入河屋は奥浜名湖畔の老舗和洋菓子司。
三ケ日宿を東西に横断する姫街道と、南北に走る伊奈街道が交わる三ケ日宿の十字路・四辻に
明治18年(1885)、店を構えたのが始まりだといいます。
この四辻の店は平成19年(2007)に閉店し、現在は事務所になっているということで、
天龍浜名湖鉄道奥浜名湖駅近くにある「三ヶ日本店」を訪ねました。
入河屋が「青じそ加工研究会」に正式に加わったのは、今年(2011)の4月。
5代目となる松嵜善治郎さんは、青じそを使うというテーマで新作菓子をつくるのは、
あまり苦労しなかったと語ります。
それは菓子職人として積み重ねた修業や、
日頃から意識しておいしいものを食べ歩くなどの努力があったから。
一番悩んだのは、これでいい!とゴーサインを出すことだったといいます。
そこに行きつくまでは、ようかん、お餅、チョコレートなど、
さまざまな素材と組み合わせてみました。
どれもおいしくできましたが、最終的に提案したのは、
青じそ入りの蒸しカステラ生地で粒餡をくるんだお菓子「蒸しカステラ」です。
もともと和菓子にしそは使われているので、相性がいいことは分かっていました。
それを和菓子の蒸しカステラに入れてみたら、思った以上にマッチして驚いたそうです。
工夫した点は、生地に混ぜる青じそをペーストではなく、生葉を細かく刻んだものにしたこと。
まず刃で粗く刻む機械にかけ、それをさらにフードプロセッサーでより細かくします。
そうすることで長いしその繊維を断つことができ、香りも立ってきます。
「蒸しカステラ」1個あたりに入っている生葉はたっぷり2枚。
砂糖のコクが青臭さを消し、しそのいい風味だけを引きだしてくれます。
「今回、蒸しカステラを提案したのは食べやすいから」と松嵜さん。
では、なぜ食べやすさにこだわるのかというと
展示会などで商品を食べてもらい、その良さを分かってもらってこそ
「青じそ加工研究会」の活動をPRすることができるからとのこと。
「日本人はカステラとか、どら焼きとか、生地のしっとりしたものを好みます。
それらは飲み物がなくても食べやすいお菓子なんですね。」
つまり、完成した「蒸しカステラ」は味のみならず、
試食してもらいやすさにも配慮されたお菓子だったのです。
入河屋はこれからも青じそ加工研究会の活動を通して、
季節ごとにいろいろな青じそスイーツを制作していく予定です。
そのスイーツは、青じその葉を意味する葉っぱ「808(はちまるはち)」シリーズとして展開。
毎月8のつく日(8・18・28日)に入河屋三ケ日本店と豊橋店、遠鉄百貨店で限定販売されます。
入河屋は3代目までは和菓子のみ、4代目から洋菓子も始め和洋菓子司となりました。
5代目である善治郎さんは、小さな頃から3代目であるおじいちゃんやおばあちゃんに
「お前は5代目だ、5代目だ」と言われ続けていたそうです。
「おかげで、ごく自然に家業を継いでいました。うまいマインドコントロールですよね」と笑います。
大学卒業後、和菓子屋さんで5年ほど修業し、その後洋菓子も勉強しました。
つくったお菓子は子どもと一緒。売れ残って捨ててしまうのは一番心が痛みます。
そこには材料に対する感謝というか、そのおかげで商売ができているという思いがあります。
「食べていただくお客様に一番いい状態で提供するのはもちろんですが、
材料の生産者の方にも、材料に対しても失礼のないような菓子づくりをしていきたい」。
創業百二十余年の老舗を受け継ぐ若き5代目の真摯な言葉が印象的でした。
■次回は青じそ寄せ豆腐の「寺部食品」をご紹介いたします。
入河屋さんの定番人気商品をご紹介しましょう。まずは店の代名詞ともいえる「みかん最中」。特産の三ヶ日みかんをイメージした最中で、北海道十勝産の白豆「姫手亡」に地元三ヶ日のみかんを練り込んだ餡は、口に広がる爽やかなみかん風味が自慢です。 またもうひとつ、ご当地ならではの人気商品が「大福寺納豆かりんとうみそまん」です。三ケ日の名刹、大福寺でつくられている「大福寺納豆」と沖縄県産の黒糖を混ぜた生地に、漉し餡を包んで蒸しあげたみそまんを油でこんがり揚げています。かりんとうのような食感が楽しめる1口サイズのお饅頭で、1度に5〜6個は食べられそう。どちらも三ヶ日に来たら、ぜひ土産にしたい逸品です。 (宮内京子)
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会社名 | 株式会社 入河屋 |
住所 |
本社 静岡県浜松市北区三ヶ日町三ヶ日230「四辻坂」 TEL 053-525-0258 三ヶ日本店 豊橋湊町店 浜松遠鉄店 |
URL | 入河屋 |
2011年12月4日現在の情報になります。