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大垣の自噴水で育つミネラルたっぷりの「名水わさび」
2011.06.02 更新

「名水わさび」直売所の壁に取り付けられた看板。ここに描かれたワサビが色、形ともに理想的なのだそう。

自噴水とは地下からボコボコと噴水のように湧き出す水をいう。
大垣市は昔から地下水が豊富なことで知られ、「水の都」と呼ばれてきた。
今も市内のあちこちに自噴水が見られる。
この自噴水を利用して、市内でワサビづくりに成功したのが坂野誠さん。
「名水わさび」は、今や水都・大垣を代表するブランド農産物の一つだ。

ワサビ栽培の常識を覆し 平地での収穫に成功

ワサビといえば、冷涼な気候の下、
山深い水清らかな渓流沿いで栽培するというイメージをお持ちの方が多いのではないだろうか。
ところが坂野さんは試行錯誤の末、平地で、しかも大垣の市街地での栽培に成功。
ワサビ栽培の常識を覆した。
岐阜経済大学正門西側にある「北方町5」の信号を北へ約500mほど進むと、
右手に「名水わさび」の旗が見えてくる。
しかし、辺りには畑が広がるばかりで、ワサビ田などどこにもない。
いぶかしく思いながら坂野さんを訪ねると、
ガラス戸越しに目に飛び込んできたのは鮮やかな緑色をしたワサビの葉!
さらさらした砂の上を清らかな水が流れ、
葉の間からは大根の花を少しコンパクトにした白い可憐な花が顔をのぞかせている。
思わず「おおっ!」と声をあげてしまった。
坂野さんのワサビ田は様々な外敵の侵入や直射日光による水温の上昇を防ぐために、
周囲には囲いがしてあり、天井には黒い遮光ネットが掛けられている。
「うちは農薬も肥料もいっさい使いません。大垣は暖かいので、品種によって差はありますが、
静岡県や長野県の安曇野などと比べて育ちが半年~1年ほど遅い。
ゆっくりと時間をかけて、品質の良いワサビができます」と坂野さん。
土に埋もれているワサビをそっと掘り起こせば、葉と同じ鮮やかな緑色の根っこが姿を現す。
これぞ、本ワサビ!
表面のつぶつぶのキメが細かく全体に引き締まったものが良いという。
水温は一年を通して13℃前後に保たれ、水は鯉などの魚が泳ぐ池に流れ落ちるしくみに。
無農薬栽培のため虫が発生することもあるが、それらは水で洗い流され、魚たちの餌になる。

(左)緑も鮮やかな坂野さんのワサビ田。夏は涼しく、冬は暖かい、
ワサビにとって最適な生育環境に保たれている。奥にいるのはワサビの様子を見守る坂野夫妻。
(右)ワサビはアブラナ科のため、花は大根の花によく似ている。
「名水わさび」では期間限定でワサビの花の販売もしている。

(左)少し顔を出したワサビの根。葉と同じ鮮やかな緑色だ。
(右)ワサビ田には温度計がついており、常に水温を管理。この日は曇りであったため、水温はやや低い。

採れたての「名水わさび」。乾いた新聞紙に包んでポリ袋に入れ、
密封して冷蔵庫の野菜室に入れれば3週間程度はもつという。

きれいに洗われた「名水わさび」。
する時は鮫皮おろしで頭の方からゆっくりと円を描くように、力を入れないでするのがコツ。

第二ワサビ田を整備して 観光地化をめざす

「大垣いちおし製品」に認定されている「名水わさび」。記者が取材中にもテレビからの取材依頼が・・

坂野さんがワサビ栽培を始めたのは7年前。
「大手電機メーカーを退職後、故郷で起業。電器店を営んでいましたが、
たまたま井戸を掘ったらあまりにも地下水が豊富に出るものですから、
イワナかアマゴを飼おうと思ったんです。
そこで書店に行って飼育の参考になる本を探していたら、同じ棚にイワナとワサビの本があって、
どういうわけかワサビの本を買っちゃったんですね。
読んでみると、『手間要らず・高収入』と書いてある(笑)。
栽培に適した水温は13℃ということなので、測ってみるとこれが13℃。よし、じゃあやってみようと」
最初、5坪ほどの土地で実験的に栽培したところ、20%の収穫があった。
量こそ少なかったが、一部では大きくて質の良いものもできていたため、さらに面積を増やして栽培。
すると収穫高は50%に。
大いに手ごたえを感じて、家の裏に200坪ほどの土地を借りてつくったところ、大成功。
その後、曽根城公園のそばに第二ワサビ田を造成。
遊歩道を整備して訪れる人達に見てもらえるよう、観光地化をめざしている。
今年に入って「飛騨・美濃じまんの原石」に認定され、
さらに「フード・アクション・ニッポン アワード2010」研究開発・新技術部門で
「温暖な平地の田畑でワサビ栽培事業の開発と観光」が認められ入賞。
ちなみに、この時大賞をとったのは「ゴパン」であった。
順風満帆に見える「名水わさび」だが、事ここに至るまでには坂野さんの人知れぬ苦労があった。
「安曇野はじめ天城、御殿場など、
有名なワサビの栽培地には何度も見学に行きましたが、現地の人は何も教えてくれません。
自分で何度も実験を重ねて研究し、知識や課題を持って見に行かないとダメなんです。
すると、同じ所に何度か行くうち、見るべきところがわかってくる。
ぼくは元々技術職でメーカーにいる時は研究三昧の毎日でしたから、
ワサビ栽培でもそうした経験が役に立ちました。
最初の頃はインターネットを駆使して情報収集していましたから、パソコンを見っぱなし。
腰が痛くなりました」

新鮮な採れ立てワサビは 味、香りともに料理の名脇役

「名水わさび」の加工品はすべて手づくり。味と旨みが凝縮された品々は酒の肴にもぴったり。
海老フライなどにつけて食べられるタルタルソース風のワサビ漬け「美濃肌美人」は、
お酒の苦手な人でも食べられる逸品だ。詳細は「名水わさび」HPで。

現在坂野さんがつくる品種は、きめが細かく硬い根茎ができ、
最高級のワサビとされる「真妻(まづま)」、早生で鮮やかな緑色した「正緑(まさみどり)」、
根茎の緑色が濃く、沢を選ぶ「天城にしき」の3種類。
「わさび味噌」や「わさび漬」「しょうゆ漬」などの加工品はすべて手づくり。
「名水わさび」直販のほか、市内駅前通りにある「のむさん農園」や
「JAにしみのファーマーズマーケット」などでも購入できる。
市内の寿司屋や焼肉店、料亭などにも卸しており、
NHKで取り上げられてからは全国から引き合いがあるという。
一本から販売しているので、新鮮な採れ立てワサビを買いに来る大垣市民も多い。
「先日テレビ放映の際に紹介した『ワサビ鍋』が大変好評でした
。寄せ鍋にワサビと大根を入れるのですが、熱によって辛みが飛び、
甘みと旨みだけが残るので、とてもおいしいです。体も芯から温まります」と坂野さん。
今の目標は、「全国わさび品評会」で賞をとることだそう。
殺菌作用や抗ガン作用、血栓予防や下痢止めにも効果があるとされるワサビ。
様々な料理の名脇役として、ぜひ本物の「名水わさび」を使ってみては?

 

編集員のココがオススメ!

大垣の街中でワサビ田を見ることができるという情報に驚き、半信半疑で訪れた坂野さんの農園。立派なワサビが水の流れる広い田んぼの中で栽培されているのを見て、感激しました。3年ほど前から地元で「大垣わさび組合」を立ち上げ、現在は5人が参加。うち3人がワサビ栽培を行っています。もっと仲間を増やして大垣の活性化に役立てたいと話す坂野さん。HPではワサビを使った料理やワサビのすりおろし方なども紹介されています。採れたての「名水ワサビ」は、味も風味も全然違いますよ!

(松島頼子)

店舗情報

店舗名 名水わさび
住所 岐阜県大垣市曽根町1-599-22
TEL/FAX TEL:090-5116-2903
FAX:0584-84-2166
営業時間 10:00~17:00
定休日 不定休 ※来園時、要連絡
E-mail info@meisui-wasabi.com
URL 名水わさび

2011年4月28日現在の情報になります。

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