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【工芸特集】伝統工芸士によって創り出される藍色の模様…有松絞り「張正」
2011.04.07 更新

愛知県名古屋市緑区の有松。ここは国の伝統工芸品にも指定されている「有松絞り」が有名な地域です。
今回は、「板締め絞」と「折縫いミシン絞」という技法を用いている「張正」をご紹介します。

職人が正確につくりだす、美しい模様たち

有松絞りは、木綿布を藍で染めたものが代表的で、その技法は職人よって実に様々。
「張正」は、その中でも「板締め絞」、そして「折縫いミシン絞」という技法を用いています。

落ち着いた藍色を思い描く有松絞りも、もちろん初めはただの真っ白な綿の布。
13メートルもの長さのその布は、半田など三河地方から取り寄せているそうです。
板締め絞、折縫いミシン絞どちらの技法も、まずはこの布を細長い帯状に折る、下折りという工程から。

「板締め絞」は、その折りたたんだ布を、描き出したい柄に合わせ、さらに折りたたみます。
折り方は4種類あり、伝統工芸士・鵜飼良彦さんの手によって、
正確に、正三角形や二等辺三角形といった形に折られていきます。

80歳となった今でも、現役を続ける良彦さん。

折りたたんだ布を板でしめ、ひもで固定をした状態で、とうとう染めの作業へ。
折りたたまれた布の、どの場所に染料を入れるか、
そしてどの程度染料を浸透させるかの違いで、出来上がる模様が変わってくるのです。

三角形の頂点を染めるのか、底辺を染めるのか、
さらにはどのくらいまで染料につけこむのかで、模様が変わってくる。

(左)豆絞りは染場にあるこの釜で染める。
染めるときは、ボイラーをたき、釜からは湯気が…。夏は暑く、大変な作業。
雪花絞は、バットに入れ、ガスコンロで染める。
(右)染めた布は水でキレイに洗う。

良彦さんの隣で、弟の正己さんが作り出すのは「折縫いミシン絞」。
下書きされている線は、
「こんな柄をつくりたい」と自分自身でつくったという厚紙でできた定規を使って描きます。
線をたどって、手動ミシンを動かす手つきもまた、兄・良彦さんの折る手つきと同様、正確かつ軽やか。
職人の腕の確かさがひしひしと感じられます。
板締め絞とは異なり、折縫いミシン絞は全部を染料の中へ。
ミシンで縫われた糸の部分だけが白く残り、それが柄となるのです。

(左)独自の定規で、細長く折りたたまれた布にさらさらと線をひいていく正己さん。
(右)あて紙、あて布をした状態で、下書きされた線の通り、手動ミシンで縫い上げていく。

(左)板締めからできるのは「雪花絞」と呼ばれる花のような模様や、格子の模様。
(右)こちらが折縫いミシン絞。板締め絞と違って全体を染料につけるため、白地が少ない。

伝統工芸を受け継ぎ、次の世代へと

数多くある有松絞りの技法の中には、時代とともに途絶えていくものもあるのが現実。
「板締め絞のひとつである「豆絞り」も途絶えてしまった技法のひとつでした。
それを60年前、父と叔父、そして祖父が復活させたんです。また、模様そのものは残っていた「雪花絞」も、
物が不足していた戦争時代に赤ちゃん用のおしめなどに使われていたため、
浴衣に使うのは避けられるようになっていて…。
12年ほど前、『もう一度この美しい柄を浴衣として着てもらいたい』との想いで、
浴衣用のものにも力を入れ始めたんです。」
と話すのは良彦さんの娘・小百合さん。
ご自身も夫婦で、良彦さんからその技術を学んでいる途中です。

(左)復活させた豆絞り。
(右)現代はピンク、緑、黄色、オレンジ、紫、水色など紺以外の染料もある。

「主人は、以前はサラリーマンでした。
でも、絞祭りに参加したり、手伝っているうちに
『やはりこの伝統を残したい』という気持ちが高まっていって…。
初めは反対していた父を説得し、4年前から学び始め、今もまだ毎日が勉強です。
手が違うと染め具合も違ってくる。やはり長年やってきた父の技術はすごいですね。」
後継者が少なくなっている伝統工芸。有松絞ももちろんその例外ではありません。
美しい模様に染め上がった布には、厳しい現実の中でも、
伝統を受け継ぎ、次の世代へとつなげていく職人の想いが強く込められています。

編集員のココがオススメ!

伝統工芸士の一寸の狂いもない正確な手の動きに感動!板締め絞、折縫いミシン絞以外にも有松絞にはたくさんの技法が。張正の近くにある有松・鳴海絞会館では、様々な技法の絞りや歴史資料などがわかりやすく展示されているので、こちらもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

(大島清花)

店舗情報

会社名 有松絞り 張正
住所 愛知県名古屋市緑区鳴海町米塚40
営業時間 9:00〜17:00
定休日 土・日曜日
TEL/FAX 052-621-1044
URL 有松絞り 張正

2011年2月21日現在の情報になります。



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