“japan”の和訳はもちろん日本ですが、もう一つ、漆/漆器の和訳を持つこともご存知ですか。
かつては海外の目に、漆工芸品が日本の旗手と映ったのかもしれませんね。
中仙道木曽路の北部を産地とする木曽漆器は、
漆器として津軽塗や会津塗、輪島塗などと並ぶ経済産業大臣指定伝統的工芸品。
お話は箸作りが専門のうるし塗り工房 コバヤシ漆器工房主、小林登さんから伺いました。
プラスチック製品や化学塗装製品が溢れる今日、まず小林さんは、
漆器が決して高価なものばかりではなく、身近に使える道具でもあると強調されました。
安全性や使いやすさを考えることが作り手の大切な点は当然とし、
規格製品にはない手作りならではの良さを、商品へ込めています。
専門は箸作り、主な材料は木曽ひのきと天然漆。
漆を塗る前に木地を整えるため下地を塗らなければなりませんが、
この原料である錆土(近くで採れる鉄分を含んだ粘土)もまた、漆で延ばして使います。
「とにかく漆ばっかり」と小林さんは笑っていました。
小林さんが漆器へ関わるサラリーマン時代に、
「営業しながらあちこちの産地を見て回り、産地のものを買い使ってみた」上で、
漆塗りを始めたのは20年ほど前だそうです。
入門師事などを経た漆塗り職人ではありません。
塗り方を教えてもらった各地の先生同様の方々、販路展開でお世話になった方々への恩返しは、
お客さんから「小林さんの箸なら絶対大丈夫」と言ってもらえる箸作りで果たす・・・
これを目標としています。
今、日本で流通する天然漆は中国産が90%超とみられる一方、
国内では漆掻き職人が高齢化し漆林も減っており、
漆器産地は伝統産業を掲げられるだけの漆の調達に悩む状況です。
伝統工芸品市場が頭打ちの中、需要へ応える一層の開発力も、
漆器産地に求められているとは小林さんのご指摘。
「木曽漆器でご飯を美味しく食べたいと考える層は絶対にいらっしゃる」、
この思いを伝える媒体が、小林さんにとっての箸作りと感じました。
実は納豆箸を頂いており、その使用感を報告します。ポイントは 1)納豆をパックから器に移し替えやすい 2)かき混ぜる時に納豆粒がつぶされ壊れない 3)きめ細かい糸が引ける 納豆に専用の箸が必要かの意見は認めるものの、侮るなかれ、結構良いものですよ。 漆器の新たな魅力も見つけました。それは音。割箸・プラスチック製品とは全く違う、箸同士や器が何かに当たる時の軽く落ち着いた音色は、小さな癒しと言えるでしょう。 (小穴久仁)
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住所 | 長野県木曽町新開上野2477 |
TEL/FAX | TEL:0264-22-3024 |
2011年1月29日現在の情報になります。