
それぞれの土地に適応しながら育ってきた、日本古来の茶樹を「在来種」といいます。現在は「やぶきた」などの品種茶が大半を占め、在来種茶葉の生産量は全体の3%ほどです。
この貴重な在来茶を厳選し、煎茶やほうじ茶などを販売しているのが、三重県伊勢市にある「ばん茶茶屋」です。
在来茶がどのようにつくられ、どんな味わいがあるのか。お店のスタッフ、吉田成子さんと森すみ子さんに聞きました。
深い根で土のミネラル分などを吸収
在来種の茶樹は、現代の品種改良された茶樹が挿し木で増やされるのに対して、種子から育てられたものです。成長して収穫できるまで長い歳月を必要とする上、収穫量も少ないので作り手は多くありません。今ではとても貴重なものになりました。
種子から育つ茶樹は、時間をかけて太い根を地中深く伸ばし、土のミネラルなど栄養をたっぷりと吸収します。そのため、茶葉には天然の旨みが凝縮されています。
「体になじみやすいお茶なんですよ」とスタッフの吉田さんと森さんが試飲を薦めてくれました。
淹れていただいたお茶を口にすると、雑味がなく、余韻の残る豊かな味わいです。
ずらりと並ぶ在来種のお茶。土の栄養をたっぷり吸い上げた「生命力の強いお茶」だそうですやさしい甘みから濃い味わいまで
店頭では試飲ができ、気になったお茶の味や香りを体感できます。
お薦めは三重県美杉町の茶葉を使った「伊勢の郷茶」シリーズです。「上煎茶」は2枚の若葉と芯芽だけを摘んで作ったもので、繊細なやさしい味。「煎茶」はさっぱりとしています。また、やさしい味わいの「伊勢ほうじ茶」も好評といいます。
「『お茶っておいしいね』『ほっとする』という声が喜び。普段はあまり緑茶を飲まないという方もぜひ好みの味を見つけてほしいですね」と吉田さん。
急須で淹れたお茶を試飲できます
左から「上煎茶」「かりがね」「煎茶」。商品はすべて農薬・化学肥料を不使用のお茶です大切にされてきたお茶をこれからも
「ばん茶茶屋」があるのは、伊勢神宮・内宮門前町の真ん中にある「おかげ横丁」。江戸から明治期にかけての伊勢路を再現した町並みに、昔からある「おいしいもの」「伝えられてきたもの」が集められています。
そのひとつが、里山の土の個性を映し出すこの在来茶。茶葉がしっかりしているので、三煎目、四煎目まで楽しむこともできます。
おいしいお茶とともに、ゆったりと会話をしたりくつろぐ時間も味わいたいものですね。
店内の喫茶コーナーで「ちょっといっぷく」も2014年4月4日取材時の情報になります
ライター:南由美子
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