豊田市の北部、猿投地区は有数の農業地帯。とくに桃、梨、スイカ、ブドウなど果物の生産が盛んな地域です。中でも桃の生産量は県内第一位を誇ります。
栽培農家も多く、JAあいち豊田桃部会の所属農家だけでも54戸、栽培面積は約52ヘクタール、10品種が栽培され、出荷量は年間およそ500トンに及びます。
今回は部会長の大岩孝弘さんにお話を伺いました。
大岩さんの家で桃の栽培をするようになったのは、1959年(昭和34年)の伊勢湾台風のあと。「栽培していた柿の木が壊滅状態になり、桃の方が柿より早く実を付けるので切り替えました。その後、本格的に桃栽培を手がける農家が増え、今に至っています」。
桃畑のある場所は猿投山の山麓。「土は粘土質で本来は果樹栽培には向いていないんです。木も大きくならないし、木の寿命も普通より5年ほど短いですね」。ただ、粘土質の土壌は栄養分が流れにくいという利点もあり、この地で作った桃は糖度が高く、美味しいと言います。
桃の栽培は秋冬の肥料やりや枝の剪定から始まり、4月上旬の人工授粉の作業から本格的なシーズンに入ります。「授粉はすべての桃に必要なわけではなく、花粉が少ない川中島白桃と花粉がない大和白桃などが対象になります。授粉作業は、花が満開になる直前の風がなく晴天の日を選んで行います」と大岩さん。授粉の必要がない品種も、余分な花を落とす作業があると言います。
実が付き始めると、病気にかかった実や形の悪い実を落としながら間引く摘果作業やその後は袋掛けと、収穫まで忙しい日々が続きます。
害中対策も気が抜けません。「ここ数年は交信撹乱剤(性フェロモン剤)という、安全、安心で環境にもやさしい薬を使っています。虫の交配を防いで次世代の幼虫の数を減らしていく薬ですが、他の農家とも協力して使うことにより効果が現れつつあります」。
現在、猿投地区では、6月下旬に出荷する早生品種「ちよひめ」から始まり、9月下旬出荷の「ゴールデンピーチ」まで段階的に異なる品種の桃が出荷されています。大岩さんのところでも7品種を出荷しているそうですが、最近は「黄美娘(きみこ)」や「ゴールデンピーチ」などの黄桃が人気とのこと。
「桃は繊細な果物で傷みやすく、収穫にも気を使います。一つひとつ色づき具合を見ながら、ていねいに手でもぎ取ります」。
収穫された桃はJAあいち豊田猿投選果場へ。「すぐに出荷せず、一晩冷蔵庫で寝かせます。冷やすことで傷みにくくなるんです」。
翌朝から箱詰めしますが、最初に傷みや柔らかさなどを見分けるのと、最後の箱詰めだけは手作業です。あとは最新鋭の選果機によって選り分けられます。
たくさんの桃が糖度測定装置(光センサー)と大きさや色などを判別するセンサーを通って自動的に選別され、ベルトコンベアにのって流れてくる様子は圧巻です。
今年は生育が順調で、雨が少ないため糖度の高い桃に仕上がっているとか。箱詰 めされた桃は、地元をはじめ、名古屋、岡崎、浜松などの市場へ出荷されます。
2014年7月23日取材の情報になります
ライター:田中マリ子
施設名 | JAあいち豊田 猿投選果場 |
住所 | 豊田市四郷町森前187番地 |
TEL | 0565-46-2225(直売所) |
営業時間 | 10:00〜17:00(8/13まで、8/17からは16:00まで) |
定休日 | 8/14〜16休 他はお問い合わせください |