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マイクロ水力発電で石徹白(いとしろ)をPR
2011.12.26 更新

石徹白は、岐阜と福井の県境に位置している白鳥町にある集落で、
野山に囲まれた自然豊かな地です。
石徹白の自然の中で、それほど大きな規模ではありませんが、
畑でとうもろこしやほうれん草やほおずきなどの農作物を栽培しています。
実は、農作物以外にもこの地で地産地消が行われているものがありました。
今注目されている少量の水を使ったマイクロ水力発電です。
では、いったいなぜこの地でマイクロ水力発電が行われるようになったのでしょうか?
そこには、都会から離れた地域が抱える深刻な問題と関係がありました。
今回の取材は、「NPO法人やすらぎの里いとしろ」の理事長である
久保田政則さんにご協力いただきました。

久保田さん。発電機の話はもちろんのこと、
石徹白のことやご自身のことまでをざっくばらんに語って下さいました。

自分達でメンテナンスできるのがメリット!!

らせん式水力発電機。全長3mほど。車も人も通る道の脇にありました。
発電機の存在を知らなければ、気づかないほど小さな装置です。

石徹白地区は山地であり、特に写真の場所は、ゆるやかな坂道となっています。
その脇を流れる水を利用して発電を行っています。
発電の仕組みは、金網の中にらせん型の羽が取り付けられ、
羽が回転することにより発電しています。
この発電装置の作成には、NPO法人地域再生機構(以降、地域再生機構)、
NPO法人やすらぎの里いとしろ(以降、やすらぎの里いとしろ)、
篠田製作所、石徹白土建の4団体が携わっています。
最初は、車の発電機を使って発電する仕組みを作り始め、
試行錯誤を繰り返しながら、完成させました。
水の流量により、発電量が左右されますが、だいたい安定して電力を供給できるようになっています。
50cm程度の高低差があれば発電が可能であるそうです。

発電機部分のカバーを開けてもらいました。緑色の部分が発電機です。

これが久保田さんお手製の発電した電力を制御する装置。発電機と一緒で非常にシンプルです!!

写真の装置では、発電機で発電した電気の電圧が一定になるように制御しています。
加えて、発電によって生じた余剰電力を開放させることも行っています。
制御装置は、インターネット等で購入した部品を組み合わせて作られています。
これは、もし、トラブルが起きた時、通常ならメーカを呼んで修理してもらい、
その間はシステムを停止させなければならないところですが、
身近な部品を使うことによって自分達でもメンテナンスができるようにするためです。
らせん式水力発電機で一般家庭1軒分の消費電力をまかなうことができます。

その後で製作された水車型の発電機では、
隣接する農産物加工所で利用できるように、様々な電圧の電気を作り出しています。

水車型水力発電装置全体。上部に作られた流路から水が落ちて、水車が回転することにより発電します。
水車のそばでも会話ができるほど、装置の音は大きくありません。

これも久保田さんお手製の発電された電力の制御装置。ここに隣接する農産物加工所で利用されています。

石徹白のいいところも悪いところも全てを知って欲しい

石徹白について語る久保田さん。石徹白への思いが伝わってきます。

久保田さんが水力発電機の製作を行おうと思ったきっかけは、
エネルギー問題をどうこうしたいと思ったからではないと言い切ります。
もっと別の思いからでした。石徹白のために役に立ちたい思いです。
久保田さんは、一度、石徹白を離れて暮らしていたのですが、
再び石徹白に戻って暮らし始めたときに、石徹白に溶けこめずにいました。
そこで、石徹白のために役立つことを行うことで溶け込むことができるのではないかと考え、
やすらぎの里いとしろに参加しました。
その後、地域再生機構から今回のマイクロ水力発電の話があり、
石徹白のPRになればと考え、引き受けたのがきっかけです。
本業が電気関係の仕事であったのですが、本業の傍らでらせん式水力発電の製作を行い、
試行錯誤の末なんとか形にすることに成功しました。
今では、視察に訪れる人も少なくないようで、PRは成功しているようです。

そんな石徹白ですが、他の多くの地域と同様、高齢化が進んでおり、
今まで受け継いできた伝統や文化が途切れてしまうような深刻な危機に直面しています。
そのため、今回の水力発電や
くくりひめカフェ(若手女性グループによる郷土料理を提供しているカフェ)を開くなどして、
石徹白をPRして外部からの集客を狙い、
最終的には石徹白に住んでもらえればと考えながら、NPO活動に取り組んでいますが、
一方で、石徹白の地で安定した生活をするための雇用の口がないといった
厳しい現実問題が立ちふさがっています。
厳しい問題ではありますが、何もせずに、
石徹白の伝統や文化が消えていくのをただ見ているわけにはいかないので、
今からでもできることを行おうと地元の人たちと一緒に活動されています。

そもそも白山のふもとに位置する石徹白は、昔から白山信仰の地として、栄えてきました。
白山中居神社がその中心で、1200年もの歴史があります。

白山中居神社。手前の大きな岩は、磐境(いわさか)といい、縄文時代から神様が祀られていた場所です。

こうした歴史あるものを
自分達の代で途切れさせるわけにはいかないと今後も活動されていくことでしょう。

編集員のココがオススメ!

久保田さんは、取材の最後に、何事もモチベーションを持ち続けることが大切と話してくれました。何事もきっかけは、自分の身近な問題をなんとかしたいと思うところから始まると思います。発明も自分が普段不便と感じていることを改善したいと考えて生まれるものだと思います。地球のためになんとかしたいと思う気持ちよりも、自分の住んでいる地域のためになんとかしたいと思う気持ちの方が身近で、切実で、思いが強く、したがってそれが活動の大きな原動力になっていると感じました。そんな地元住民の思いのこめられた水力発電機を見学しに行かれてはいかがでしょうか?石徹白の地が、あなたを温かく迎えてくれることと思います。

(柴田秀信)

2011年11月10日現在の情報になります。

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