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「長良川まんぱく」で、“和”の調味料・みりんと洋菓子の マリア―ジュを企画した「みりんスイーツ実行委員会」
2013.03.26 更新

日本最古のみりんメーカーとのコラボ

「九重味淋株式会社」の本みりん「九重櫻」

 みりんといえば日本の調味料の代表格。
そのみりんを使ったスイーツづくりの教室が岐阜市で開催された。
これは「長良川まんぱく」(以下「まんぱく」と呼ぶ)の体験プログラムの一つで、
題して「フランス菓子とみりんの融合! 家庭で再現できるみりんスイーツ教室」。
主催者は「みりんスイーツ実行委員会」だ。

 「まんぱく」の実行委員長であり、本企画の仕掛け人、
岐阜市の老舗調味料卸問屋「山本佐太郎商店」の4代目・山本慎一郎さんによれば、
2年前から愛知県のみりんの老舗「九重味淋株式会社」(以下、「九重味淋」という)とコラボして
みりんスイーツの開発に取り組み、
これまでに期間限定のイベントとして「みりんスイーツ」を5回開催してきたという。
「九重味淋」は、現存する日本最古のみりんメーカーとして知られている。

「ギャルリ・シュシュ・アー」の白木亮年さん

「山本佐太郎商店」の4代目・山本慎一郎さん(右)と奥様(左)、9カ月の愛娘・純子ちゃん

 この日の講師は、大垣市のフランス洋菓子店「ギャルリ・シュシュ・アー」の
シェフ・パティシエである白木亮年さん。
白木さんはフランスでお菓子作りの修業を積み、揖斐川町産のヨモギなど、
地元食材にこだわった、とてもお洒落なスイーツを考案し、好評を博している。 
   
お昼を挟んでの受講になるため、スイーツともう一品、主食になるものを作った。
「クレープ・シュクレ」と「ハム&エッグ・メルトパンケーキ」。
どちらも主となる原料にホットケーキミックスを使っている。
「最初はホットケーキミックスなんて……と思っていましたが、
使ってみるとダマになりにくく、とても優れた食材だと思うようになりました。
日本で生まれた食材なので、フランスにお土産に持っていくととても喜ばれます」と白木さん。
 どちらも香り付けは、もちろん、みりんである。

(左)白木さんの話を熱心に聞く参加者たち (右)パンケーキを食べながら情報収集には余念がない

簡単でおいしいホットケーキミックスは主婦の味方。レシピも豊富だ

色・風味・香りと三拍子そろった「本みりん」

 当日は「九重味淋」の中尾紘基さんも来ておられたので、
みりんについてのお話を聞くことができた。
「日本には、三河・流山(千葉県)・京都の伏見とみりんの三大産地がありますが、
弊社は三河で本みりんを製造しています。
江戸時代中期、みりんはお酒が苦手な人や女性たちに甘いお酒として愛飲されていましたが、
後期になるとそばつゆやウナギのたれなどにも使われるようになって
次第に調味料としての側面が強くなり、
今では日本の代表的な酒類調味料として幅広く使われています」と中尾さん。

 「九重味淋」の主要銘柄は「九重櫻」。
焼酎にモチ米、米麹を原料とする「本みりん」だ。
大正から昭和にかけての全国酒類品評会で、唯一最高の「名誉大賞」に輝いている、
みりんの中のみりんである。

「九重味淋株式会社」の中尾紘基さん。
山本さんとタッグを組み、新たなみりんの可能性を求めて、積極的にメニューの開発に取り組む。

 本みりんによく似た名前の調味料として
「みりん風調味料」があるが、製法や成分が全く異なり、似て非なるものである。
 お願いして調理に使われた残りのみりんを味見させていただいた。
甘くてとてもおいしい! そして、風味のなんと濃厚なこと。
香りも芳醇で、これまで使ってきた「みりん風調味料」とはまったく違う。
中国に「杏露酒」というあんずのお酒があるが、色も風味も、それにちょっと似ているように思った。

「海外では、みりんはライスリキュールと呼ばれており、
杏仁豆腐や柑橘系を使ったスイーツなどと相性は抜群。
このほかブラックペッパーのみりんづけや、ほうじ茶の茶葉をみりんにつけこんだものなど、
いろいろな風味をみりんにうつすこともできます。
みりんは料理の脇役で引き立て役。脇がすばらしいとメインも引き立ちます」と、白木さん。
フランスではみりんを凍らせて食前酒として出すこともあるとのこと。

家庭でも手軽にできるみりんスイーツ

ハム&エッグ・メルトパンケーキ。
焼いたパンケーキの上に、ハムと目玉焼きを乗せ、上からホワイトソースをかけたもの

クレープ・シュクレ。みりんが入っていることで適度な焦げ目がつき、
さらに上から煮切ったみりんをかけ、照りを出している。

「ビスタリーマーム」のメンバーでもある、
民宿「上出屋」の女将・西脇洋恵さん、下田葉子さん、二村美保さん

 みりんの甘みは上品でまろやか。
しかも、カロリーは砂糖の3分の1なので、健康にも良い。
クレープを焼く時も、みりんを加えて焼いたものとそうでないものとでは、
焦げ目の付き方が違うのだそう。

 さて、お待ちかねのランチタイム。
焼いたハムと目玉焼きを乗せ、上からホワイトソースをかけたボリュームたっぷりのパンケーキだ。
 この日の参加者の中には、
「長良川まんぱく」の体験プログラムの主催者である「めいほう鶏ちゃん研究会」に属し、
郡上市明宝の民宿のおかみさんたちでつくる村おこしの会「ビスタリーマーム」のメンバーでもある、
民宿「上出屋」の女将・西脇洋恵さんたちも参加。
明宝地区の古民家「源右衛門」でコミュニティカフェをやる予定だが、
その中でみりんスイーツを出すかもしれないので、今日はその勉強に来たと笑顔で話してくれた。
 また、岐南町から参加の川村さん親子は、
「うちでできそうだし、ぜひつくってみたい」ということだった。

 参加者たちがランチをしている間に、白木さんはスイーツの準備にかかる。
薄く焼いたクレープを手際よく裏返し、
こんがりとこげめがついたら半月に折り畳み、上から煮切りしたみりんを回しかける。
アルコールのにおいは料理の風味を損なうため、
みりんを煮立たせて火をつけ、アルコール分を飛ばすのである。
「炎が消えるまで燃やすとアルコールが消えます」と白木さん。
 クレープはいかに薄くきれいに焦げ目をつけて焼くかがポイントだが、
それさえクリアできれば、家庭でも手軽につくることができる。主婦にとっては嬉しいメニューだ。
 食の世界は無限大! 今回はみりんの奥深さについて知ることができた貴重な体験だった。

編集員のココがオススメ!

みりんが江戸時代、女酒と呼ばれ、女性が好んで飲んでいたというのは、以前ものの本で読んで知ってはいたのですが、実際に本当のみりんを味見したこともなく、こんなにおいしいものだということを知って、あらためてその魅力に引かれています。しかも、香りがとても芳しく、リキュールとして使えるというのも新たな発見。ぜひ、これからも新たなみりんスイーツの開発に努め、本物のみりんのすばらしさをアピールしていっていただきたいです。

(取材・原稿作成:松島頼子 撮影:雨宮明日香)

 

詳細情報

団体名 みりんスイーツ実行委員会
住所 合名会社 山本佐太郎商店
岐阜市松屋町17
TEL&FAX TEL:058-262-0432
営業時間 9:00~19:00

2013年2月18日現在の情報になります。

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