「ナチュラルファームCocoro」の多田ひろきさん・しほさん夫妻に初めて会ったのは、とあるフリーマーケット。
いわゆる大規模経営ではなく、収穫量は少ないけれど、消費者に安心・安全な野菜を届けたいと農ある暮らしを実践している二人に引かれるものを感じ、今回お話を聞かせていただくことができました。
3月だというのに、取材当日はみぞれまじりの寒い朝。それでも揖斐川町谷汲にある「谷汲昆虫館」には、多田ひろきさん・しほさん夫妻の姿がありました。
毎月18日には「谷汲山華厳寺」の命日に合わせ、「揖斐特別支援学校」が主催する農産物などの直売市が開かれており、多田さんたちも出店者として参加しています。
この日二人が持ってきたのは「風の谷」のお米や玄米、甘夏、赤い菜の花として知られる中国野菜のコウタイサイ(紅菜苔)など。どれも無肥料・無農薬で栽培した農産物ばかり。悪天候のため、売れ行き好調とは行きませんでしたが、丹精込めて育てられた野菜はとてもみずみずしくて、健康的でした。
三重県出身のひろきさんが、谷汲で農業を始めたのは2012年。もともとはNPOの職員として、シュタイナー教育をベースとしたフリースクールの運営に携わっていましたが、勤務先が倒産。仕事を探そうと、お隣・岐阜県の本巣郡北方町に住んでいたしほさんを頼ってやってきたのです。
「ぼくのいたNPOでは、フリースクールのほかにオーガニックカフェや老人介護施設の経営をしていました。農業をやりたいと思ったのは、フリースクール時代、子どもたちと畑で農作業をした経験があり、とても楽しかったから。その時、農業っていいなと思ったんです」とひろきさん。
その後、県の農業経営責任者育成事業の受講生に選ばれ、有機農業について勉強しました。
ところが、いざ就農となると畑が見つからず、県の担当者に相談しても「だれか畑を貸してもらえそうな知人はいませんか?」と繰り返すばかり。そこで、つてを求めて、「岐阜県農業フェスティバル」の販売実習に参加。すると、お客さんから「谷汲で畑をやってくれる人を探しとる人がおった」という耳寄り情報を得ることができたのです。
それが現在も親交の深い、揖斐町谷汲に住む鹿野さんでした。鹿野さんには、「農業従事者は高齢化しとるし、信用のおける人で畑をやってくれる人がおれば、ただでもええ」と言われ、畑を借りることができました。
妻のしほさんは郡上市出身。町中で育ちましたが、幼いころから里山は生活の一部だったといいます。昨年からはしほさんも仕事を辞め、二人で農業に取り組むようになりました。
「あいち有機農業推進ネットワーク」の会員となって、週に1回、有機農業について学ぶうち、高山で固定種のトマトを栽培している若い夫婦に出会います。
「それまではいわゆるF1品種を使っていました。農業のプロとしてやっていく以上、収量の確保は大切。その点、F1は収量が多く、固定種は収量にバラつきがあるというイメージだったので…。でも、何代かにわたって自然淘汰され、地域の風土に適合してきた固定種の方が味にも深みがあっておいしい。そこで畑の土づくりを見直しながら、固定種の野菜を育てる方向へとシフトしていったのです」。
今では化学肥料や農薬は一切使わず、畑の草も根っこからは抜きません。そうすることで、土が自ら保っている自然のバランスを崩さないようにしているのです。また、1作終わるとトラクターで整地するのが一般的ですが、今ではそれもやめ、家庭菜園用の小さな耕耘機を使い、できるだけ土に無理をさせないようにしています。
「自然農に近い栽培方法ですが、収量は以前とほとんど変わりません。ただ、成長のスピードがゆっくりというだけ。ぼくらの暮しも農業で生計を立てるようになって変わりました。築60年の家に3匹の猫たちと暮し、テレビもありませんが、不自由はないし、野菜やお米を育てているので食費もそれほどかかりません」。
今後は農産物の生産・販売だけでなく、農業体験や冬季の藁仕事のワークショップなどを開きながら、昔ながらの農業技術を伝えることもしていきたいという多田夫妻。
莫大な利益や物質的な豊かさを追求するのではなく、農ある暮らしの中で見つけたシンプルで自然のサイクルに合わせたライフスタイルは、これからの私たちに最も必要なものかもしれません。
2014年3月18日取材時の情報になります
ライター:松島頼子
施設名 | ナチュラルファームCocoro |
住所 | - |
TEL | 0585-56-3383 |
営業時間 | 18:00~22:00 ※季節の有機野菜の宅配も行っています。詳細はお尋ねください。 |
定休日 | - |
natural.farm.cocoro@gmail.com |