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店という場から、地域の魅力を発信したい。
「和旬 秀榮」
2016.11.30 更新

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三重県の最南エリアに位置する、三重県南伊勢町。海と山に囲まれ、温暖で自然豊かな町です。2016年7月、「店」という場から地域の魅力を発信したいと、和食店「和旬 秀榮(以下、秀榮)」がオープン。店作りに携わった人たちにお話を伺いました。

故郷・南伊勢町で和食店をオープン

秀榮のオーナーで料理を担当するのが吉岡良記さん。南伊勢町出身で、実家は町内で旅館業を営んでいます。サラリーマンを経て料理の道へ進み、これまで名古屋や鳥羽、ベトナムなどで和食の料理人として働いてきました。
「長男なのでこの町に帰ってきたんです。将来的に、生まれ育った故郷で自分の店を持ちたいと考えるようになりました」。

その思いを同級生であり、町内で建設会社を営む森井一晴さんに相談。森井さんも高校を卒業してから大阪で働いた後、故郷に帰ってきました。
「28歳で戻ってきて、実家の建設会社を継ぎました。都会に出てみて、この町のよさがわかるようになりましたね。だから、吉岡の『故郷でお店をやりたい』という思いにすごく共感しましたし、一緒に夢を語り合う仲になりました」。

店舗デザインは、森井さんの紹介で、建築ディレクターの伊部タカヒロさんに依頼。伊部さんは東京を拠点に、これまで全国各地で数多くの飲食店の設計デザインを手がけてきた人です。
店作りにあたって、吉岡さん、森井さん、伊部さんの3人で店のコンセプトを固めることからスタート。その共有に一番時間がかかったといいます。デザインの決定、設計施工に約3年の年月をかけて、今年7月27日に秀榮はオープンしました。

伊部さんに、デザインのポイントとテーマを伺いました。
「僕はデザイン事務所として作品を残すというより、ソフトとハードが結びついて地元の人が喜んでくれれば、という思いで仕事をしています。今回の秀榮さんについては、オーナーが一人で料理をするので、お店側とお客さんがお互いに気配を感じられる空間であること、目の前が静かな入江という場所なので外の自然とつながれること、都会過ぎない暖かみのある和空間であること。それらがテーマとなっています」。

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秀榮のオーナー、吉岡さん。屋号の由来は、吉岡さんの家に代々伝わる船の名前「秀榮丸」から

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南伊勢町で建設会社を経営する森井さん「プランを一から考えるところから参加できたので、一緒にものづくりをしている実感があって、とてもやりがいがありました」

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店舗デザイナーの伊部さん。飲食店の店舗設計を専門としており、数々の繁盛店を手がけています

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最終決定するまでに作られた、数多くのデザイン案

目指すのは、人が集い、つながる場所

秀榮がオープンして4ヶ月。広々としたシックで落ち着いた空間で、地元産の旬の素材を使った料理をゆっくり楽しめると、早くも評判に。お客さんは口コミ中心で地元の人はもちろん、近くのヨットハーバーの利用者など、遠方からの人も多いといいます。

吉岡さんと森井さんに、現在の気持ちを聞きました。
「この通りのどかなところなので、日頃の忙しさを忘れて、美味しい料理とゆったりした空間で、よい時間を過ごしていただければと思います。南伊勢町は三重県一の漁獲量を誇る町で美味しい魚が獲れますし、温暖な気候から美味しいミカンも作っています。うちをきっかけに町を知ってもらえる、そういう南伊勢町にとって集客の場になればと思っています。イベントもいろいろやっていきたいですね。将来は店の周りに宿泊施設も作れたら」と吉岡さん。

そして森井さんは、「ここはいい意味で田舎なので、人と人の心の距離が近い町。そういうこの町のよさを、次の世代にも受け継いでいきたいと思っています。秀榮が完成して今思うことは、ここで人と人との交流が生まれて、世代を超えてつながっていける場所になるといいなあって…」と話してくれました。

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店外観

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約150平米(50坪)に18席。ゆったりと食事が楽しめます

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取材日の夜は、ちょうどジャズライブイベントの開催日。地元の人たちが大勢集まり、音楽と食事を楽しむ姿が見られました

店の什器を町の工房が制作

店内の家具を制作したのは、同じ南伊勢町内に工房を構える「Tensui Products」の家具職人、小林信彦さん。
小林さんは徳島県出身。2014年春から奥さんの故郷である南伊勢町へ移り住み、オーダー家具の工房を始めました。
「秀榮さんではテーブル、一枚板のカウンター、トイレの内装など、椅子以外の家具や什器をほぼ作らせてもらいました。あんなに長い一枚板を使うことはなかなかないので、作っている時は興奮しましたね」と小林さん。

移住して2年目。この町での暮らしについて聞きました。
「南伊勢町はいいところですよ。町のどこかでよく人が集まって宴会をしていて、気軽に呼んでくれるので、仲良くさせてもらっています。啓発会という町の青年団があり、僕も団員として参加しているのですが、みんなで町を盛り上げようといろんな活動をしています。人のつながりのあるいい町ですね。あと魚が旨い!」。

青年団では夏祭りで途絶えていた灯籠流しを復活させたり、少子化の進むこの町で若い人たちにどうやって残ってもらえるかを話し合うなど、みんなで故郷を元気にしたいという思いで活動しているといいます。小林さんも家具作りの技術を活かして、地域の子どもたちのために屋形舟を制作しました。

「将来、実際に作品をお客さんに見てもらえるショールームを、南伊勢町に作りたいですね。遠くからでも来てもらえる家具工房になって、この町のことも知ってもらえたら」と目標を話す小林さん。
工房の名の由来は「天水」という、出身地・徳島の方言から。「夢中になる、一生懸命になるという意味です。なんかいいなあと思って、屋号にしました。これからもずっとそういう風にやっていきたいと思っています」。

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大きな倉庫のような工房。ここですべての作業を一人で行っています。家具のオーダーは、フェイスブックやインスタグラム経由が多いそう

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小林さんが制作した、秀榮のテーブル。タモ材を使い、重厚感ある仕上がりです

2016年10月21日取材時の情報です。
ライター:梅田美穂

お問い合わせ
施設名 和旬 秀榮
住所 三重県度会郡南伊勢町中津浜浦字阿村415-1
TEL 0569-77-6156
営業時間 17:30〜22:30
定休日 火曜、第3水曜
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