岐阜県郡上市明宝二間手地域に、栃尾とよばれる集落があります。清流吉田川の流れる自然豊かな山里で、「未来に続くふるさとを作ろう」と活動するのが「ふるさと栃尾里山倶楽部(以下、里山倶楽部)」。その活動の様子を紹介します。
里山倶楽部の結成は2009年。山間の小さな集落、二間手下組に住む16世帯(発足当時)の住民が栃尾の空き家に集まり、活動を始めました。
「里の暮らしは自給自足を基本に、人と人のつながり、人と自然のつながりのなかで成り立っていましたが、現代はそういったつながる場が少なくなっています。栃尾も過疎化が進み、人が集まる機会がずいぶん減りました。昔のように人が集まって、お互いに協力しあえるふるさとを、次の世代につなげていきたいと思ったんです」と話すのは、代表の置田憲治さん。
同じ想いの住民が集まり、まずはみんなで集える場所を作ろうと、長く空き家だった築100余年の古民家を自分たちの手で再生。先代の屋号にちなみ「源右衛門(げんねもん)」と名付け、活動の拠点としています。
2010年からは、「栃尾里人塾(以下、里人塾)」をスタート。地域外の人も受け入れ、参加者全員が里人として、里山づくりに取り組んでいます。
里山とは、人がゆるやかに関わることでできた自然のこと。日本の伝統的な農村の暮らしを支えてきました。里人塾では地域の住民を中心に、里山で培われてきた知恵と技術を、作業などを通じてみんなで体験します。
開催は毎年5月から10月の間、毎月1回のペースで行われ、一年間の内容は話し合って決定します。
これまでの活動内容は、「森・農・自然エネルギー」のテーマのもと、広葉樹の森づくりや耕作放棄地の活用、太陽光発電や小水力発電の研究、かまどづくりなど。
参加者はのべ600名以上で、隣県の愛知県からが多く、遠くは神奈川県や京都府から通う人もいたそう。田舎暮らしに興味がある、田舎に移住したい、森や自然のことを知りたい、地域づくりを研究したいなど、参加者の目的はそれぞれです。
里人塾の合言葉は、「みんなで考え、やってみる。何より楽しく」。
「田舎の人も都会の人も、年齢や職業が違っても、同じ里人同士として活動します。田んぼや畑で作業をしたり、森で木を切ったり、かまどを作ったりと、1日作業した後に、あとふきという懇親会をするのですが、これも楽しいですよ。昼間一緒に作業をして、夜は膝をつきあわせてお酒を飲んで、いろんなことをみんなで話す。知らない人同士でもすぐに仲良くなれますね」と置田さん。
取材日はちょうど里人塾の開催日。この日は10数名が参加し、水舟の屋根づくりや、畑で草取りと大根の種まきが行われました。
里人塾が始まって7年目。これまでの参加者の中から、6組が郡上市内へ移住。皆、地域の人たちとの交流から、仕事や住まいの情報を得て実現したといいます。
「里山を未来につなげたいと、自分たちのやりたいことを続けてきただけですが、ここや郡上を気に入ってくれたということだから嬉しいですよね。地元も里づくりに通う人と関わって、どんどんつながりができて元気になったし、地域の自信にもなりました」と置田さん。
里人塾の広報を担当する山中佐代美さんにもお話を伺いました。山中さんは2010年、地域がんばり隊に採用されたことをきっかけに、愛知県から郡上市明宝地区に移住。地域おこし協力隊を経て、現在は病院勤務の傍ら、夫とともに吉田川の上流でワサビ栽培に取り組み、畑で栽培した野菜で保存食を作るなど、里山の食と暮らしをテーマに活動しています。
「今は自分の価値観に見合う生活、その人がその人らしく生きられる場所を選べる時代です。移住の相談を受けることもありますが、私はありのままを見てもらうようにしています。いいところ、悪いところの両方を見て、それでも移住したいと思えるかどうか。明宝は独特な人が多いですね(笑)。それも含めて魅力ある人が多いところです」と山中さん。
里山の暮らしを里人として体験し、未来へ続く里山を作る、里人塾の取り組み。栃尾の豊かな自然と里山の暮らしを通じて、自分なりの「暮らし」を考えたり、生き方のヒントを見つけたりできそうです。ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか。
※2016年度の里人塾への参加申し込みは、栃尾里人塾詳細(ふるさと郡上会HP)まで。
2016年8月27日取材時の情報です。
ライター:梅田美穂
施設名 | ふるさと郡上会事務局 |
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TEL | 0576-66-2750 |
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