山県市の伊自良地区北部でのみ採れる「伊自良大実柿」という渋柿。この柿を使って作られているのが「伊自良連柿」と呼ばれる干し柿です。11月に入ると干し柿が軒先にすだれのようにつるされる光景は、昔からこの地区の風物詩として知られています。
今回は、地元に伝わる柿を守り育てている「伊自良大実連合会」の代表、佐野敬二さんとメンバーの方にお話を伺いました。
飛騨・美濃伝統野菜に認証されている伊自良大実柿は、400年ほど前に近江の方から伝わったと言われ、大実(おうみ)の名前の由来にもなっています。
「このあたりの土壌は砂礫質で水はけがよく、柿の栽培に適しているからね」と佐野さん。大正末期から昭和の初期に栽培が本格化し、昭和30年頃の最盛期には農家一軒あたり2000連もの干し柿が作られたとか。昼夜の寒暖の差が大きい気候も、干し柿づくりに適していたと言います。「残念ながら、最近は地球温暖化の影響もあり、干し柿にはあまり良くない状況です」。
伊自良連柿はすべて手作業で作られます。専用のカンナでひとつずつ皮をむいた柿を、3つずつ竹串に刺したものを長いワラで10段(10串)編み、1連にします。その長さは1メートルにもおよび、各農家の軒先一面に干し柿が下げられると、地域一帯が柿色に染まったように見えたそうです。ところが、農家の高齢化などもあり次第に軒先を彩る連柿も減少していきました。
現在、佐野さんの住む平井地区に植えられているおよそ1000本の柿の木のうち、400本ほどが放棄されたままになっているそう。担い手のなくなった柿畑を再生し、地域の宝である伊自良大実柿を守りたいと発足したのが伊自良大実連合会です。
佐野さんはじめ生産農家5名と集落支援員・地域おこし協力隊のメンバーの横山太一さんと金子悟さんの若い人たちも含めて総勢9名で2015年2月6日に伊自良大実連合会を立ち上げました。きっかけは、横山さんと金子さんから「柿渋染め」をしたいという話があったことから。「昔は集落には柿渋を製造する渋屋さんという専門の人もおったんやわ」と佐野さん。「柿渋染めを広めたいと、まずは地域の人向けに体験教室を開きました」と金子さん。
連合会の主旨は「連柿」と「柿渋染め」の2本柱で伊自良大実柿をもっとPRしていくこと。そのために放棄されている柿畑を再生し、維持管理していく必要があります。JAぎふの地域活動支援金も得て、耕作機械などを購入し、4月から本格的に活動を始めました。
冬の間の剪定と6月から8月にかけて行う消毒や摘果が主な作業です。放棄した畑の柿には細菌や虫などもつくので、他の畑の柿にも悪影響が出ると言います。摘果には長年の経験と勘が必要で、「木のクセを見ながら、どれを摘果するか見極めて行う」と佐野さんは話します。
また、放棄畑の柿を手入れすることは獣害対策にもなると言います。放棄した畑の柿が地面に落ち、それを目当てに集落まで下りてきた獣が他の作物を荒らすことにもなりかねないとか。
「市町村合併で伊自良村という名前が消えた今、伊自良という名前を残すためにも伊自良大実柿を守り伝えていく必要があるんです」と横山さん。
今後は、伊自良大実柿を使った酢・ドレッシングなどと組み合わせた特産品の開発や、柿渋染めの商品化もしていきたいと語る横山さんと金子さんにとっても、佐野さんたち農家さんと協力しながら柿畑を守ることが地域の活性化にもつながると考えています。
※伊自良連柿は、下記で購入できます
てんこもり農産物直売所 http://tenkomori-ijira.com/
2015年12月15日取材時の情報です。
ライター:田中マリ子
施設名 | 伊自良大実連合会 |
住所 | 岐阜県山県市 |
TEL | 090-1560-0888 (横山) |
営業時間 | |
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