日本では昔から寺社仏閣や住宅の屋根に瓦が使われてきました。三州瓦を生産する高浜市をはじめとした愛知県西三河地域は、島根県(石州瓦)、淡路島(淡路瓦)とともに瓦の日本三大産地の一つとして知られています。江戸で瓦葺きの屋根が普及するようになると、衣浦港や矢作川など水運に恵まれたこの地域からも船で運ばれたと言います。
高浜市にある愛知県陶器瓦工業組合に所属する会社は26社ですが、高浜市を中心に鬼瓦や黒瓦などを手がける生産者の組合もあり、西三河地域は日本における瓦の一大産地となっています。今回は愛知県陶器瓦工業組合の稲垣竜児さんに三州瓦についてお話を伺いました。
瓦の質を決めると言われる粘土ですが、西三河地域は瓦に適した良質の粘土が大量に採れたことで産地として栄えてきました。「昔は田んぼの下から掘り起こした粘土だけを使用していたのですが、今は粘土に山土、水簸(すいひ)粘土と規格外瓦をリサイクルした資材(シャモット)を配合して使っています。耐火度や収縮率、可塑性値などを考慮して、ブレンドすることで瓦に適した土にしています」と稲垣さん。
三州瓦は吸水率が5〜6%と低く、水を含んで凍ることの繰り返しで瓦の表面がボロボロになるという凍害にも強いため、寒い地方でも使われています。
瓦は焼き方によって種類が異なり、昭和40年頃までは、三州瓦の代名詞となった「赤瓦」の生産が盛んでした。塩を使って焼くことから「塩焼き瓦」とも呼ばれます。その後、赤瓦から釉薬による色のバリエーションが特徴の「陶器瓦(釉薬瓦)」へと移行していきます。同時に淡路で生産が盛んな「いぶし瓦」も大量生産されるようになりました。「いぶし瓦は焼成段階の最後に化学反応により生地に炭素を浸透させ表面に炭素皮膜をほどこした瓦です。伝統の焼成技法で、昔は松の葉で表面をいぶしていましたが、最近はガスを使います」。形状も含め多種多様な瓦が生産されているのも三州瓦ならではの特徴です。
三州瓦の全国におけるシェアは約70%、年間約3億2千万枚を販売しています。瓦の生産量日本一を支える背景には、愛知県の産業と深い関わりがあります。「物流コストが安いんです。愛知県は製造業が盛んで、例えば部品などを運んで来たトラックが瓦を積んで戻って行くことで無駄を省いています。それと、古くから瓦の産地として栄えたので、釉薬や窯業機械メーカーが集中しているのも強みですね」。
三州瓦は地震や風で崩れることのないように特殊なジョイントが施された防災瓦になっています。「瓦屋根の良し悪しは、高品質の瓦と優れた施工方法で決まります。そこで、瓦業界では巨大地震の揺れにも対応できるように定めたガイドライン工法で三州瓦を施工し、耐震実験を行って、安全性を実証しています」と語る稲垣さん。
伝統を守りつつ、新しい瓦の開発も進められています。環境に配慮したものとして、太陽光発電に対応した瓦やヒートアイランド対策として熱がこもらない高反射瓦、苔を植え込んで屋根を緑化できる瓦なども開発されています。また、散策路や公園をデザイン的に演出する瓦や、オブジェなど、屋根瓦以外の用途に適した瓦も作られています。
2015年10月2日取材時の情報になります。
ライター:田中マリ子
施設名 | 愛知県陶器瓦工業組合 |
住所 | 愛知県高浜市田戸町1-1-1 |
TEL | 0566-52-1200 (代) FAX 0566-52-1203 |
営業時間 | 8:00〜17:00 |
定休日 | 日曜、祝日 |
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