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産地の伝統を受け継ぎ
尾州ブランドを創る
2016.04.29 更新

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愛知県一宮市を中心とする尾州地区は、毛織物のまちとして知られています。
歴史は古く、奈良時代には麻や絹の織物が作られていました。明治以降は木曽川の水を生かした毛織物業が発展し、世界有数の産地になりました。

尾州産地の強みは、分業と協業

「尾州」とは愛知県西部地域から岐阜県西濃地域にかけて広がる、毛織物産地をいいます。
今回は、一宮市にある「中伝毛織株式会社」を訪ねました。
中伝毛織は婦人用と紳士用のウール生地、ニット生地を製造販売するテキスタイルメーカーで、尾州を代表する毛織物会社のひとつ。社長の中島幸介さんと、副社長の中島君浩さんにお話を伺いました。

「中・高級ウールの世界2大産地がどこかご存知ですか? イタリアとここ、尾州です」と話す中島社長。
「一言で言えば、尾州は器用な産地。地域の中で分業制が確立していて、紡績、撚糸、染色、織り、整理までのすべての工程をまかなえるのが強みです。そして工程ごとに専門の会社や工場があり、それぞれに培われたものづくりの技術を生かした協業で、優れた製品を作ることができるのです」。

現在国内で、糸から製品までの工程を産地内で行うことができるのは尾州だけ。毛織物の国内生産量の80%を生産しており、スーツなどの紳士用素材、華やかな女性用素材をはじめ、多種多様なテキスタイルを作っているのも尾州の魅力。
尾州の高い技術力と品質は市場でも高く評価されており、国内外の有名ブランドやトップデザイナーからのオーダーも多く、注目を集めています。

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本社に併設の工場は24時間、3交代で生産を行っています

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昭和35年創立。自社工場を持つ会社が少なくなっている中、中伝毛織物は一貫した製造体制を持っています

毛織物が出来るまで

毛織物が出来るまでには、大きく分けて3つの工程があります。
糸を作る「紡績・撚糸・糸染め」、その糸を織る「毛織」、出来上がった生地を加工して製品にする「整理・加工」。
中伝毛織では、織布工場とニット工場の他に、糸染と整理加工のグループ会社も持ち、すべての製造体制を自社で一貫して行っています。生産力は業界トップクラスを誇り、本社ビルに併設された織布工場は24時間稼働で1日あたり約300反(1万5000メートル)の生地を生産するというから驚きます。

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織物設計に基づき、経糸として必要な本数・長さの糸をボビンに巻いて準備し、クリールに配置します。

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クリールから一定の張力で経糸を引き出し、大きなドラム状をしたビームに巻き取ります。織る布によって糸の本数は異なり、取材時は5000本

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現在主流の高速織機、レピア型織機。片側から緯糸をつまんだレピアヘッドが飛び出し、中央でもう一方から来たレピアヘッドが糸をつまみ、元に戻る方式で緯糸を挿入する仕組みです。1秒間に6~8回緯糸を飛ばして布を織ります

「尾州ブランド」の確立を目指して

この20年は価格競争など市場の影響もあり、尾州産地の出荷量も低迷。廃業する業者も多く、繊維業界は厳しい時代を迎えています。
「とはいえ高品質の毛織物への需要はあり、それを作れる尾州は絶対必要な産地。チャンスはあります」と中島社長。高スペックの最新機械を積極的に導入するのも、「今の時代のものづくりに必要だから」と言います。

「付加価値をつけたものづくりは、日本人の得意とするところ。工夫したり、手を抜かずよいものを作れるのは、世界に誇る日本人の素晴らしい気質であり強みだと思います。
メイドインジャパンとして世界から認められる高品質なもの、外国が真似できないもの、そして今までにないものを作っていきたい。それが尾州という産地の発展につながると思います」。
 
近年、尾州では生産者が横のつながりを深め、地場産業を盛り上げようと新しい動きが生まれています。そのひとつが産地活性を目的に官民が協力して開設した「一宮地場産業ファッションデザインセンター(FDC)」。
「尾州ブランド」の確立を目指し、国内外での展示会や商談会、ファッションショー、人材育成など、様々な取り組みを活発に行っています。

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昨年行われたイベント「The Tweed Run Bishu 2015」の様子。自転車とツイード服の組み合わせがおしゃれです(写真提供/The Tweed Run Bishu 2015)

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今年の愛知県での「The Tweed Run」は、秋に半田市で開催予定

昨年、尾州で「The Tweed Run Bishu 2015」というイベントが行われました。
これは、「ツイード」をドレスコードに、自転車で町を走って楽しむというもの。
ツイードの国として知られるイギリス・ロンドンで2009年に始まり、現在ニューヨークやフィレンツェなど、世界各都市で行われています。
 
中島副社長は、2013年から始まった「The Tweed Run Nagoya」の運営委員長を務めています。
「ツイードランは、ツイード素材の洋服やアイテムでおしゃれをして、お気に入りの自転車で町を走る楽しいイベントです。昨年の尾州開催では、ウールの産地ですのでコースに毛織物工場の見学も加え、大変好評でした。
尾州のツイードはやわらかくて着心地がいいんです。産地やここで作られるものについてもっと知っていただき、例えば“尾州といえばツイード”と言われるように、産地全体で尾州というブランドを確立していきたいですね」。

2016年4月15日取材時のデータです
ライター:梅田美穂

お問い合わせ
施設名 中伝毛織株式会社
住所 愛知県一宮市三条字郷内西1688
TEL 0586-61-3111
営業時間
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