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川に寄り添い生きる
長良川の漁師たち part1
2014.06.11 更新

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岐阜市の中心部を流れる、清流・長良川。岐阜県郡上市の大日ヶ岳に源を発し、木曽三川のひとつとして伊勢湾にたどり着きます。全長はおよそ165キロ。
川は水や魚をはじめ、さまざまな恵みを流域に住む人々に与え、町を育んできました。
今月は「長良川の恵みと岐阜の町」をめぐる、さまざまな物語を紹介していきます。

長良川のアユ漁

長良川といえば伝統漁法の鵜飼や、日本名水百選にも選ばれた水質のよさで知られていますが、本流にダムがひとつもない、とても貴重な川だということをご存知でしょうか?
この川にはサツキマス、アユ、ウグイ、アマゴ、ウナギをはじめ、今なお豊かな自然の資源があり、それを獲って暮らす川漁師が暮らしています。
長良川の恵みに寄り添いながら生きる、川漁師たちに会いに行きました。

 

よく晴れた5月中旬の朝9時。岐阜市鏡島地区にある鏡島大橋からほど近い右岸川原で、長良川漁協の浅野彰吾さんと待ち合わせました。
この辺りは川漁師がアユを獲る漁場。今年も5月11日にアユ漁が解禁となったばかりです。

この時期のアユ漁が行われるのは夜。川に網をしかけて獲る「夜川網(よかわあみ)」のほか、水面に網を浮かせて舟を漕ぎながら獲る「中猟網(ちゅうろうあみ)」などが主な漁法で、長良川には20ものアユの漁法が伝えられているそう。

秋になると、上流から産卵のために下りてきたアユをねらう「瀬張網(せばりあみ)」が行われます。白い布やビニールを川底に敷き、川幅いっぱいに張ったロープがたてる音でアユをおどし、足を止めるアユを投げ網で獲る漁法です。

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浅野さんによる投げ網の実演。広がると円形になる網の裾に重りが付いていて、上手く投げると広がり、手繰っていくと締まって魚を捕まえる仕組み。「パッと投げて丸く広がるようになるまで、相当練習が必要です」と浅野さん

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網は漁師さんがそれぞれ自作します。上手く獲れるよう工夫と研究を重ねたもので、昔は漁法と同じように、漁具の作り方も人には教えないものでした

アユを獲る漁師たち

二人の漁師さんが現れました。鏡島地区に住む、山中茂さんと服部喜左夫さんです。
山中さんはアユ漁をはじめ、あらゆる川漁の名人。山中さんが昨夜獲ったアユを見せてくれました。
まだはしりなので小ぶりですが、すらりときれいな姿をしています。

「昔はこの時期でも一晩で60キロから70キロ獲れたよ。サツキマスなら橋の下で1シーズンに300本(匹)くらい。アユもサツキマスも今は本当に獲れんようになった。
アユはいい匂いがするからすぐ分かる。泳いどるかどうか、昔は堤防の上からでもよう分かった。私は犬よしかいい鼻しとるでね(笑)」。

山中さんは、初夏は上りアユ、秋は下りアユ、冬は小魚と一年中漁を行っています。82歳になりますが、漁をしない日でも、必ず川へ毎日出かけると言います。
「川がのうなったら死んでまうわ」と笑う山中さん。
川が本当に好きで、川と共に生きている川漁師の素敵な笑顔でした。

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長良川で獲れた天然アユ。痛みが早いので、この時期のアユは獲れたらすぐこうして腹を割る(切る)のだそう

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川漁師の山中茂さん(左)、服部喜左夫さん(右)。叔父と甥であり、師匠と弟子という関係の二人。「おじさんはそりゃあもう、大変な名人。誰も敵わないね。若い自分たちより体力もあって、ついていくのに大変だよ」と服部さん

次の世代へつなぐために

現在、長良川漁協の組合員は約800人。ほとんどが60代以上で、漁師の世界も高齢化が進んでいます。
時代の推移と共に川魚の消費が減ったこと、そして平成6年に出来た長良川河口堰の影響で、昔のようには魚が獲れなくなったことから、現在漁業で生計をたてている組合員は一人か二人。
漁師にとって大切な川舟を作る舟大工も、岐阜市からほぼいなくなりました。

最近になって20代から30代の若い世代で川漁師を目指す人が現れ、後継者を大事に育てていこうという動きが、漁師さんたちの中で生まれています。
実は浅野さんもそのひとり。漁協の職員として働きながら、山中さんたちに川漁を教えてもらっている最中です。

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船大工に特注して作った山中さんの川舟。全長10〜11メートル。もう作れる船大工がいないため、グラスファイバーを塗って補修し、大切に使っています。「昔は5年で新しいのに買い替えたものだけどね」

長良川漁協では山中さんたち漁師を中心に、毎年10月頃にアユの種付けを行っています。そのほかアユ、ウナギ、ナマズ、銀毛アマゴ、ヘラブナ、モクズガニなどの放流も実施。
秋になり、水温20度前後の頃、産卵に適した瀬を探しに上流からアユが下ってきます。鏡島大橋付近はアユにとって産卵に適した場所なので、ここでアユを獲り、人工授精を行います。
受精卵はシュロの枝にくっつけて河口堰近くの人工河川に持っていきます。そこで孵化したアユの幼生は伊勢湾に下って冬を過ごし、稚アユとなって次の春、長良川へ戻ってきます。

ここ鏡島地区で50年近く川漁を続けている、服部修さんにもお話を伺いました。

「漁師はほんとに好きな人やないとやれん世界。昔のようには獲れんけど、まずは良かった頃、昔の半分に戻さんと。種付けをやらんとアユはいなくなってしまう。マスは5月のひと月しか漁ができんけど、アユは5月から11月の半年、漁ができる。アユならまだ可能性はある。
漁師やりたいって言ってくれる若い人たちが、飯を食っていける状態にしてかないかん。あと10年は元気で、若い人に教えていきたいね」。

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川原で出会った三人の川漁師さん。左から河合甚三郎さん、上田一二さん、服部修さん。河合さんと上田さんは普段、鏡島地区より上流の地域で漁を行っています。上田さんも後進の育成に取り組む漁師のひとり

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静かに流れる長良川と川漁師。残していきたい岐阜の風景です

2014年5月19日取材時の情報になります
ライター:梅田美穂

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施設名 長良川漁業協同組合
住所 岐阜市東島1-5-1
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