中部を動かすポータルサイトDochubu

トップページ 今月の特集 地元食を旅する DoChubuピックアップ アーカイブ

DoChubu

長良川の恵みに感謝。清流と故郷・岐阜への思いから生まれた「長良川サイダー」
2013.07.16 更新

長良川サイダー(希望小売価格 200円)。レトロなロゴとラベルデザインは、
岐阜の町づくりを支援するORGANデザイン室によるもの。澄んだ長良川のイメージそのもの!

豊かな水量をたたえ、とうとうと流れる長良川。
毎年5月から10月にかけて伝統漁法の鵜飼が行われます。
ほとりにそびえる金華山も豊かな自然を今なお残し、数多くの動植物が棲んでいます。
山頂にはかつて斎藤道三、織田信長の居城だった岐阜城がそびえます。

岐阜市の中心部を流れる清流、長良川。
緑豊かな金華山と共にこの町のシンボルとして、古くから人々に親しまれています。
岐阜出身の私にとっても、長良川と金華山は見るたび「帰ってきたなあ」とほっとした気持ちになる存在。
ある日、そんな長良川の水を使ったサイダーと出合いました。
きれいなガラス瓶とどこかなつかしさを感じるパッケージがなんとも素敵で、
どうして作られたのか詳しく知りたくなり、取材に出かけました。

名水百選にも選ばれたおいしい水

今回取材に応じて下さったのは、「長良川サイダー」を製造販売する伊奈波商會代表の金森正親さん。
なぜ長良川の水でサイダーを作ろうと考えたのか。そのあたりからお話を伺ってみました。

「岐阜の水道水は“おいしい”とよく言われるのですが、
それは良質な長良川の伏流水を原水としているからなんです。
長良川サイダーは、このおいしい岐阜の伏流水を原料に使っています」と金森さん。
岐阜市が位置する長良川中流域の水は、昭和60年に旧環境庁の「名水百選」と、
旧厚生省の「おいしい水」に選ばれているそう。

なるほど、おいしい水で作ったサイダーということなんですね。でも、伏流水って?
そんな質問に答えるのにうってつけの場所があるとのことで、案内してもらうことに。
行き先は、岐阜市の水道施設、鏡岩水源地でした。

「長良川サイダー」の考案者、伊奈波商會代表の金森正親さん。

(左)岐阜市内に水を供給する水道施設、鏡岩水源地の正面入り口。すぐ目の前は長良川です。
(右)鏡岩水源地にある「水の資料館」。
昭和5年から昭和40年代まで、鏡岩水源地の給水用エンジン室として使用されていました。
向こうに見えるのは、旧ポンプ室の「水の体験館」。丸窓、山小屋風の屋根がレトロでおとぎ話の建物のよう。

伏流水へのこだわり

鏡岩水源地は長良川の左岸、金華山の真下に位置しています。
昭和5年に上水道の取水場として造られ、現在も岐阜市の中心部へ水道水を供給しています。
伏流水とは、川の水が川底に浸透して水脈を作る浅い地下水で、
地中で自然のろ過が行われるため水質が良好。
表層水(河川の流水)を水道水として使用する場合、
法律で定められた浄化処理が必要ですが、浅井戸でくみ上げる長良川の伏流水は、
その処理が最小限で済むほど上質なのだそう。

長良川サイダーに使う水は、鏡岩水源地から上水を分けてもらい、
トラックのタンクに積んで製造工場へ運んでいます。
「最初、岐阜市の水道事業部には断られたんですよ。
でもどうしてもここの水で直接作りたい!と思っていたので、あきらめず何度もお願いしたんです」。
何度も交渉するうちに熱意が通じ、特別に使用が認められました。

岐阜の水道水ができるまでの流れがよくわかるパネル。「水の資料館」に展示されています。

(左)「水の体験館」内部。
(右)「水の体験館」に展示されている水琴窟の模型。きれいな音を聞くことができますよ。

(左)資料館と体験館のすぐ後ろの金華山中には、岩盤をくり抜いて作った配水池(タンク)があります。
景観に配慮して地中に作られたそう。伏流水からくみ上げた水を貯水するタンクは、
市街地の約半日分の水をまかなえるほどの大きさ。
(右)資料館、体験館共に2001年(平成3年)国の登録有形文化財に指定。
外壁は長良川の丸石が使われています。

長良川サイダー誕生のきっかけ

金森さんは金華山の麓の古くからの町、岐阜市白木町に生まれ育ちました。
本業はプラスチックフィルムなど包装用資材を扱う仕事で、
サイダーなど食品の加工販売は初めての経験。
契機はここ数年、周囲でまちおこしイベントなど、地域の活性化をめざす動きが盛んになったこと。
20〜40代の人たちが「自分たちの暮らす岐阜の町を元気にしたい、魅力を伝えていきたい」
という思いから、若い感性ならではの情報発信や商品開発などに取り組んでいます。

彼らの活動に触れるうちに、
「自分も何か岐阜のためになることをやってみたい」という思いが金森さんにも生まれます。
「何が出来るだろう?と考えたとき、長良川がすぐそばにある町で暮らしているけれど、
自分たちは川からもらってばかりだなあと。だから川に恩返しをしたいと思ったんです。
それも一回かぎりじゃなく、継続して活動を続けていけるよう、
お金もきちんと生み出せることでやってみようと」。

仕事柄、地元のお土産屋さんに行くことが多く、「岐阜のお土産にもなるよいもの」を作ることを決心します。
商品のテーマは「長良川の水のきれいさをそのまま表現できるもの」。
たくさんのアイデアの中からサイダーに決定し、商品化に取り組みますが、
まずは製造してくれるメーカーを探すことに苦労したそう。

金森さんが一番大切に考えたのは、サイダーの味でした。
「水の透明感そのままを感じられるものにしたかったので、
“人工的じゃなく、自然な甘味で”とメーカーさんにお願いしました。
コストはかかるけれど、グラニュー糖のみを味付けに使う、昔ながらの製法で作っています」。
容器も透明感を生かせるよう、プラスチックではなくガラス瓶を採用。
商品のイメージに合うよう、ロゴとパッケージにもこだわりました。

長良川と岐阜の町のために

2012年4月に「長良川サイダー」として発売を開始すると、
約1ヶ月で当初の目標数を大幅にクリア。
現在は長良川温泉の旅館や土産物店、観光施設、サービスエリアなど
約150カ所に卸しており、初年度で10万本以上を販売しました。

売り上げの一部は、長良川上流の森を守る活動資金として使われています。

「僕らが住むのは長良川の中流域で、きれいで水量豊かな川の恩恵を受けていますが、
上流の森や山は今、深刻な状況なんです。
針葉樹の杉ばかりで山に水を貯める役割を果たしておらず、
それが川の水位の低下につながったり、水質にも影響が出てしまっている。
川と山は密接な関係があるんです。
美しい長良川をこれからも伝えていくためには、上流の山に健全な森を作っていく必要がある。
そのために森を育てる植樹活動を行っていこうと思っています」。

今年5月に開催された長良川おんぱくにおいて、長良川上流の郡上市明宝地区でコナラやクヌギ、
山桜などの苗木を植える「長良川サイダーの森を植えよう!」という植樹活動を行い、
約30名の人が参加しました。

長良川サイダーを手がけて「いろんなものを得た」と金森さんは言います。
「長良川への意識のある人と知り合うことが出来たし、
いろんな人が活動を認めて、受け入れて、協力してくれる。
川や町のためにと思って始めたことが、自分の財産にもなりました。
長良川サイダーが長良川を知るきっかけや、環境保護への意識づけになるといいなと思っています」。

現在、金森さんは長良川サイダーに続く新しい商品の開発に取り組んでいます。
最後に、活動への思いをこんなふうに話してくれました。
「長良川があって、その恵みがあって、岐阜の町と暮らしがある。
ここに住む僕らにとってベース、バックボーンは長良川なんです。
だからこれからも川から離れず、活動していきたい。
他所から来た人たちに“岐阜にはこんないいものがあるんだよ”と岐阜の恵み、
魅力を伝えていきたいですね」。

長良川、岐阜の恵みを伝えたい。長良川サイダーはそんな願いが形になった、
とても素敵な商品でした。伊奈波商會の新しい商品の登場が待ち遠しいです!

岐阜公園にある金華山ロープウェイ乗り場の売店でも販売しています。

ロープウェイに乗ると約3分で山頂駅に到着。
山頂には岐阜城、展望台、リス園があり、人気の観光スポットです。

編集員のココがオススメ!

お土産に頂いた長良川サイダーをよく冷やして頂きました。しゅわしゅわほどよい炭酸とすっきりした甘さで飲みやすく、どこかなつかしい気持ちにもなるおいしいサイダーでした。そういえばサイダーって久しぶりに飲んだかも。長良川に思いを馳せながら頂くと、また格別の味わいですね。

(梅田美穂)

詳細情報

ホームページ命の源・長良川から生まれた【長良川サイダー】伊奈波商會

お問い合わせ先 伊奈波商會
TEL/FAX TEL:058-262-2250
FAX:058-263-1654
E-mail info@inabashoukai.com

2013年5月13日現在の情報になります。

トップに戻る
トップに戻る