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未来に続く、元気な里を作りたい。
「栃尾里人塾」の挑戦
2016.09.30 更新

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岐阜県郡上市明宝二間手地域に、栃尾とよばれる集落があります。清流吉田川の流れる自然豊かな山里で、「未来に続くふるさとを作ろう」と活動するのが「ふるさと栃尾里山倶楽部(以下、里山倶楽部)」。その活動の様子を紹介します。

里山を次の世代につなぎたい

里山倶楽部の結成は2009年。山間の小さな集落、二間手下組に住む16世帯(発足当時)の住民が栃尾の空き家に集まり、活動を始めました。

「里の暮らしは自給自足を基本に、人と人のつながり、人と自然のつながりのなかで成り立っていましたが、現代はそういったつながる場が少なくなっています。栃尾も過疎化が進み、人が集まる機会がずいぶん減りました。昔のように人が集まって、お互いに協力しあえるふるさとを、次の世代につなげていきたいと思ったんです」と話すのは、代表の置田憲治さん。

同じ想いの住民が集まり、まずはみんなで集える場所を作ろうと、長く空き家だった築100余年の古民家を自分たちの手で再生。先代の屋号にちなみ「源右衛門(げんねもん)」と名付け、活動の拠点としています。

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築100余年の古民家、源右衛門。二階には養蚕の蚕を飼っていた部屋もあり、かつて自給自足だった栃尾の暮らしを伝える貴重な家屋です

里山の暮らしを体験する「里人塾」

2010年からは、「栃尾里人塾(以下、里人塾)」をスタート。地域外の人も受け入れ、参加者全員が里人として、里山づくりに取り組んでいます。

里山とは、人がゆるやかに関わることでできた自然のこと。日本の伝統的な農村の暮らしを支えてきました。里人塾では地域の住民を中心に、里山で培われてきた知恵と技術を、作業などを通じてみんなで体験します。
開催は毎年5月から10月の間、毎月1回のペースで行われ、一年間の内容は話し合って決定します。

これまでの活動内容は、「森・農・自然エネルギー」のテーマのもと、広葉樹の森づくりや耕作放棄地の活用、太陽光発電や小水力発電の研究、かまどづくりなど。
参加者はのべ600名以上で、隣県の愛知県からが多く、遠くは神奈川県や京都府から通う人もいたそう。田舎暮らしに興味がある、田舎に移住したい、森や自然のことを知りたい、地域づくりを研究したいなど、参加者の目的はそれぞれです。

里人塾の合言葉は、「みんなで考え、やってみる。何より楽しく」。
「田舎の人も都会の人も、年齢や職業が違っても、同じ里人同士として活動します。田んぼや畑で作業をしたり、森で木を切ったり、かまどを作ったりと、1日作業した後に、あとふきという懇親会をするのですが、これも楽しいですよ。昼間一緒に作業をして、夜は膝をつきあわせてお酒を飲んで、いろんなことをみんなで話す。知らない人同士でもすぐに仲良くなれますね」と置田さん。

取材日はちょうど里人塾の開催日。この日は10数名が参加し、水舟の屋根づくりや、畑で草取りと大根の種まきが行われました。

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メンバーから「憲治さん」と親しまれる、里山倶楽部代表の置田さん。「たくさんの人と関われるのが、里人塾の魅力のひとつ。気分転換の場所として、ぜひ参加してみてください。日中汗を流して、夜は一緒に飲んで、いろんな話をしましょう!」

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水舟の屋根を作るため作業中。竹を切り、組み合わせて柱や屋根の骨組みを作っていきます

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これが水舟。郡上の伝統的な水利用のシステムで、湧き水などを引き込んだ二層または三層からなる水槽です。最初の水槽は飲み水や食べ物を洗うために使われ、次の水槽で食器などを洗います。残飯はそのまま下の池に流れて、鯉などが食べ、水は自然に浄化されて川へと流れます

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畑で大根の種まき。地域の子どもたちも集まり、一緒に作業を行いました

6組の移住者が誕生

里人塾が始まって7年目。これまでの参加者の中から、6組が郡上市内へ移住。皆、地域の人たちとの交流から、仕事や住まいの情報を得て実現したといいます。

「里山を未来につなげたいと、自分たちのやりたいことを続けてきただけですが、ここや郡上を気に入ってくれたということだから嬉しいですよね。地元も里づくりに通う人と関わって、どんどんつながりができて元気になったし、地域の自信にもなりました」と置田さん。

里人塾の広報を担当する山中佐代美さんにもお話を伺いました。山中さんは2010年、地域がんばり隊に採用されたことをきっかけに、愛知県から郡上市明宝地区に移住。地域おこし協力隊を経て、現在は病院勤務の傍ら、夫とともに吉田川の上流でワサビ栽培に取り組み、畑で栽培した野菜で保存食を作るなど、里山の食と暮らしをテーマに活動しています。

「今は自分の価値観に見合う生活、その人がその人らしく生きられる場所を選べる時代です。移住の相談を受けることもありますが、私はありのままを見てもらうようにしています。いいところ、悪いところの両方を見て、それでも移住したいと思えるかどうか。明宝は独特な人が多いですね(笑)。それも含めて魅力ある人が多いところです」と山中さん。

里山の暮らしを里人として体験し、未来へ続く里山を作る、里人塾の取り組み。栃尾の豊かな自然と里山の暮らしを通じて、自分なりの「暮らし」を考えたり、生き方のヒントを見つけたりできそうです。ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか。

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お話を伺った、サミーこと山中佐代美さん。隣は栃尾の長老、敬一ま(「ま」とはこの地域で使われる敬称)。山の事、畑のことなど、ありとあらゆる里山の知恵と技術に精通したみんなの師匠です

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この日の参加者たち。子どもから大人まで、幅広い年齢層が集まり、活動しています

※2016年度の里人塾への参加申し込みは、栃尾里人塾詳細(ふるさと郡上会HP)まで。

2016年8月27日取材時の情報です。
ライター:梅田美穂

お問い合わせ
施設名 ふるさと郡上会事務局
住所
TEL 0576-66-2750
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