岐阜市では毎年4月上旬に、氏神である伊奈波神社の例祭「岐阜まつり」が行われます。かつて岐阜まつりの前夜の宵宮では、町衆によるにわか芝居などが行われていました。この伝統を復活し、地域のにぎわいにつなげようという取り組み、「岐阜まち歌舞伎」を紹介します。
伊奈波神社の界隈は、織田信長、斎藤道三の頃から商工業の町として栄えたところ。古くは岐阜町とよばれ、江戸から明治大正の時代までその名の通り岐阜の中心でした。歴史あるこの町の商店や寺院の跡取り世代が集まり、2010年に結成したのが「岐阜町若旦那会(以下、若旦那会)」。
メンバーは和菓子屋、生麩店、仏壇屋、魚屋、洋品店、寺院など、この町で商いをする30代後半から40代の男性です。若旦那会について、会長の川島徹郎さんにお話を伺いました。
「結成のきっかけは、6年前に善光寺のご開帳で、この町の商売屋の同世代が久しぶりに集まったことでした。その後飲み会をするようになって、町の思い出や、現状について話すようになったんです。子供の頃、賑わっていたこの町、そしてお祭りが寂れてしまってさびしいよね、って」。
「この町のために、自分たちで何かやれないだろうか」と議論を重ね、それぞれの思いを再確認していった結果、単なるまちおこしではなく「地域に根ざしたもの、町とつながっているものを掘り起こし、岐阜町の魅力を伝えていくこと」が若旦那会のテーマに。
現在、会の活動は春の「岐阜まち歌舞伎」と秋の「岐阜町縁日」という2つのイベントが中心です。
「岐阜まち歌舞伎は、岐阜まつりの宵宮で町衆がやっていたにわか芝居の復活だけが目的ではないんです。かつてこの町には芝居小屋が3つあり、江戸時代、7代目団十郎丈が来て芝居をしたなど、そういう歴史のある町だということも伝えたい。そして一番の目的は、僕らのまち歌舞伎を見に来たお客さんが昔なじみと再会したり、知り合いが出来たり、そういう地域のつながりや輪を育む場を提供したいということ。みんなが顔見知りになれたら、この町に力が湧いて盛り上がるんじゃないかな」と川島さん。
今年で4回目となる岐阜まち歌舞伎。今回の演目は、「縁糸戎釣竿〜釣女(えにしのいとえびすのつりざお つりおんな)」。狂言を題材にした歌舞伎舞踊「戎詣恋釣針」を定本とするオリジナル作品です。台本制作、役者の指導振り付け、衣装や大道具の監修などはすべて、鳳川伎連の喜久次さんが担当。日本で数少ない幇間として、岐阜町の芸妓文化を今に伝える活動を行っている方です。
昼間はそれぞれ家業があるので、稽古や大道具作りは仕事が終わった後。この日の役者の稽古は夜9時過ぎに始まり、深夜までおよびました。本番間近ということもあり、役者たちはみな真剣な表情で練習に取り組んでいました。
会場は、伊奈波神社境内の参集殿「稲葉座」。前回は300 人近いお客さんが詰めかけ、大盛況となりました。昨年役者を演じた実行委員長の牧野さんは、「お客さんがみんなあたたかいんですよ。役者も地元、お客さんも地元ですから、失敗してもおおらかに見守ってくれるんです。そして拍手喝采をもらうと、最高に気持ちいいんです」と話します。
当日は歌舞伎のほか、若旦那会有志による素囃子(お囃子)、鳳川伎連による舞踊も行われます。昔ながらの宵祭りの風情やにぎわいが味わえる、素敵な夜になること間違いなし。ぜひお見逃しなく!
◎ 岐阜まち歌舞伎
2015年4月2日(木) 18時開場/18時30分開演
会場 : 伊奈波神社参集殿「稲葉座」(岐阜市伊奈波通り1-1)
2015年3月21日取材時の情報です。
ライター : 梅田美穂
施設名 | 岐阜町若旦那会 |
住所 | |
TEL | 058-263-1463 担当/牧野(長崎屋総本家) |
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