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柿を核として、住んで楽しい地域をつくる
2015.12.29 更新

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岐阜県山県市伊自良地区に、特産品の伊自良大実柿をキーワードとして地域づくりに取り組む若者がいます。この土地で生まれ育った集落支援員の横山太一さんと、地域おこし協力隊員として神奈川県からやってきた金子悟さん。彼らの活動と地域への思いについてお話を伺いました。

住んで楽しい集落にしたい

集落支援員とは、地域の実情に詳しく、集落問題に取り組む知見やノウハウを持つ人材に地方自治体が委託し、集落の目配り役を勤めてもらう制度のこと。現在、山県市には2名の集落支援員がおり、伊自良地区を担当するのが横山太一さん。旧伊自良村長滝地区で生まれ育ち、27歳の時に一度この土地を離れて海外で暮らしたり山小屋や飲食店で働いた後、故郷に帰ってきました。
「ここで店をやるつもりだったのに、帰ってきたら寂れていてビックリ。これじゃいかん、まずは自分が住んで楽しい集落にしたいって思ったんです」。

故郷、伊自良の魅力は何だろう?と考えたとき、「地域の誇りは、伊自良大実柿にあると気付いた」といいます。
渋柿である伊自良大実柿を干し柿にした伊自良連柿は、現在地域の特産品として知られていますが、50 年ほど前までは柿渋もこの地域で盛んに作られていました。柿渋は未熟な渋柿を搾り、その液を発酵熟成させたもので、古来から塗料や染料として用いられています。
横山さんは廃れてしまった柿渋を復活させ、柿を入り口として元気な地域をつくっていくことを決意。
平成25年から山県市の集落支援員になり、今年2月に結成した「伊自良大実連合会」の中心メンバーとして、地域おこし協力隊の金子さんらとともに活動中。放棄柿畑の受託管理、柿の栽培、連柿の販路拡大、柿渋を使った商品開発などに取り組んでいます。

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横山さんは地元の柿農家さんに弟子入りし、伊自良大実柿づくりの担い手となるべく修行中(写真撮影・提供/山口晋一さん)

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横山さん(写真右)と金子さん。豊かな自然と柿のある伊自良をこよなく愛する二人です

柿渋を復活させたい

横山さんと共に、活動に取り組むのが金子悟さん。横浜市出身で、昨年4月に山県市の地域おこし協力隊員として伊自良地区にやってきました。
地域おこし協力隊とは、総務省が地域力の維持と強化を目的に平成21年に創設した制度です。隊員は地域外(主に都市部)から移住し、地方自治体の委嘱を受け、各種の地域協力活動を行います。現在全国で実施されており、地域おこし協力隊、地域、地方公共団体の「三方よし」で地域づくりを行う取り組みとして注目を集めています。
それまでは横浜市で洋服の販売業で働いていた金子さん。自然の豊かなところで働き暮らしたいと考えていた頃、地域おこし協力隊の存在を知り興味を持ったのだそう。山県市の応募条件のひとつが「柿渋を使った染色に取り組むこと」とあり、染色が好きだったことから応募。

「金子君が来てから、地元のスピードが上がりました」と横山さん。「それまでどんなに僕が“伊自良は柿がいい!”と言っても、地元の人にとって柿は昔からあるもので、当たり前過ぎてなかなか響かなかった。でも都会から来た若者がそう言うと、みんな聞いてくれるんですよ(笑)」。
横山さんと金子さんは地域の柿農家さんの畑仕事や収穫を手伝いながら、「柿渋を復活させて地域の伝統をつないでいきたい」という思いを伝え続けました。その熱意が地域の人を動かし、伊自良大実連合会の結成につながったのだそう。

移住して2年目となる金子さんにここでの暮らしについて尋ねると、「最高です」と笑顔で即答。「ここの魅力は、柿と地域の人です。柿畑を見ると本当にきれいだなあって思うし、あったかくて親身な人が多い。山県市は美しい自然をはじめ魅力がたくさんあります。ここで体感したものを伝え、柿渋など伊自良大実柿の新たな商品化と販路拡大が僕のミッションです」。

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体験講座で柿渋染めを教える金子さん。(写真撮影・提供/山口晋一さん)

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柿渋染めの特徴は熱を加えない染色方法。生地を染料に浸けた後、日に当てて干し、水洗いを行います。染める回数を重ねると、色が濃くなるのだそう(写真撮影・提供/山口晋一さん)

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金子さんが愛用している柿渋で染めたオリジナルシャツ。独特の風合がなんともかっこいい。ペンダントトップは柿渋で染めたイノシシの骨

集落の核は「柿」

いろんな人に柿渋について知ってもらおうと、地域の公民館や体験交流型イベント「長良川おんぱく」などで、柿渋染めの講習会を行っています。
「柿渋で染めたものは独特な色味と風合があり、柿渋に含まれるタンニンの効果で消臭、抗菌、防虫、防腐が期待できます。最近は健康的な天然素材として古民家の再生やシックハウス対策にも使われています。色合いは茶色だけでなく、媒染によって違う色に変化させることもできます。もともと洋服が好きなので、柿渋で染めた生地でシャツやバッグを作ったり、革の染色も提案していきたいですね」と金子さん。

横山さんの地域支援員としての任期は今年度末まで、金子さんの地域おこし協力隊の任期は来年度末までですが、二人とも引き続き大好きな伊自良で活動し、暮らしていくと話します。
「僕たちが活動を始めたことで、地域の20代の子たちや同世代が“自分たちも面白いことをやりたい”って言うようになりました。この3年で移住者やUターン組も地域に加わりました。そういう人たちが増えてきたのはやっぱり嬉しいですね。これからも柿を集落の核において、この土地の大切なものに気付いたり、感じてもらえるような活動を続けていきたい。まずはここに住んでいる僕らが笑顔で暮らすことが、地域の生業や暮らしの再生につながるんじゃないかな」。
横山さんの言葉と姿勢に、これからの地域づくりのヒントがあるように思います。

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今年9月に伊自良地区で、長良川おんぱくのプログラムとして柿渋染め講座を開催。参加者と一緒に里山を歩き、地域の風土やその魅力の紹介も行いました(写真撮影・提供/山口晋一さん)

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体験講座では、絞り染めやステンシルで柿渋染めを行い、コースターやバッグを制作。岐阜県外からの参加者も多く盛況のイベントとなりました(写真撮影・提供/山口晋一さん)

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地元の小学生達と実った柿を収穫。伊自良大実柿の伝統を未来へつなげる取り組みのひとつです(写真提供/金子悟さん)

2015年12月15日取材時の情報です
ライター : 梅田美穂

お問い合わせ
施設名 伊自良大実連合会
住所
TEL 090-1560-0888 (横山)
営業時間
定休日
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