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【鳥羽市特集】恵みの海が育んだ旨い浦村カキ。焼きたてを楽しめる孝志丸「かきっこ」
2012.02.27 更新

代表の浅尾大輔さんが浦村カキやサザエを焼く「かきっこ」の店頭。香ばしいにおいに誘われます

海水と真水がほどよく溶け合い、プランクトンのえさも豊富な鳥羽市浦村町の海。
恵まれた環境で、栄養たっぷりな「浦村カキ」が育っています。
この「浦村カキ」の養殖筏を望む海岸線沿いに佇むお店が、孝志丸「かきっこ」です。
海から引き揚げたばかりの牡蠣を、焼いたり、フライにしたり、カキめしにしたり。
新鮮な海の幸を存分に楽しめる「かきっこ」へ、牡蠣のシーズン真っ只中にうかがいました。

目の前の海で収穫するから新鮮。栄養も満点!

「かきっこ」の前には、養殖筏が浮かぶ穏やかな風景が広がります

海から揚げた牡蠣のカゴ。入れる数を少なくして、大きく育てます

「かきっこ」で使う「浦村カキ」は、お店の前の海で育てられています。
朝に収穫したものを、代表の浅尾大輔さんやご家族・親族の方々が店先で調理し、
お客さんへ提供します。
足りなくなると、すぐに海へ行き、牡蠣を揚げて持って来るのだとか。
だから新鮮そのもの。栄養もたっぷりです。
「養殖カゴの中に入れる牡蠣の数は、敢えて少なくしています。
たくさん入れると、ひとつあたりが食べられるプランクトンが減りますからね。
全体の牡蠣の数を抑えることで、栄養を行き渡らせ、実の入りをよくしているのです」と浅尾さん。
店先では、浅尾さんオリジナルのトタン板で牡蠣たちが香ばしく焼かれ、
食欲をそそる香りがあたり一面に漂います。
トタン板には穴を開けて、火の通りを圴一にし、ちょうどよい火加減に。
香りとけむりに誘われ、親子連れや友人グループなどが続々とやって来ます。

クリーミーで、大人から子どもまで食べやすい浦村牡蠣

「焼きカキ」は1つ100円。おいしいので、つい食べ過ぎてしまいそうです

「浦村カキ」は、一年で収穫ができる“一年牡蠣”。
クリーミーでありながら、さっぱりとした味わいが魅力です。
二年、三年と養殖するわけではないので、くさみやえぐみもほとんどありません。

一年で出荷できる理由は、浦村の湾に宮川や木曽三川などが注ぎ込み、
山からの栄養を運んでくれるから。
「雨が降るたびに山から栄養が流れつき、牡蠣は大きくなります。
だから、山が元気でないと、牡蠣も成長できません。
最近は残念なことに、海が弱っています。
というのも、秋でも山に落葉が少なく、よい腐葉土ができないためです。
腐葉土が川に流れて海へ注ぎ、魚貝の栄養となるので、
もともとの山をよくしていかないと、海もよくならいのです」。
海が元気でいるためには、樹木の間伐など山の管理も大切と浅尾さんは力を込めます。
同時に、土の管理も重要です。
近年、酸性雨が心配されていますが、土壌をアルカリ性にして植物の根を張らせるために、
牡蠣殻の粉末肥料を田んぼの土壌改良材として利用しています。
養殖された牡蠣の殻は、これまで産業廃棄物として廃棄されていましたが、
鳥羽市開発公社がそれを粉末肥料として「しおさい」という商品名で製造・販売を始めました。
この「しおさい」を使って土壌をよくすることで、
よい米だけでなく水が育まれ、やがてその水は海へ。
そして海でよい牡蠣を育てたのちに、また山へ。
山と海の循環をうまく回していくことが大切です。

作り手にもお客さんにも価値のある“店産店消”を

牡蠣は「かきっこ」の店頭で焼かれ、暖かい店内でゆったりといただけます

浅尾さんは、「海をよくしたいから」田んぼづくりにも力を入れています。
牡蠣の殻を利用した天然有機肥料を使い、しっかりと根の張る米を栽培。
大型台風が襲ったときも稲が倒れなかったほどです。
この米は、「かきっこ」で牡蠣めしに使われています。
さらに、地元の旬の味覚もお店で提供。
たとえば、ワカメをご家族で養殖し、茎やメヒビ(メカブ)を湯がいた一品や味噌汁も揃います。
春先には、親戚が総出で井戸端会議を楽しみながら塩ワカメも加工。
“自称名人”という父親が一本釣りで釣り上げたマダイ、イサキ、ハマチ、
それに岩場で捕ったナマコも自慢の一品です。
地元の海女さんが獲ったサザエやイワガキも手に入ればメニューに加えてますし、
大アサリや彩りきれいなアッパ貝も入手先にはこだわっています。
また、今秋の出荷をめざし、牡蠣殻を使った新しいアサリ養殖にも取り組んでいる最中です。
海産物のほか、大根や白菜などの農作物、米から作った味噌などもあり、
「よい循環をつくることで、もっと商品を増やしていきたい」と熱意を燃やします。

こうした取り組みから、浅尾さんが掲げているのは“店産店消”です。
「自分たちの手で作り、自分たちの手で消費・販売をする。
そんな作り手にとってはやり甲斐があり、
お客さんに喜んでもらえる“店産店消”の形が少しずつできあがっていくのを楽しんでいます」。

編集員のココがオススメ!

「獲りたて」「焼きたて」が食べられるなんて贅沢!取材ですが、おいしい海の幸ときらきら光る海の風景を楽しみ、心身ともにリフレッシュしました。ただ、焼くのはたいへんです。薪の炎と牡蠣から立ち上る湯気で、浅尾さんはとても熱いはず。上質な食材を、懸命に料理してくれる人がいるからこそ、一層おいしかったに違いありません。お店のマネジメントにとどまらず、ブランド化を見据えた地域づくりを熱く語る浅尾さんの姿が印象的でした。

(南 由美子)

店舗情報

店舗名 孝志丸「かきっこ」
住所 〒517-0025
三重県鳥羽市浦村町1-12
定休日 不定休
TEL&FAX TEL0599-32-5916
営業時間 10:30〜16:00
(海の状況により開始時間が変動しますので、あらかじめご了承ください)

2012年1月29日現在の情報になります。


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