岐阜県の揖斐川町に、地元に根差したこだわりの豆腐づくりで知られる
ユニークなお豆腐屋さんがあると知ったのは、先月のこと。
オンリーワンの地域ブランドの確立をめざして、
日々奮闘する社長の弓削智裕さんにお話をうかがった。
揖斐川河畔に広がるのどかな田園地帯に店舗と工場を構える「弓削銘水堂」。
弓削さんに案内していただき、店舗奥にある工場を見学した。
中では徹底した衛生管理と人の手による丁寧な作業の下、
寄せ豆腐やざる豆腐、油揚げ、がんもどき、豆乳ドーナツといった大豆食品を製造。
揚げ立て、出来立ての製品からは、ふくよかな大豆の香りが漂ってくる。
「弓削銘水堂」のこだわりは水と大豆、そしてにがり。
地下65mから汲み上げる伊吹山の伏流水に、大豆を浸漬。
すり潰した後、水を加えて生呉をつくる。
さらにこれを煮沸して、豆乳とおからに分離。豆乳を撹拌しながらにがりを打ち、固めて行く。
この工程が豆腐作りでは一番難しく、熟練の職人技がものをいう。
大豆の8割は岐阜県産。なかでも地元6軒の契約農家が農薬散布を極力抑えて栽培している「フクユタカ」は、
世界で最もタンパク質の含有率が高く、味も濃厚。
「豆乳ドーナツ」や木綿豆腐「ゆげの銘水」、「きぬ・もめんWパック」などに使用されている。
にがりは他の凝固剤と比べて豆腐の旨みが凝縮しやすく、離水率が高いのが特長。
大豆の甘みを残すのに最もふさわしい凝固剤だという。
「弓削銘水堂」の製品は自社店舗のほか揖斐川町内の量販店、
道の駅「星のふる里ふじはし」、各地の生協などで購入できる。
どこにでもある普通のお豆腐屋さんを、全国に知られるこだわりの豆腐店に変えたのは現社長の智裕さんだ。
20年前、勤務していた京都の広告代理店を辞め、故郷の揖斐川町にUターン。
全国各地の豆腐店を回って修業を積む。
ダムに消えた村・徳山に伝わる寄せ豆腐を復活させたいと、
智裕さんは岡山県の豆腐店で学んだにがりの手寄せ法を元に寄せ豆腐をつくり始める。
折しもNHKの連続テレビ小説「ふたりっ子」で寄せ豆腐がブームに。
当時寄せ豆腐をつくっている店は少なく、「弓削銘水堂」の名は一躍全国に知られるところとなった。
しかし、寄せ豆腐人気もいつしか下火に……原点に立ち返り、
店の行く末について塾考する智裕さんの頭に浮かんだのは
「食に携わる者として、地元の農家と共に生きていこう」という思いだった。
「地域の土壌に合った農産物をつくり、それを商品化して地域ブランドとして売り出す。
そのためには、コンスタントに商品が売れるしくみをつくる必要があります」と智裕さん。
「弓削銘水堂」は、昨年から道の駅「星のふる里 ふじはし」の特産物販売施設の中に「豆腐三昧」を出店。
藤橋村の河童伝説に由来する河童豆腐などを製造販売し、好評を得ている。
また地元の経営者仲間と共に、地域ブランド確立のために働く会社「IBIZA」を立ち上げ、
昨年度は「第1回 揖斐-1グルメグランプリ」を開催。
「弓削銘水堂」が出品した「どてどうふ」は、見事グランプリに輝いた。
今後も「財団法人いびがわ」など地域の団体や企業との連携を深めながら、
こんにゃくや豆乳デザート、アイスクリームなど、揖斐川町の特産品づくりに力を注ぐ。
地元の農家の方々と共に生きていきたいという弓削社長の心意気に感激! 食の安全、安心が叫ばれるようになって久しいが、美味しくなければ意味がありません。「弓削銘水堂」の製品はそのすべてを兼ね備えていると思います。アメリカ産大豆が使われていた地元の学校給食の豆腐を、安全性の面から国産大豆使用に変えるきっかけをつくったのも弓削社長。そのユニークなキャラクターも魅力の一つ。
(松島頼子)
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店舗名 | 有限会社 弓削銘水堂 |
住所 | 岐阜県揖斐郡揖斐川町下岡島61 |
TEL/FAX | 0585-22-0528 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
定休日 | 日曜 |
yuge-t@sannet.ne.jp | |
URL | (有)弓削銘水堂 |
2011年4月11日現在の情報になります。