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地元の伝統食・こんにゃくづくりに挑戦する「多良を愛する会」
2014.02.10 更新

アクが強く獣害にあわないコンニャク芋

会場となった西山コミュニティセンター。
しばれる寒さの中、降り積もった雪が銀色に輝く美しい朝。

名神高速道路関ケ原ICから国道365号を三重県方面に進むこと約15分。
長いトンネルを抜けるとそこは岐阜県の西南端・大垣市上石津町多良地区。
養老山脈と鈴鹿山脈に挟まれた緑と歴史のまちです。
さる1月11日(土)、多良の中で最も標高の高い西山自治会のコミュニティセンターで、
多良地区の地域おこし団体「多良を愛する会」メンバーによる
「多良の伝統食文化を受け継ぐ会」が開催され、12名が参加。
西山自治会の三輪貞吉(ていきち)さんを講師に、こんにゃくづくりが行われました。
この日の多良は前の晩から降り続いた雪に白く覆われ、一面の銀世界。

この日使ったコンニャク芋は全部で2kg。中にはこんな大きなものも……

午前9時から貞吉さんは下準備にとりかかり、
コンニャク芋2kgを洗っていくつかに切り、大きな鍋で茹で始めました。
みるみるうちに鍋の湯はアクで黒く濁ってきます。
コンニャク芋はサトイモ科ですが大変アクが強く、劇物のシュウ酸カルシウムが含まれているため、
生の芋を素手で触るとかぶれることもあるといいます。
もちろん、絶対に口に入れてはいけません。
この日もゴム手袋をつけての慎重な作業となりました。
多良地区でコンニャク芋の栽培が始まったのはいつからか定かではありません。
聞くところによると、山間部の多い多良地区では昔から鹿やサルなど獣による害がひどく、
獣たちが食べないお茶の栽培などが行われていたのですが、
お茶の木の間からツンツンと頭を出していたのがコンニャク芋だったそうです。
栽培というよりは野生化していたのかもしれません。
動物たちもコンニャク芋は絶対に生では食べられないことを本能的に知っていたのでしょう。
ほかの野菜のように獣害にあうこともなかった代わりに注目されることもなく、
各家庭でほそぼそとこんにゃくづくりが行われていたようです。

(左)火が通りやすくするために、ゆでる前にいくつかに切り分けておく。
切らずに丸のまま茹でる人もいる。
(右)アクのためにお湯が見る見るうちに黒くなっていく

「もみじまつり」で手作りこんにゃくに注目

参加者たちに挨拶する講師・三輪貞吉さん

そのこんにゃくが多良地区で地域の伝統食として注目を浴びたのは、
昨年11月に地元の観光スポットである多良峡で「もみじまつり」が開催された時のことでした。
今年初めて行われた地元の特産品バザーで、「食生活改善協議会」によって
地元のコンニャク芋を原料として作られたこんにゃくおでんがとてもおいしいと評判になったのです。
中には「とてもおいしいのでこんにゃくを売ってほしい」という人も現れました。
後日「多良を愛する会」の会議で「もみじまつり」の話が出た時に、
「あのこんにゃくはとてもおいしかった」と話題になり、「地域の特産品にできるかもしれないので、
年が明けたらまずは自分たちでこんにゃくづくりをしてみよう」と座が盛り上がりました。
そこで自らコンニャク芋を栽培し、その普及にも熱心な三輪貞吉さんに教えていただくことになり、
2回の事前打ち合わせを経て今回の開催となったのでした。

野生の風味豊かな手作りこんにゃく

さて、コンニャク芋がゆで上がったころ、参加者たちが集まり始めました。
「もみじまつり」でこんにゃくを作った奥自治会の三輪咲子さんも駆けつけてくれました。
「多良を愛する会」のメンバーは地元出身者ばかりではなく、
他地域から移住した人も加わっており、みんなこんにゃくを作るのは初めてです。
ゴム手袋をつけてコンニャク芋の鬼皮をむき始めました。
苦も無くスルリとむけるのがおもしろそう。
皮をむいたコンニャク芋はさらに細かく切り、
水と一緒にミキサーにかけてゼリー状につぶし、ムラがないようにかきまぜます。
ほんのりとこんにゃくの香りが漂い始めました。少し休ませた後、
精製ソーダ(原料は食品添加物の無水炭酸ナトリウム)を湯で溶かしたものを加えて固まるのを待ちます。
精製ソーダを入れ過ぎるとえぐみが出て来るので、要注意です。
だいぶ固まってきたら少しずつ液をとって玉こんにゃくをつくり、熱湯の中に入れてグツグツ煮ること約20分。
手作りこんにゃくの完成です。
さっそく、ゆでたてのこんにゃくの刺身をみんなでいただきました。
調味料は味噌と醤油。できたてのこんにゃくはプルプルして喉ごしもとてもなめらか。
野性的なコンニャク芋の風味もちゃんと残っていました。

ゆで上がったコンニャク芋の皮をむく。ものすごく熱い。

皮をむいた芋を賽の目に切り、重さを計って半分ずつに分け、さらに6等分してミキサーにかける。

ドロドロになったコンニャク芋。
おいしそうだけど、この時点ではまだ、決して口に入れてはいけない。

(左)凝固剤の精製ソーダにあらかじめお湯を入れて溶かしておく
(右)溶けたコンニャク芋にお湯で溶かした精製ソーダを加え、しばらく置いた後、手で丸める。

手で丸めた後、ゆでる。

出来立ての玉こんにゃく。
手作りなので形は悪いが、こんにゃく本来の風味の残るおいしさだ。

コンニャク芋から作るこんにゃくの美味しさ

市販のこんにゃくの多くはコンニャク芋ではなくコンニャク粉を原料としており、
純粋にコンニャク芋を原料として作られているこんにゃくは数少ないと思った方がいいかもしれません。
たかがこんにゃく、されどこんにゃく。
コンニャク芋は植えてから収穫するまで3年はかかるといいます。
しかも、植えっぱなしにしておけば良いというものではなく、春に植え付けた芋を秋に収穫し、
また翌春に植えて……というのを3回繰り返さないと、食用にできる芋は育たないそうです。
掘り上げた芋は寒さに弱く、保温しておかないとすぐに腐ってしまいます。
コンニャク芋ってとてもデリケートでなかなか気難しく、気長に育てないといけない植物なんですね。
5~6年経つと花が咲いてその命を終えるそうです。
指導者の三輪貞吉さんは今後もコンニャク芋普及のために頑張りたいとのこと。
また「おいしいこんにゃくを作るにはいろいろやり方があり、私も試行錯誤しながらこれまでやってきました。
ぜひ、皆さんもコンニャク芋を手に入れて自分で作ってみてください」と話してくれました。

出来立ての湯気のあがっているこんにゃくを切って皿に盛りつける三輪咲子さん。

講師の三輪貞吉さん(前列中央)と
アシスタントを務めた三輪咲子さん(後列 右から二人目)を囲む「多良を愛する会」メンバーとその家族

編集員のココがオススメ!

こんにゃくはたいていどこのスーパーマーケットなどに置いてあり、特に珍しい食品ではありません。しかし、自分たちでコンニャク芋から作るとなると話は別です。味噌・醤油・うどん・そば・こんにゃく……昔はそれぞれの家庭で作られていたいわば地域の伝統食が今では市販品に取って代わられ、本来の味が忘れ去られていくのは寂しいことです。地域の人の手で地域の伝統食が守り伝えられていくのはとても意味のある活動だと思います。

(松島頼子)

団体情報

団体名 多良を愛する会
問い合わせ先 TEL:0584-45-3111(事務局・上石津地域事務所 地域政策課)
URL 上石津ポータルサイト:上石津もんでこだより

2014年1月11日現在の情報になります。

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