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エコな取り組みから誕生した
みかん産地ならではの商品
2015.01.28 更新

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南は三河湾に面し、山々に囲まれた温暖な気候の蒲郡市は、全国有数のみかん産地です。明治の初めからみかんの栽培が始まり、現在では露地とハウスの両方で栽培され、面積は約330ヘクタール(2014年4月現在)、生産量は全国2位を誇ります。
美味しいみかんを実らせる木の寿命はおよそ50年。伐採された木は廃棄処分や焼却処分にされてきました。
蒲郡市では、廃棄されるみかんの木を再生利用するための取り組みを、間伐材を使った施設や遊具の開発・施工などを手がける株式会社エコム(名古屋市)とともに行っています。
今回は担当者である農林水産課の三浦次七郎さんにお話を伺いました。

1年に廃棄されるみかんの木は約5千本

「みかんの木は50年ほどで樹の勢いが衰えるため、新しい苗に植え替えが必要です。蒲郡市で伐採されるみかんの木は、年間で5千本にも及びます」と三浦さん。農家の方々にとっても、焼却したり、埋めたりする作業は大変だと言います。また、子ども同様に大切に育てた木なので、切るときはお疲れ様と声をかける人もいるとか。
「特産品であり、市民にも愛着のあるみかんの木ですが、全国的に見ても利用されている例を知らなかったですし、処分するしか方法がないと思っていました」。低木で枝も曲がっているみかんの木は、木材として利用するには不向きだとされてきました。
「みかんの木を再生利用することになったのは、以前から面識があったエコムさんに廃木の話をしたところ、一緒に案を考えようと提案いただいたのがきっかけです」。2009年から取り組みが始まりました。

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みかんの木を再利用するプロジェクトの火付け役になった三浦さん

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細かい年輪が特徴のみかんの木。見た目よりずっしりと重い

活用に向けて箸作りからスタート

最初に取り組んだのは、「箸」にする案でした。
実際に箸作りを担ったのは、塗箸の生産量が全国シェア約80%という福井県若狭地方にある株式会社フナイワークスです。「蒲郡みかんというブランドイメージを壊さないよう、その木から作る箸も本物仕様にしたいという思いがあり、本場の若狭で作ることにしました」。
みかんの木は変形しやすく、枝が多いため年輪がずれているので、乾燥の段階で曲がりやすいという欠点があります。数々の箸を手がけてきた職人さんも試行錯誤をしながらの挑戦だったとか。
ようやく1年半後に箸の形をした試作品が完成します。
三浦さんたちは、商品化にあたって、みかんの木で箸が作られた前例がないため、使用に耐えられるかどうか試作品をもとに調べたそうです。「みかんの木は年輪が非常に細かいので密度が高く、硬さとしなりを兼ね備えている上、水の吸収率が低いということから、箸の材料として十分に使えそうだと思いました」と三浦さん。

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試作当初の箸は、木の性質から先が反り返ったりしたそうです。形やデザイン、太さなどを変えて様々な試作品が作られました

その後、本格的に商品化へ向けて開発をすすめ、完成したのが2012年8月のこと。 廃木が箸になるまでには、伐採から玉切り、乾燥までに約10工程、仕上げまでに約20〜35の工程を費やします。
ていねいに作られた箸は、評判も良いとのこと。三浦さんによれば「商品を購入した方からは、折れにくくて丈夫だとか、他素材の箸の3倍は長持ちするなどの声をいただいています」。

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「蒲郡みかんの木の箸」は、デザインパターンとカラーバリエーションも含めると約50種。一膳1500〜2300円(税込)。旅館の女将からなる「こはぜの会」からも置きたいと要望があり、市内の宿をはじめ観光施設やJA蒲郡市グリーンセンターなどで買うことができます

食育の一環で箸を卒園記念に

市では蒲郡ならではの箸を保育園の卒園記念品として、2012年度から毎年400人ほどの園児に贈っています。園児が絵を描き、それを箸の柄に転写した世界でたった1つのオリジナル箸です。みかんの木は万葉の時代から子どもの守り木として崇められてきたこともあり、卒園の記念品にはぴったりです。
「単に記念品というだけでなく、食育の一環でもあるんです。自分だけの箸を使うことで食べることや食べ物への興味も生まれますし、蒲郡を代表するみかんの木を使うことで地元への愛着も深まります」。これからも長く続けていき、親子2代でマイ箸を持つようになってくれたらと三浦さんは話します。

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保護者からも好評で、ぜひ続けてほしいという要望が多いそうです

箸の端材を使って新たな商品を開発

箸には、直径10センチぐらいある木の根元の部分の一部が使われています。それ以外の部分を有効活用できないかと生まれたのが「蒲郡みかんの木の積み木」です。「水がしみ込みにくいという点を生かし、幼児がなめても安心なように塗りを施さず木地そのままなので、安心して使っていただけると思います」と三浦さんは言います。
その次に商品化されたのが、「徳川浪漫香」と名付けられたお香。 箸や積み木を作る過程で出る大量の木の粉を使い、香料や着色料などは加えず、みかんの木が持っている香りや色を生かしています。

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手触りが柔らかく、木目や色にも独特の雰囲気があります。小10ピース1500円(税込)、大10ピース1500円(税込)

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香の日本一の生産地、兵庫県淡路島で蒲郡みかんの木を使って作っています。1袋800円(税込)

箸や積み木に使えない部分を生かし、新たに開発したのがボールペン「極」。加工中も割れが少なく、ボールペンの軸に向いているそうです。箸には不向きな節や木目も、模様としてデザインに取り入れ、木のなめらかな手触りや色を生かすため蜜蝋で仕上げています。
箸をはじめとしたこれらの商品は、市民に利用してもらうだけでなく、土産品として蒲郡の観光PRにも一役かっています。「まだ、廃木の半分近くしか再利用ができていませんので、もっと活用できるように考えていきたい」と三浦さんは語ってくれました。

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濃い茶色の木から作る「虎木(とらもく)」と淡い色合いの「黄金(こがね)」の2種類で、それぞれに丸みを帯びたタイプと細いタイプがあります。価格未定。発売日未定

2015年1月21日取材時の情報になります
ライター:田中マリ子

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施設名 蒲郡市役所農林水産課
住所 愛知県蒲郡市旭町17番1号
TEL TEL0533-66-1125 、FAX0533-66-1188
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