長良川の郡上鮎と言えば、グルメ通をうならせる味覚はもちろん、
姿形の良さまでが全国に知れ渡るほど。
そんな郡上鮎は釣り人の人気も半端ではなく、
郡上鮎を釣るための郡上竿が昭和の初め、地元の職人たちの手で生み出されました。
そして、昭和の前半には4〜5軒の郡上竿製造所があったものの、
今ではこれから訪ねる福手福雄さんだけが、郡上竿職人として製造を続けています。
瀬が多い中で大物鮎を狙うために、竹製の郡上竿は製造工程の要所要所で
独特の作り込みが成された結果、釣り人の支持を集めてきました。
福手さんが竿作りを始めておよそ60年。
この間、昭和40年代に普及し始めたグラスファイバー製、
そして現在主流の軽い10m超のカーボン製に押され、
重く7m程度だった竹竿はほとんど見られなくなりました。
それでも、郡上竿について「竹くらい気持ちの良い、
掛かった瞬間のビビビッと体に響き伝わるものは、カーボンでは分からないね」。
郡上竿作りでは最も古い父親の影響で、小さい頃から川が大好きだった福手さん。
20代の頃は、大金が手に入るほど鮎が釣れ、
この土地で金になる商売は養蚕か鮎釣りと言われるような時代でした。
今でも、大会で入賞を重ねた釣り名人として知られています。
「だいたい11月は竹切りの時期、実際の竿作りは1月から4月まで」と話す福手さん。
竹切りの場所は、愛知県豊田市や三重県桑名市で、毎年決まっています。
竹はヤダケ他2〜3種、1年生か2年生か、オスメスなどを見分け、作る竿の種類に合わせ竹を選ぶそうです。
例年6月初めの鮎釣り解禁に向け出荷所の準備があることと、
竹の曲がりを直すため火で炙る竿作りが暑く感じられるようになるため、
5月に入ると竿作りはいったんお休み。
岐阜県郷土工芸品に指定された郡上竿の職人である福手さんには、もう一つ、大切なお仕事があります。
それは郡上鮎出荷所。郡上漁協が指定する4軒の出荷所のうち、1軒がこちらなのです。
出荷所とは、釣った郡上鮎の引き取りと販売を行う、郡上漁協の共同事業のこと。
ちなみに取材前日は、25kgの引き取りがあって、15箱を宅配便で発送しました。
意外にも、夏のイメージが強い郡上鮎は、秋もおススメなのだとか。
美味しい子持ち鮎が11月まで獲れます。
「うちに言ってくれれば、すぐ送りますよ」。
大物の郡上鮎は次第に数を減らしているのではないか。特に、長良川河口堰の運用とこの10年で急増したカワウの荒らしは、長良川の生態系に影響を与えているかもしれない。福手さんはこの点を心配していると、取材中に話されていました。 出荷場のお仕事は、家族向けの小口発送から企業のお中元向け大口発送まで、問い合わせに応じられます。鮎釣りに関してのご相談も、きっと良い情報が得られるお店です。 (小穴久仁)
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住所 | 岐阜県郡上市美並町三戸1054-1 |
TEL/FAX | TEL/FAX:0575-79-2283 |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
2011年7月14日現在の情報になります。