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【関市特集】「つるむらさき」を使ったメニューで ふるさとおこしに取り組む「郷土料理 つるや」
2012.08.12 更新

「つるむらさき」という野菜をご存知でしょうか?
原産は東南アジア。文字通り、つるが紫色のものと緑色の品種があり、実は紫の染料として使われました。
カルシウムやカロチン、鉄などのビタミンやミネラルなどを多く含み、
インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」では薬草として紹介されているそうです。
葉は比較的分厚く、ホウレンソウに少し似ていますが、
独特の粘り気があり、中華料理では炒め物にすることが多いといいます。

黒いマルチが敷かれた畑でぐんぐん育つツルムラサキ

さて、このつるむらさきを使った郷土料理があると聞き、関市武芸川(むげがわ)町を訪ねました。
長良川の支流である武儀(むぎ)川に沿って広がる武芸川は元々武儀郡に属し、
平成の大合併により関市となりました。
町内には日帰り温泉や桜の名所として知られる「寺尾ヶ原千本桜公園」などもあり、
遠く壬申の乱ではこの地方に勢力を誇った豪族・身毛(むげつ)氏が
大海人皇子(後の天武天皇)の側近として活躍。
江戸時代には名僧仙厓(せんがい)和尚を輩出するなど、独自の風土と歴史に彩られた地域です。

つるむらさきで武芸川を癒しの里に

つるむらさき料理の専門店「つるや」は、
国道418号から「寺尾ヶ原千本桜公園」に向かう道を北に少し入った所にありました。
築100年の古民家を改装した店内は、懐かしくも気さくな雰囲気。
正面のふすまに描かれた書画も見事です。

古民家を改築した「つるや」。
改築以前は竹がびっしりと生えて竹屋敷みたいになっていたそう

(左)ふすまに描かれた個性的な書画。
(右)1枚板のテーブルと和紙のライト。窓の向こうに木々の緑が透けて見えるのがすがすがしい

つるむらさきを練りこんだうどんは色もエメラルドグリーンでとてもきれい。
麺も細くて食べやすかった。つるつるしたのど越しがたまらない。
うどんは熱いのと冷たいのが選べる

ちょうどお昼時で何組かのお客様がおられ、お店の方も忙しそう。
やがて、「つるや」オーナーの杉山ミサ子さんが優しい笑顔で迎えてくれました。
そして運ばれてきたのは、つるむらさきうどんに奥美濃古地鶏のたたき、
地元野菜や薬草などの天ぷら、季節の小鉢などがついた「つるや御膳」。
つるむらさきを粉にして小麦粉に練りこんだうどんは細めで、透明感のあるきれいな若草色。
つるつるとしたのど越しとコシのある歯ごたえがたまりません。
どうして、この地でつるむらさきの郷土料理店を開くことになったのでしょうか?
杉山さんはその理由を次のように語ってくれました。
「合併前、私は武芸川町の役場で、上司とともに特産品による町おこしに取り組んでいました。
武芸川は昔から戦に敗れた落人が逃げてきたり、貴人が隠棲したこともある不思議なスポットなので、
人を癒す力のある土地柄なのかもしれないと思い、薬草の里みたいにしたくて、
懇意にしていた『岐阜薬科大学』の教授にどんな薬草を栽培したらいいか相談したんです。
そこで紹介されたのがつるむらさきでした」

加工賃は高くても食の安心・安全にこだわる

こうして武芸川町でつるむらさきの栽培が始まりました。
しかし、一番迷ったのが、生の野菜として出すかどうするかということ。
つるむらさきは元々武芸川で栽培されていたわけではないので、地元になじみがありません。
そこで考え付いたのが、粉末加工して小麦粉に練りこみ、うどんとして提供することでした。
「武芸川には昔から小麦の食文化が根付いており、家々でうどんをつくって食べていたんです。
つるむらさきのぬめりが小麦粉のつなぎになって、コシのあるうどんができました」と杉山さん。
現在はこの加工技術を生かし、つるむらさきの入った飴や麩、コンニャクなども製造販売されています。
今後はつるむらさき入りのスイーツを開発したいと意欲的。

武芸小学校3年生の子どもたちも「つるむらさきうどん」づくりを体験

つるむらさきの加工品。うどんと麩、それに飴。食の安全・安心をモットーに、
なんとかして親しみやすくて食べやすいものをという女性らしい工夫がこらされている

しかしながら難点は、栽培から粉末化するまでのコスト高。
「現在、『葉っぱ隊』と呼ばれる80歳以上のおばあちゃんたち10人が、つるむらさきを無農薬で栽培。
加工に至るまでの作業を担当しています。
葉っぱが分厚いつるむらさきは減圧乾燥機にかけなければならないので、外部に委託しています」
これら人件費・土地代・乾燥費用等含めて、1kg=2万円!
海外で粉末加工するともっと安くてすむそうですが、それでは地産地消とは言えないし、
食の安心・安全にこだわる以上、最後まで自分の目で見届けたいと杉山さんは言います。
今年はつるむらさきをもっと周知してほしいと、生野菜のまま出荷するという試みも……
「でも、なかなか売れません。つるむらさきは福島県など東北地方で盛んに栽培されており、
東京や大阪、神戸など大都市では食材として浸透しています。中部地方はまだまだですね」
地元では、つるむらさきの専業農家をめざす若い人たちもじょじょに増えているとのこと。
「これからは若い農業人を育てていきたいです」と、杉山さんは夢を語ってくれました。

女将の杉山ミサ子さんとつるむらさきの専業農家をめざす時代の担い手・平野貴啓(たかひろ)さん

編集員のココがオススメ!

聞きなれない野菜なので、興味津々の取材でした。生のまま噛むと確かにちょっと粘り気があり、モロヘイヤに似た感じです。うどんは色もきれい。つるつるっとしてあっという間に食べてしまいました。奥美濃古地鶏のたたきも新鮮で歯ごたえがあり、おいしかった! 現在、「つるむらさきうどん」は、「飛騨・美濃自慢の原石」に認定されており、ヘルシーさは折り紙つき。さらなるブラッシュアップが期待されます。

(松島頼子)

施設情報

施設名 郷土料理 つるや
住所 岐阜県関市武芸川町谷口1223
TEL/FAX TEL:0575-46-1391
営業時間 11:00~15:00 17:00~21:00
定休日 木曜
駐車場 15台

2012年6月12日現在の情報になります。


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