5月初旬、大垣市の南部にある「農事組合法人 大垣南」のほ場には、
マーガレットの花を小さくしたような純白のカミツレの花が一面に咲き誇っている。
近づくと、甘いリンゴに似た香りが鼻腔をくすぐる。
カミツレとはハーブとしておなじみのカモミールのこと。
その歴史は古く、4千年以上前のバビロニアですでに薬草として用いられていたとされ、
日本には19世紀の初めにオランダから渡来したという。
ハーブティや入浴剤、芳香剤としても人気が高い。
実は大垣はカミツレの一大産地であり、昨年は約2haのほ場でほぼ7tを収穫。
その生産量は日本一といわれている。
「栽培に至る経緯は、当時、『大垣南営農組合』では米の生産調整による休耕田の活用として
何か良い作物はないだろうかということで探していたところ、
『カミツレ研究所』から大垣市にカミツレの栽培依頼が来たそうです。
そこで、市から『大垣南営農組合』に話があり、3年ほど試作をした後に、
昭和59年から本格的に栽培を始め、『大垣市薬草組合』が発足しました。
今年でちょうど30周年になります」と、名和組合長。
「カミツレ研究所」とは、印刷会社の社長が
「あらゆる方々の肌と健康に良いものを作り、世の中のお役に立ちたい」と立ち上げた、
オーガニックスキンケアブランド「華密恋」の製造メーカー。
東京本社だが創業者のふるさとであり長野県北安曇郡池田町に事業所があり、自社農園を持つ。
しかし、それだけでは収量を確保することができないため、大垣市に話がきたのだ。
カミツレは可憐な花だが草丈は70~80cmにもなり、稲の3~5倍もの地力を吸い上げるという。
元肥に300~350kg、追肥に150kg、さらに10aあたり100~150kgの米ぬかを与えるが、
一度に効果を求めるのは難しいという。
カミツレ栽培専用の機械がないため、すべてが手作業で行われ、とても手間がかかる。
種をまくのは9月中旬~下旬にかけて。
ハウスの中で発芽まで管理した後、ほ場に植え付け、必要に応じて除草を行い、2月上旬に追肥をする。
5月中旬に刈り取りを行い、天日干しをした後、ハウスに収納。
十分に乾燥したら細かく切り分け、花と茎を分けて袋詰めにし、出荷する。
最近は地球温暖化が進み、開花が早くなった。
開花すると早い段階で成長が止まるため、収量が減少する。
また、組合員の高齢化など課題も多い。
この5月10日には、薬草組合主催によるカミツレの収穫体験と栽培講習会が行われた。
「少しでも多くの方々にカミツレを栽培していただき、
より良い製品ができるよう、組合員一同頑張っています」と名和さん。
「華密恋」は名古屋市内の百貨店や大垣市内の薬局でも販売されている。
カミツレ(カモミール)はハーブの中でもポピュラーで親しみやすい品種。実は大垣が栽培日本一だと知って、そうなった経緯などを知りたいと思い、ようやく今回それが実現しました。大垣の風土で健康的に育ったカミツレを使った製品は、本当に安心して使える化粧品の一つです。
(松島頼子)
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大垣市経済部農林課 TEL:0584-81-4111(代表) |
2013年5月9日現在の情報になります。