなって。それにさ、つながると気持ちいいでしょう。ものも、人の気持ちも」と北原さん。
2012年、二人を中心に木工業に携わる小池修哉さん、伊藤文郎さん、辻絵里さんら町の人々が集まり、「つながるベンチの会」プロジェクトがスタート。ベンチの材料は地元産の檜や杉、栗を使い、メンバーが分業で制作しています。
販売はホームページが中心。昨年は町のイベント「つけち森林(もり)の市」や音楽フェスなどに参加し、会場に集まった人たちみんなでベンチをつなげました。購入して終わるのではなく、つなげることでベンチが完成します。
「購入した人が自分のベンチを同じ場所に持ち寄って、一緒につなげる。長くつながったベンチを見て、人の気持ちがつながることを実感してほしい」(早川さん)。
その日その場所で出会った、誰かのベンチと自分のベンチがつながる。それはどこか、ひとと手をつなぐことにも似ています。そのとき感じた気持ちや共有した時間、風景はきっと忘れられない思い出になるはず。すてきな試みですね!
また、付知の木工業を伝え、ものづくりの楽しさを知ってもらいたいという思いから、子供たちを対象にベンチを作るワークショップの活動も行っています。
「付知では木工業の後継者が年々少なくなっています。子供たちに町の文化を知ってもらい、将来ここで働いて暮らしていく意識づけも進めていきたい」(早川さん)。
「その土地で受け継がれているものは、そこに行かないと分からないことが多いと思います。付知は木の文化のあるところで、それを伝える手段のひとつがツナガルベンチ。発信することでよその地域、地方とつながって、お互い“それ面白いね”ってコミュニケーションを取るきっかけになったら」(辻さん)。
木で出来たベンチがどんなものをつなげていき、つながることでどんな風景が見えてくるのか。ツナガルベンチのこれからが楽しみです。
ツナガルベンチも参加するイベント「つけち森林の市」とは、年に一度、町の木工業者が集まり、さまざまな企画で「木」を紹介するもの。木工業の盛んな付知町ならではのイベントです。
会場では木材や木工品の即売会、加工、木造家屋の建築実演、木工職人の作品コンテストなどが行われ、毎回多くの人が訪れます。24回目となる今年の開催は5月3日、4日、5日の3日間。会場は「道の駅花街道付知イベント広場」です。
このイベントを運営する中津川北商工会付知支部「つけち木工の会」の皆さんにお話を伺いました。
「職人がブースを出して、オリジナル家具や木工品を販売します。職人の技術と地元の素材をぜひみてほしいです」(早川さん)。
「木で生活している人間が、得意なことを宣伝する場所。職人との会話も楽しんでください」(桂川さん)。
「自分たち職人にとっても、1年に1回の一番楽しい3日間。たくさんの人にきて欲しいね」(熊沢さん)。
木や木工の魅力に触れられる「木」のお祭り。楽しそうです! もちろん「ツナガルベンチ」のイベントもありますよ(5月4日のみ)。
ゴールデンウィークはちょっと足をのばして、木の町・付知町へ出かけてみませんか?
【参考URL】
中津川北商工会付知支部「つけち木工の会」
2014年2月9日取材時の情報になります
ライター:梅田美穂
施設名 | つながるベンチの会 |
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