中部を動かすポータルサイトDochubu

トップページ 今月の特集 地元食を旅する DoChubuピックアップ アーカイブ

DoChubu

猿投の土と対話し、窯の火とつくりだす器たち「喜中窯(きちゅうよう)」
2011.11.03 更新

蹴ろくろの回転とともに、土が器へと形を変えていきます

奈良・平安時代の昔から焼き物がつくられていた、愛知県猿投。
縁の深い地に「喜中窯」を構え、味わいある作品を手がける陶芸家が、河村喜平さんです。
30年以上無人になり、半壊していた窯を復興。
平成11年に再び火を入れたのでした。
以来、作陶に打ち込むとともに、文化活動にも力を注ぐ河村さんに、
日々の仕事の醍醐味や町の魅力を語っていただきます。

くせが強い土。自分が力を尽くせば、プラスαの仕事をしてくれる

土の状態を見ながら、無心で作陶します

薪を投げ入れ、1200〜1250度を保つよう調整。一昼夜、気が抜けません

窯の内部も高温で焼かれ、飴色に光っています

美しい焼き物をつくるには、何より土が重要。
河村さんが使うのは、窯からほど近い猿投(平戸橋)の陶土です。
この辺りをはじめ豊田市は「資源に恵まれたところ」と河村さん。
「粘土をはじめ、釉薬の原料、薪、水などが質、量ともに豊富です。
なかなかこうした土地はないんですよ」。
もともと、この地に築窯した祖父の喜太郎さんも、「宝の山」と称したそうです。

一方で、一般の調合された土に比べ、「くせが強い」のだとか。
「普通なら思い通りの形にできるのに、ここの土は扱いづらくて。
曲げようとすればヒビが入る、持ち手を付ければ落ちたり歪んだり…。
しかしその分、つねに土の状態を見て、問いかけ、対話しながら仕事ができます。
このスタイルが私には合っていますね」。

土と火という自然が働きかけるため、予期しない作品が生まれる場合もあります。
「同じ土と釉薬を使っても、時に、全然違う器になってしまう。
土と火が、いろいろな変化を見せてくれるわけです。
こちらが100%を超えて105%がんばれば、土と火が味方してくれることがある。
自然がプラスαの仕事をしてくれます」。

地域に支えられて開窯。現在は、地元の魅力を発信

(左)京都大徳寺・立花大亀老師により命名されました
(右)昭和に築かれた登り窯。傾斜を利用した4つの燃焼室があります

「喜中窯」の原点は、祖父の喜太郎さんが昭和25年に築窯した「さなげ陶房」。
京都の陶芸家であった喜太郎さんは、良質の土のあるこの地に窯を築きましたが、
後に、鎌倉の北大路魯山人陶房跡へ活動の場を移します。
河村さんは4歳のときに豊田市を離れ、陶房には誰もいなくなりました。
33年後、河村さんは窯を修復するため故郷へ戻り、「喜中窯」を開いたのでした。

再興にあたって、初めは不安もありました。
「親しい知人もいませんし、窯の周りは住宅地になっていましたから。
ですが皆さんにご理解いただき、開窯できました。
印象深いのは、地域の助け合いの心ですね。
まだ知り合って数カ月の私に、
青年会議所の方々が窯開きのサポートやお客様のアテンドを率先して引き受けてくれたのです。
枯れ葉やごみの片付けまでしてくれ、びっくりしました。
こうした人の温かさや純粋さも町の魅力です」。

さらに最近は、豊田市のよさを積極的に発信しようと、
「地産地消」をテーマにしたイベントを毎年開催しています。
地元の土と窯で焼き上げた河村さんの器に、
創業150年近い酒蔵の地酒と、会席料理が彩られる美食イベントが、
今年も11月いっぱい実施される予定です。

やきものは、ひとが使い、馴染み、そだてていく

茶道具から食器まで様々な作品を手がけています

河村さんが手がけるのは、皿、小鉢、湯呑みなどの食器、酒器、壷などさまざま。
これらはただ飾るのではなく、「どんどん使ってほしい」と強調します。
「陶器は使い込むうちに、色合いが落ち着き、手に馴染んできます。
使い手が日々育てていってほしいですね」。
料理が映える皿、手にしっくりとくる小鉢、飲み口がほどよい薄さの湯呑み…。
こんなうつわがあれば、毎日の食卓が一層豊かになりそうです。

編集員のココがオススメ!

河村さんの湯呑みでお茶をいただいたら、とてもまろやか! うつわで味に違いが出るのかと驚きました。河村さんの作品は、白い化粧土が施された粉引や、灰を釉薬として使った灰釉陶器など、落ち着いた雰囲気の器が多く、使い勝手がよさそう。質の高いものを日常づかいできたら豊かだと思います。
また、美食イベント「晩秋の特別会席」は11月1〜30日までホテル「FORESTA HILLS」(豊田市岩倉町一本松1-1)の和処「花乃里」で開催(要予約)。「花乃里」では河村さんの作品を常時展示・販売しています。また、喜中窯で陶芸教室もあります。

(南 由美子)

店舗情報

名称 喜中窯
住所 〒470-0331 豊田市平戸橋町波岩62
TEL/FAX 0565-45-2333

2011年10月4日現在の情報になります。

▼お店の場所を見る

トップに戻る
トップに戻る