南北に細長い木曽谷は田んぼが狭く、まして酒米を作る土地ではないとされてきました。
これに対し、「地酒は自分の土地の米を使うこと」を掲げ、
酒米作りに乗り出した造り酒屋が、江戸末期慶応元年創業の中善酒造店です。
酒造好適米ひとごこちの栽培を始め3シーズン目、
その手応えを取締役・販売管理責任者の南俊三さんに語ってもらいました。
平成21年の全国新酒鑑評会と関東信越国税局酒類鑑評会で出品酒が全部門入賞、
同年の長野県清酒品評会では首席優等賞を初受賞。
多くの造り酒屋と同じく、日本を代表する酒造好適米の兵庫県産山田錦を使い、
この年まで受賞を重ねてきました。
しかし、小さな造り酒屋としては輝かしい成功を遂げた傍らで、
南さんをはじめ皆さんは山田錦から長野県産へ切り替える決断をします。
まず試した原料米は、すぐ近くで作られるあきたこまち。
「それなりにまあまあのお酒に」になったそうですが、やはり酒米には及びません。
次に探した調達先は、安曇野の北に位置する松川村で、
契約栽培をお願いした「ファームいちまる」の美山錦。
こちらの農家は、一等米だけをふるいに2回掛けて出荷してもらえるため、
とても上質な酒米が手に入りました。
美山錦は株がやや古く、芯白も出にくくなってきた点を除けば南さん達が望む酒米で、
蔵の看板とも言える大吟醸と純米吟醸に使っています。
この美山錦に代わる酒米として、自家栽培米へ選んだ酒米がひとごごち。
木曽町の南隣、上松町で3シーズン目の収穫を終えました。
米作りは「何をやっても体中筋肉痛」と南さん。
今シーズンの収量は4反で2トン強、今では使う酒米の1割以上を占めるまでになり、
純米吟醸に使われています。
酵母を利用してアルコール発酵を促す酒作りはまさに微生物相手。
ワインなど果実酒作りの単発酵に対し、
デンプン(酒米)の糖化とアルコール発酵が同時進行する並行複発酵によって醸造されるため、
原料米の良し悪し以上に、酵母が機嫌を損ねてしまうと美味しい酒は生まれるはずがありません。
「蔵の清潔さを怠ったり、作業を雑に行ったりすると、味に出てしまう」とのことです。
蔵へ移動し靴を履き替え、杜氏の森川貴之さんに案内してもらいました。
酒作りは三段仕込み、つまり
1.添:最初の仕込み、2.踊:酵母を増殖させて(躍らせて)、
3.仲:麹と米と水を添え仕込みの倍の量を追加、4.留:麹と米と水を仲仕込みの倍の量を追加 します。
あとは1日1回、櫂入れをしながら「酵母の発酵と共に発せられる熱で、
温度が自然にゆっくりと上がるよう、細かな温度管理をします」と森川さん。
自家栽培米に切り替え、気持ちの面で変わったことをお聞きすると、こう答えてくれました。
「僕らにしか作れない酒を目指すとしたら、それは原料から。
もちろん、他県に行けば良質の米があってそれはそれで良いと思いますが、
日本一の酒ではなくここでしか作れない酒に携わりたいと言う気持ちが強くなりました」。
南さん・森川さんをはじめ蔵の皆さんは、酒作りのことも自身のことも、楽しそうに話してくれました。こんな方々ですから、酒蔵見学の申し込みは気軽に承ってくれますし、品定めの相談も親身に乗ってくれますよ。 ネットショップも開店中!ぜひご覧下さい。 (小穴久仁)
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住所 | 長野県木曽町福島5990 |
TEL/FAX |
TEL:0264-22-2112 FAX:0264-24-2130 |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | 日曜祝日 | URL | 中乗さん どっとこむ – 中乗さん あるよ! | shopmaster@nakanorisan.com |
2011年3月12日現在の情報になります。