愛知県は、日本一の花の生産地だということをご存知でしょうか? なかでも田原市、豊橋市、豊川市など東三河地域は、全国一の花き生産量を誇る一大産地。今回の特集ではこの「日本一花を作る町」に注目。地域の取り組みを紹介します。
「日本一花を作る町を日本一花を贈る町にする」。ロマンチックなキャッチコピーを掲げ、活動しているのが「花男子プロジェクト」。代表の近藤祐司さんにお話を伺いました。
「東三河地域はキク、バラ、カーネーション、観葉植物、洋ランなどの生産高が全国一位を誇る花の産地です。けれどもこの10数年、国内の花の消費が落ち続け、生産量は全盛期の半分以下になっているのが現状。多くの生産者が野菜農家へ転向したり、花屋が廃業したり、市場までもが潰れました。“10年後、花はいらないんじゃないか?”と、生産者も仲卸も花屋もみんなが口を揃えて“花に未来はない”と言うまでになっていたんです」。
豊橋市で花の仲卸会社を営む近藤さんは、危機的なこの状況を何とかしたいと決意。
「なぜ花が売れなくなったのか?ということから考えました。まず東三河が日本一の産地だということを、地元の花屋さんすら知らないんですよね。花は地域の誇るべき産業なのに、認知度が低くプロモーションもされていない。このままではダメだと思ったんです」。
業界や地域の活性化につながる活動をしていこうと、2011年11月、有志らと共に「花男子プロジェクト」をスタート。花生産者、仲卸業者、小売店といった地域の花産業従事者をはじめ、大学生や税理士などプロジェクトに共感したさまざまな業種の人達がメンバーとして参加しています。
「僕たちのプロジェクトが目指すのは、男性から女性に花を贈る“花贈り”という文化を日本に普及させることです」と近藤さん。
コンセプトは、「花贈る男性はかっこいい」。「花をプレゼントされた女性は、心からの笑顔を見せてくれますよね。でも残念なことに“花を贈るのは気恥ずかしいし、したことがない”という男性がほとんど。もっと男性に女性の笑顔という代え難い喜びを経験してもらい、女性にも花を贈られる感動を味わってほしいと思うんです」。
そんな思いから生まれたのが、男性に花贈りを体験してもらう「花贈りパフォーマンス」というイベント。まずステージに花束を制作するパフォーマーと司会進行役のMCが登場。MCは会場の男性客を指名し(立候補の場合も)、花を贈りたい女性は誰か、なぜ贈りたいかなどをインタビュー。最後に男性客がメッセージと共に花束を相手の女性に贈るというもの。
「花束を渡す、花贈りの瞬間が一番盛り上がりますね。いろんな男性がいらっしゃいますよ。プロポーズの言葉を初めて彼女に伝える人、毎日お弁当を作ってくれる奥さんやお母さんへの感謝を口にする人。どの人からも本当にいいセリフが聞けるんです。見守る会場の皆さんも暖かな拍手で応援してくれて、僕らも毎回感動します。花は思いを伝えるとき、ポンと背中を押したり手助けしてくれる、そういう力があると思うんです」。
これまでデパートやホテル、スポーツの大会、ショッピングモールなどさまざまな会場で年間50回以上開催してきました。その評判は口コミで広がり、全国各地の企業や自治体からオファーを受ける注目の花イベントへと成長。
「“花を贈ると女性はあんなに喜んで感動してくれるんだ”“大切な人の笑顔っていいな”と、一人でも多くの人が花を贈る行為の魅力に気付いたり、共感してくれることを願いながら活動しています」。
また花贈りパフォーマンスを通じて、プロジェクトメンバー自身が気付いたことがあるといいます。
「僕ら生産者や花を販売する側は、花が最終的に誰に届けられるか、これまで実際に見たことがなかったんですよね。生産したもの、販売したもの、花束にしたものがこんなにも喜ばれていることを知って、花が持つ魅力や意味を再確認できたように思います」。
今後はパフォーマンス以外にも、さまざまなアプローチで花の需要拡大を目指していきたいと話す近藤さん。
「“花産業はまだまだいける!”“花って可能性があるぞ!”と言い続けるのが僕らの使命。地域や業界の活性化はもちろんですが、最終的な目標は生産者さんが“東三河で花を作っていてよかったなあ”と思えるようにしていくことです」。
日本一花を作る町で生まれた花男子プロジェクト。彼らの挑戦はこれからも続きます。
2015年4月28日取材時の情報になります
ライター : 梅田美穂
施設名 | 花男子プロジェクト(HANAイノベーション株式会社) |
住所 | 愛知県豊橋市神野新田町ワノ割93-3 |
TEL | 0532-32-8787 |
営業時間 | |
定休日 | |