南木曽町役場背後の急坂を登り、日当たりの良い斜面の途中にあるのが、上の原と呼ばれる集落です。
ここで南木曽町から岐阜県の旧山口村(現中津川市)にかけて栽培される伝統野菜、
トウノイモ(唐芋)を使った漬物作りをしている上の原むらおこし組合の組合長、
田口八重子さんへ赤たつ漬についてお聞きしました。
田口さんのお宅にお邪魔し、まず見せて頂いたものはトウノイモを干した茎。
これをズイキと呼びます。次に、家庭科の授業で使った記憶のある栄養成分表を開き、
印のあるトウノイモの欄に目を向けると、カルシウム・鉄・食物繊維がほかの食品に比べ
群を抜いて多く含まれることが分かります。
「これはほとんど産後食!」と話す田口さん、昔はお産の時にズイキを食べ、
失われやすいカルシウムや鉄、繊維を補給したのだそうです。
そもそも長野県の伝統野菜に指定されているトウノイモとは何か、
九州などサツマイモを指す地域もありますが。。。この点について田口さんは、
「里芋の一品種で、芋は多く採れませんが味は良く、茎は太くて長く1m位まで伸びます」とのこと。
帰り際、庭で天日にさらしていた種芋を見ると、普段見る里芋と似ていました。
トウノイモの茎を漬けたものを赤たつ漬と呼びますが、
明治の文豪、島崎藤村の小説「家」にも赤たつ漬が登場するのをご存知でしたか?
昔からの赤たつ漬は塩漬け。
しかし、塩辛さは否めず、改良しようと田口さん達が考案した漬け方は酢漬け。
赤紫色を出すために、紫蘇と赤ビート(砂糖大根)を加えました。
田口さん曰く、「酢漬けはとっつきやすいね、でも本当のツウの人は、酢漬けはだめだね」。
最近は、町内でも集落の畑にサルやイノシシが出ることが多く、作物の被害があとを絶ちません。
でも、赤たつ漬に使うトウノイモは生で食べるとあくが強く、サルやイノシシによる害を受けないそうです。
赤たつ漬は、シャキシャキとした食感をもつ冬の漬け物で、この時期の赤たつ漬はシーズン最後となります。まず試食した塩漬けは、これだけ食べると少々塩辛い。一方の酢漬けは、独特の食感と味が癖になりそう。生姜を乗せて食べると、なお箸が進んでしまいました。 目下、田口さんの悩みは後継者のこと。すでに組合員は高齢化が進んでしまい、若い人たちがいません。このため、地元の小学生から高校生へ、トウノイモ作付け体験などを通じ、赤たつ漬を知ってもらう試みを始めています。 (小穴久仁・倉田和己)
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住所 | 南木曽町□□□□□ |
TEL/FAX | TEL:0264-57-3703 |
2010年4月15日現在の情報になります。