野菜、米、果実、園芸作物など多彩な産物が栽培され、養鶏、養豚も盛んな豊橋は、
全国トップクラスの農業生産額を誇ります。
農業王国としての伝統を守りつつ、
今の時代に合った革新的な取り組みをしている「豊橋百儂人」。
創設メンバーの一人であり、事務局長を務める清水貴裕さんにその成り立ちや目指す姿を聞きました。
檸檬儂人、柿儂人、茶儂人、青紫蘇儂人…。
様々な「儂人」で構成される「豊橋百儂人」。
「農」にニンベンが付いた「儂」を用いているのは、「人」が主役だから。
「“人”に目を向けたのは、代表の河合浩樹さんが、
学生時代の恩師から『農業は“個”の時代が必ず来る』と助言されたことに由来します。
一人ひとりに焦点を当てた“人”のおもしろさこそが、豊橋百儂人の魅力です」と清水さんは力を込めます。
「儂」には「わし」という読み方もあり、
村で尊敬される長老たちが使っていた、自分を指す言葉です。
しかし今では、そうした村社会がなくなったばかりでなく、
大切な産業であった農業も、衰退の道をたどりつつあるのが現状。
長老が尊敬されていた頃をもう一度見直し、豊かな農と食を守り、後世に伝えていこう。
そんな思いが、「儂」には込められているのです。
儂人として参画したい。この意志が、豊橋百儂人の大前提です。
「まず、参画要件に共感できることが不可欠。常に自身を革新させる努力をしている、
Webなどで自身や商品の情報を発信している、などの要件がありますが、
これらを知ってやはり参画できないという方もいらっしゃいます。
儂人になると本当に大変。
なんといっても、格付けされてそのランキングをホームページで公開されるわけですから。
そのため、一度入ってから脱落された方もいます」。
清水さんが話すように、豊橋百儂人では140項目もの審査基準で儂人を格付けしています。
「審査するのは、儂人たち全員に加え、“お買いもナー”と呼ぶサポーターです。
サポーター制度も私たちの特徴で、一般の消費者にサポーターになってもらい、
“もの言うお買いもナー”として儂人を審査したり、
新しい商品の提案をしたり、作物を購入いただいています。
何より、買い支えてもらえるのが、儂人の励みになりますね」。
儂人とサポーターたちは、普段からメーリングリストで交流や情報交換を行っています。
年に一度の総会では、儂人がサポーターをおもてなし。
新年会も開かれ、顔を合わせる交流で一層つながりを深めています。
設立して2年半。現在、10人の儂人がいます。
「豊橋には百ぐらいの農作物があるため、目指したのが百儂人でした。
儂人は10人以上に増えていくと思いますが、
組織が大きくなった頃、事務局も含めてメンバーは総入れ替えになっていてもいい。
百儂人には、つねに最善のメンバーが集まるべきです。
そして現在の儂人は、ゆくゆくは指導者になってほしいですね」。
また、シティープロモーションのひとつとして豊橋百儂人に関わる
豊橋市役所の小久保篤史さんは
「豊橋の農業は、後継者不足が深刻な問題。
これだけ条件が恵まれているのに、受け継がれないのはもったいないと思います」と話します。
清水さんと小久保さんが考えるのは
百儂人のように「農業をやり尽くした人に、次の世代を育成してほしい」ということ。
「儂人が指導者となり、次の世代を育て、その人たちがさらに次へと伝えていく。
それこそが、農業王国・豊橋が生きていく道になるのではないでしょうか」。
今だけなく、ずっと受け継がれる革新。
そうなれば、豊橋の農業はもっとおもしろくなっていくに違いありません。
清水さんは「黒子儂人」に徹し、なるべく提案をしないようにしているとか。あくまでも「主役は儂人」の考えを貫きます。これまでの農業人は寡黙というイメージですが、豊橋百儂人ではコミュニケーションを重視。毎月の会合でも、サポーターに対しても、自分を表現することが求められています。実際、140の審査基準の中に「2時間半、自身の儂人道をしゃべり続けられるか」「歌って踊れるか」というユニークな項目もあるほど。これまでにないタイプの新しく楽しい農業を感じました。
(南 由美子)
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名称 | 豊橋百儂人 |
住所 | 〒441-8113 豊橋市西幸町字浜地333-9豊橋サイエンスコア104(株式会社都デザイン内) |
TEL/FAX | 0532-48-5980 |
URL | 豊橋百儂人 |
2011年10月17日現在の情報になります。