木曽川の源流から数えて5番目の自治体である木曽郡大桑村、
長野県の中では比較的温暖で降水量が多く、かつては養蚕が盛んだったため、
村章は桑の葉をイメージしています。
今回は、桜が満開を迎え春の陽気となった大桑村を訪ね、
村長職に就く前は40頭程の乳牛を飼う酪農家でもあった貴舟村長にお話を伺いました。
明治以降、開発が進んだ木曽川水系の水力発電の恩恵を受け、
電力の確保に恵まれながら工業中心に村は発展しました。
昭和30年代までは村内に森林鉄道が張り巡らされ、良質な天然桧を柱とする木材・
木工産業は隆盛を極めたものの、今日は自動車関連産業を中心とする工業出荷額が
木材・木工産業の約60倍に達し、勤労者中心の村へと就労形態が変わりつつあります。
また、大桑村は木曽郡町村の中で唯一、
国指定重要文化財を抱えた木曽路内で最も古い文化を残す地域で、
二つある国指定重要文化財の一つは鎌倉時代に創建された白山神社、
もう一つは室町時代に建立された定勝寺でいずれも村の見所です。
村では平成9年から、間伐の時に出る「曲がった材木」を使って楽器作りに取り組む
「木曽ヒノキを奏でる里づくり事業」を進めています。
この事業では、「ヒノキ三味線」「アルプホルン」「コカリナ」を手作りしており、
講習会を開催しながら積極的な演奏活動が続けられ、楽器の制作体験希望者は年々増えてきました。
平地の少ない大桑村では、農産物の安定供給は難しいものの(農耕地は村面積の1%たらず)、
やはり子や孫に地元の新鮮で安全な食材を食べてもらいたいと、
平成元年から中学校へ地元食材の提供が始まり、「大桑村給食食材提供システム」が整備されました。
このシステムは、村・大桑村農産物生産販売組合・村立小中学校の栄養士三者で構成され、
地元の米や野菜を子供たちにお届けしています。
村の東側は中央アルプスの主峰、標高2,956mの木曽駒ヶ岳が雄大にそびえ立ち、木曽川のダム湖面に映る山並みと夕日に赤く染まる峰々は、一見の価値があります。また、夏には子どもたちの水浴びをする歓声が響き渡り、エメラルドグリーンの澄んだ水が流れる阿寺渓谷と、見事の一言に尽きる紅葉が見られる伊奈川渓谷は、私のお薦めです。村には、素朴で人間味のある人がたくさんいます。そんな人に出会い、郷土料理に舌鼓を打ちながら、温泉につかるのはいかがでしょうか。きっと何か、大切なものが見つかるはずです。
(長野県木曽郡大桑村 貴舟村長)
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