自然や景観、風土が育んだ農産物、伝統行事…地域のタカラモノはさまざまです。
岐阜県美濃加茂市では2年前に「地域ブランド創造室」を立ち上げ、
市ならではの特産品の発掘・ブランド力向上に力を入れています。
その取り組みについて、同創造室の久保田芳典さんと平岡一輝さんにうかがいました。
自然豊かな美濃加茂市は、千年続く干し柿「堂上蜂屋柿」の産地です。
その歴史は遥か平安時代までさかのぼり、朝廷に献上された由緒あるもの。
源頼朝、織田信長、豊臣秀吉など歴代の武将たちにも愛されました。
蜂屋柿は他地域でも育てられていますが、朝廷に献上された「堂上」を名乗れるのはここだけ。
「堂上蜂屋」という品種の柿からつくられます。
柿の重さは最少で270グラム、最大級で400グラム以上。
大きくて四角い「堂上蜂屋」を収穫し、手間ひまかけて干し柿にします。
「美濃加茂は冬に晴天の日が多く、
奥美濃で雪を降らせた後の乾いた風が吹き下ろすので干し柿づくりに適した気候風土です。
柿は収穫したら追熟させ、一つずつ丁寧に皮むきをし、かげ干し、天日干しに。
天気や風向きに合わせて柿の向きを変えながら、朝から夕方まで毎日乾燥させるんですよ。
生産者の方々が丹誠込めた堂上蜂屋柿は糖度50~60度、最大で65度もあります。
全国的にも珍しい立体的な形も特徴です」と久保田さん。
干し柿はJAに集められて検品。
重さ、色、形が基準を満たしているかチェックした上で、ランク付けがなされています。
堂上蜂屋柿は、イタリアに本部があるスローフード協会国際本部から
「味の箱舟(食の世界遺産)に認定。
国際的な評価も高く、歴史の長い干し柿ですが、実は生産者が年々減っているそうです。
「3年ほど前は78人でしたが、今は70人。平均年齢は75歳です。
このままでは10年後には“幻のブランド”になりかねません。
危機感を抱き、2010年に生産者やJAなどが一緒になって
ブランド構築事業実行委員会を立ち上げました。
その翌年、市の地域ブランド創造室もスタートしたのです」。
桃栗3年柿8年、といわれるように、柿は短期間で出荷できないため、
果樹園の拡大やよりよい栽培管理に向けて対策を練るほか、
地域ブランド創造室では販売ルートの拡大にも取り組みます。
展示会で販売したり、バイヤーにPRしたり、
2012年の年末には初の首都圏でのイベントにも出展しました。
「まず第一に堂上蜂屋柿のホームページを立ち上げました。
贈答品として柿を受け取った方、イベントなどで初めてふれていただいた方など
あらゆる人にもっとよく知ってほしいですから。
こうした情報提供やイベントなどで、堂上蜂屋柿を全国発信しています」。
さらに、市としては特産品を核とするまちづくり、まちのブランディングに目を向けます。
「柿を突破口として、多くの人に“美濃加茂にはおいしいものがある”と知ってもらいたいですね。
全国的、全世界的な知名度を向上していきたいと考えています。
同時に、美濃加茂市にとってはビジネスチャンス。
干し柿に加えて、柿のスイーツや加工食品を作るなど
新しいビジネスを広げるきっかけにできればいいですね。
そして、市民が堂上蜂屋柿を“世界一の柿”と胸が張れるようになればと思います」と平岡さんは強調します。
「そうですね。市民の皆さんは身近すぎて、
美濃加茂市の魅力について知っているようで実は知らないことが多いかもしれません。
地域ブランド創造室がどんどん情報を発信し、
市民と共有できたらいいですね。よさに気づくことで、
市のイメージや住みやすさの向上につながっていくのが理想的です」と久保田さん。
今後、柿に続く地域ブランドの育成も構想中だそうです。
どんな魅力が磨かれていくのか楽しみですね。
大きな柿から作る「堂上蜂屋柿」は干し柿といっても、半生菓子のようななめらかさ。毎年12月1日から「JAめぐみの蜂屋支店」で予約開始され、販売の季節も数量も限定の希少品です。最もランクの高いもので1個あたり1500円近く。多くの方は贈答品として購入するそうですが、できれば自分用にもぜひほしい!と思いました。
(南由美子)
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施設 | 岐阜県美濃加茂市役所 |
住所 | 岐阜県美濃加茂市太田町3431-1 |
TEL&FAX | TEL: 0574-25-2111(代表) |
2013年2月8日現在の情報になります。