長良川の支流・板取川が流れ、緑豊かな山々に囲まれた美濃市牧谷地区。古く平安時代に手漉き和紙づくりがはじまった、美濃和紙の里とよばれているところです。明治時代には約3000軒もの手漉き和紙工房があり、産地として栄えました。
この地で60年以上、機械抄きの美濃和紙を作り続ける、丸重製紙企業組合を訪ねました。
迎えてくれたのは専務の辻晃一さんと、常務の辻将之さん。丸重製紙企業組合(以下、丸重製紙)は、二人の祖父が昭和26年に機械抄き美濃和紙メーカーとして創業。謄写版用原紙やタイプライター用原紙の製造からはじまり、現在は懐紙用原紙、防虫剤用原紙を中心に100種類以上の紙を作っています。
二人とも以前は違う仕事に就いていましたが、7年前に弟の将之さんが、その1年後に晃一さんが帰郷し、兄弟で家業を継ぐことに。工場を受け継ぐにあたり、掲げたテーマは「美濃と和紙を元気にする会社」。
「祖父の代からここで商売を続けてこられたのは、地域の人や自然との関わりがあったからこそ。和紙の将来は厳しいですが、製造業だけにこだわっていても先はない。生まれ育った美濃の町と和紙のために、出来ることはいっぱいあると思うんです」と晃一さん。
まずは町に足を運んでもらい美濃和紙を知ってもらおうと、工場見学会をスタート。晃一さんや将之さんが工場の中を案内し、和紙を作る工程をすべて公開しています。一般の人はもちろん同業者も歓迎、写真撮影OK、予約不要というスタイルで毎月1回開催、来月4年目を迎えます。
「見学のお客さんが見に来ることで現場に風が入りますし、オープンにして悪いことはないですから」と将之さん。
また企業やクリエイターを対象とする「産業観光ツアー」の企画や、フェイスブックでの情報発信など、美濃和紙やものづくりの魅力を伝え、広める活動にも積極的に取り組んでいます。
晃一さんの案内で、和紙の製造工程を見学しました。
「最初に原料のパルプと水を合わせてビーターという機械でほぐします。これに粘剤を加えて溶液にし、ダマやチリをスクリーンという網で取り除いた後、機械で抄いてシートの状態にします。さらに脱水してドラム型ドライヤーで乾燥させ、ロール状に巻き取ります。その後、商品によって裁断を行います」。
創業当時から使い続けている巨大な抄紙機が紙を抄き、ロール紙が出来上がっていく光景は圧巻です。
「機械抄きも手漉きも、和紙を作る基本の工程は同じですが、僕たちは機械にすべてを任せるのでなく、機械は道具だと捉えています。例えば、材料となるパルプをビーターで叩いてほぐす工程。季節や水質、パルプの状態に合わせてビーターにかける時間を変えるのですが、それには職人の経験や感覚が必要です」。
丸重製紙が得意とするのが、お茶席や和食の場で使われる懐紙。なかでも透かし模様を入れた原紙は、市場シェアのほとんどを生産しています。
最近は伝統的な和の模様のほか、将之さんが描くオリジナルデザインの透かし入り懐紙も注目を集めています。家紋や好きなデザインでのオーダーにも応じているとのこと。
今後はオリジナル懐紙のメーカーとしてブランド化し、事業を拡大していきたいと話す二人。
「和のたしなみとしてはもちろん、いろいろな使い方ができる懐紙の魅力も伝えていきたいですね。目指すは懐紙作家です」と晃一さん。
将之さんも「自分たちの武器である透かしの技術をもっと突き詰めて、ひたすら上昇していきたいです」と将来への思いを語ってくれました。
2014年9月10日取材時のデータです
ライター : 梅田美穂
施設名 | 丸重製紙企業組合 |
住所 | 岐阜県美濃市御手洗464 |
TEL | 0575-37-2329 |
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