三重県には、江戸時代に整備された五街道のひとつ旧東海道をはじめ、伊勢神宮への道だった旧伊勢街道や旧伊勢別街道(別名旧参宮街道)、熊野詣出に利用された旧熊野街道など、数々の街道の歴史が残っています。
当時、街道沿いには旅人が疲れを癒した茶屋が点在し、旅人をもてなしたという餅が今に伝わっています。中でも伊勢参りの旅人が利用した旧街道には様々な餅があり、「餅街道」と呼ばれるほどです。
当時の旅に思いを馳せながら、餅をたずねて歩きました。
交通の要衝としてにぎわった亀山市の関宿。江戸の昔にタイムスリップしたかのような歴史的な町並みが残り、現代の旅人を迎えています。
街道の中ほどにある築約300年の建物。そこで和菓子店を営む志ら玉屋さんで売られている餅が「志ら玉」です。もとは“白玉”という名で、この家の当主だった三宅家が代々、作っていたそう。
「後継ぎがなかったので、うちが名物の餅を引き継いで作るようになり、“志ら玉”としたんですよ」とお店の方。
外側の生地は上新粉にもち粉と水を加え、ていねいに練って蒸し上げ、杵でつきます。ほどよい甘さのこしあんをくるみ、三色の彩りをほどこした何とも愛らしいお餅です。餅の白は冬を、緑は春を、赤は夏を、黄色は秋をあらわしているとか。
※志ら玉屋(前田屋製菓) 住所/三重県亀山市関町中町407 TEL/0595-96-0280
営業時間/10:00〜18:00 定休日/無
URL/http://www.maedayaseika.com/ E-mail/sweets.siratamaya@zc.ztv.ne.jp
「伊勢音頭」に「伊勢は津でもつ、津は伊勢でもつ」という歌詞があるように、津はお伊勢参りの旅人が行き交う旧伊勢街道の宿場町。中でも津観音のある大門あたりは門前町としてかなりのにぎわいを見せていたとか。
昔から多くの旅人に愛された餅菓子が「けいらん」です。こしあんを上新粉で包み、上に赤や黄色の餅米を散らしたもの。「地元では初盆やお彼岸のお供えなどに使われます」と玉吉餅店のご主人。
「鶏卵」と書いたという説もありますが、由来は定かではないそう。
伊勢神宮周辺には、全国的に名を知られた「赤福」をはじめ、勢田川の船着き場の茶屋で売られた「二軒茶屋餅」、伊勢二見浦の「御福餅」、秀吉ゆかりの餅と伝わる「太閤出世餅」など数多くの餅があります。
「へんば餅」もそのひとつで、旧伊勢別街道の宮川沿いにあった茶店で売られていました。伊勢参りの旅人は宮川を渡るにあたり、ここで馬を返して参宮したことから、へんば(返馬)餅と名付けられたとか。
こしあんをくるんだ餅に焼き目を付けているのが特徴です。
茶屋の雰囲気を感じさせる、へんばや商店本店内で名物餅をほおばれば、少しだけ江戸の旅人気分を味わったような気になります。
※へんば屋商店 本店 住所/三重県伊勢市小俣町明野1430-1 TEL/0596-22-0097
営業時間/8:00~17:00(売り切れ次第,閉店) 定休日/月曜日(祝日の場合は翌日) URL/http://www.henbaya.jp/index.html
2014年6月7日取材の情報になります
ライター:田中マリ子
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