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手づくり温泉で地域振興をはかる「かみいしづ温泉入浴施設運営検討委員会」
2014.02.20 更新

手づくり温泉施設「湯葉の湯」をオープン

「湯葉の湯」のある「堂之上コミュニティセンター」

大垣市上石津町時地区は滋賀県、三重県と境を接する県境の地。
西方には平安の昔、盗賊・熊坂長範が隠れ住んだという伝説の山・烏帽子岳がそびえ立ち、
古くから伊勢・近江に通じる拠点として栄えてきました。
そんな時地区の堂之上で泉源が掘り当てられたのは、平成17年のこと。
地下1,500メートルから湧き出た温泉(湯量:毎分63.2リットル 源泉温度:29.5度)は、
過疎化に悩む地域の人々にとって観光資源としての期待を感じさせ、温泉施設建設の夢を与えました。
翌年、上石津町(当時は養老郡)は大垣市と合併。
上石津村時代も含めて51年間の歴史に幕を下ろすと同時に、
温泉施設建設の夢は大垣市の課題として引き継がれました。
それから8年、大垣市は温泉施設建設に慎重な態度をとってきました。
これに対し旧上石津町の人々は、牧田・一之瀬・多良・時地区の有志らによる
「かみいしづ温泉入浴施設運営検討委員会」(桑原政明委員長)を発足させ、
様々な角度からその可能性や温泉施設建設による経済波及効果などを検討。
同時に大垣市に対し、建設の実現を働きかけてきましたが、
足湯体験だけでなく温泉として体験したいという声が上がってきたため、
住民有志が堂之上自治会の協力を得て
泉源のそばにある堂之上コミュニティセンターの一部を改修。
この3月23日までの予定で、手づくり温泉施設「湯葉の湯」の実証実験が始まりました。

「堂之上コミュニティセンター」の横にある温泉スタンド。午前9時~午後7時まで営業。
気軽に家庭で天然温泉が楽しめる。温泉の購入には、上石津地域事務所などで販売している温泉コインが必要

(左)コミセンの中に入ると温泉営業日には「湯葉の湯」ののれんが下がっている
(右)男湯・女湯の入り口

「木の駅」で出荷された間伐材を燃料に薪ボイラーを稼働

「湯葉の湯」の名前の由来となった「湯葉神社」。
1649年の創建と伝えられ、境内には杉の巨樹が生い茂る。

薪ボイラーに薪をくべる三輪千加子さん

実験が始まって約1ヵ月。
初めて訪れた「湯葉の湯」は、巨樹が生い茂る古の宮・湯葉神社の前にありました。
温泉施設名の由来になった神社です。
「湯葉の湯」は源泉が29.5度と低いため、42度の適温になるまで沸かさなければなりません。
そのために必要なのが薪ボイラー。
大垣市と環境省から支援を受けてオーストリアから導入しました。
薪ボイラーはコミュニティセンターの裏に設置された小屋の中にあります。
営業日にボイラーを稼動させるのは、委員会のメンバーで地元出身の三輪千加子さん。
小柄で華奢な女性ですが、故郷を思う気持ちはだれにも負けません。
「営業日には最初午前10時半ごろからボイラーを稼働させ、
その後時間をおいて、だいたい1日2~3回ぐらい焚きます」とのこと。

ボイラーのある小屋の中と外には薪が山積みになっており、
ボイラーの上ぶたを開けて薪を放り込み、下から火をつけます。
1回に使用する薪は約4束。1束250円なので、電気代と併せても、
1日のコストは2~3,000円で抑えることができるといいます。
薪は3年前から住民有志で取り組み始めた、地元の山から間伐材を伐り出して出荷する
「木の駅 上石津」で出荷されたもののうち、
見栄えなどの問題から市場に出せないものを安く買いとって使っています。
杉や桧、松といった針葉樹がほとんどですが、よく燃えるそうです。
ボイラーの隣りには3トンもの水を貯めるタンクがあります。
タンク内には温泉水が循環するパイプが通っており、タンク内の水をボイラーで沸かすことにより、
パイプ内の温泉水も温められるというしくみです。

(左)ボイラーの後ろにある貯水タンク
(右)木の駅で出荷された薪

癒しの手づくり温泉が人と人との仲を取り持つ

湯葉の湯の看板娘・三輪千加子さん

千加子さんの仕事はボイラーの稼動だけではありません。
営業が始まると番台ならぬ机の前に座って入浴に訪れる人々の受付から集金、
最後はお風呂に入って掃除までして帰るのです。
取材当日、午後1時を少しまわったころ、最初のお客さんが現れました。
しばらくするとまた一人……みなさん、時地区に住むご近所さんです。
初めての人もあればすでに何回か来ている人もあり、口々に
「家の風呂とは温まり具合が全然違う」
「ここに来るとみんなと話ができるで楽しい。知り合いばっかりやから話題には事欠かんで。
普通の公共浴場では話ができん」「温泉に来ると元気になれる」と、楽しそうです。
待ち時間やお風呂の後の休憩タイムには、野菜の栽培や鳥獣害についての情報交換も行われるのだとか。

(左)この日、一番に来た近所のおじいさん。入浴者は名前と住所を書いてお金を払う
(右)順番待ちの間、座敷で談笑。窓からは時地区の象徴・烏帽子岳が見える

杉の間伐材で作られた湯船の定員は2名ですが、営業開始してまもない時間帯は訪れる人も少なく、
一人でゆっくりと温泉を堪能することができます。
温泉の泉質はナトリウム‐塩化物泉(低張性弱アルカリ性低温泉)。
肌にまとわりつくような滑らかさがあり、なめると少ししょっぱいそう。
「私はすごく冷え性なんですが、
温泉に入った夜は体がいつまでもポカポカして湯冷めしにくく、ぐっすりと眠れます」と千加子さん。
脱衣場にはポットが置いてあって水を飲むことができ、
待合室となるコミュニティセンターの座敷にはお客さんや近所の人からの差し入れで、
干し柿やみかん、御菓子などが並べられており、自由に食べることもできます。
現在の入浴者数は1日平均20人程度。
つい先日は地元の時保育園の子どもたちが温泉を見学に訪れ、
後でおじいちゃんと一緒に入浴に来た園児もいたそうです。
先日は烏帽子岳の登山の後に訪れた人が
「登山の後に温泉に入れるのはとても気持ちがいい」と喜んでいたとのこと。
日本は温泉大国。
しかし、「湯葉の湯」のような、コミュニティセンターを利用した手づくり温泉はそうざらにはないのでは?
温泉は元来湯治場といい、温泉の効能を利用して病気やケガを治す場所として、広く開放されていました。
「かみいしづ温泉入浴施設運営検討委員会」が本来市に求めていた趣旨とは異なるかもしれませんが、
上石津の豊かな自然を生かした保養の場として、地域の人々のふれあいや健康増進の場として、
また「木の駅」の取り組みを通じて地元の山林整備の一助を担う活動として存続していってほしいと思います。
今年度の実証実験は3月23日で終了しますが、
来年度も続けてやってほしいとの声が上がっているため、再延長の方向で考えているそうです。

地元産の杉の間伐材で造られた浴室。一度に入れるのは2名まで。
シャンプー・リンス・石けん等は持ち込み。

編集員のココがオススメ!

石けん、シャンプー、リンス、タオルと風呂桶をもって、近所にもらい風呂をするような感覚で気楽に訪れることのできる天然温泉。「湯葉の湯」はそんなイメージの貴重な温泉です。そこに行くと体も心も温かくなる素朴な場所。あなたもいっぺん入りに来てみませんか?

(松島頼子)

施設情報

団体名 かみいしづ温泉入浴施設運営検討委員会
問い合わせ先 TEL:0584‐45‐3046(委員長宅)
URL えぼしの里だより
温泉施設 岐阜県大垣市上石津町堂之上733番地2 堂之上コミュニティセンター
営業日 水・土・第2、4日曜日 午後1時~午後8時(受付:午後7時まで)
~3月23日まで
入浴料 大人300円 子ども100円 ※保育園以下無料

2014年1月18日現在の情報になります。

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