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みずみずしさあふれる
おいしい梨ができるまで
2014.08.27 更新

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暑い季節に涼を与えてくれる果物のひとつが梨。みずみずしくてほのかな甘さの実をいただくと、思わず頬がほころびます。
果物栽培の盛んな豊田市は、梨の栽培面積と出荷量が愛知県下で1、2位を誇る有数の産地。今シーズンの梨の出荷が始まったJAあいち豊田の選果場と、梨農園をたずねました。

7月から12月まで、様々な品種を出荷

「今年の梨は4月の花の時期に天候に恵まれ、授粉がしっかりできて、いい出来です」と話すのは、JAあいち豊田梨部会長の池田武男さん。猿投地区で35年、梨農家としておいしい梨を作り続けています。
「昔、このあたりは柿の栽培が盛んでしたが、伊勢湾台風の時に被害に遭い、ほとんどの農家が桃や梨の栽培に転換しました。土壌は赤土で保水性があり、猿投山の麓は果樹に向いていますね」。そう教えてくれるのは、JAあいち豊田猿投営農センター長の柴田力行さん。
この地域の梨栽培についてお二人からお話を伺いました。

現在、梨部会に所属する生産者は57名。猿投地区と福受地区の37.6haで10品種ほどの梨を栽培しており、出荷は7月下旬から12月中旬にかけて行われています。
猿投地区は猿投山山麓の丘陵地帯で、台風被害が比較的少ないため晩生種が多く、福受地区は以前水田だった土地を利用した平坦な地形で、猿投地区より平均気温が高いことから早生種が多いのが特徴。この2つの地区によるバランスのとれた出荷体系で、市場シェアを伸ばしています。

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人気品種の幸水。収穫時期は8月上旬から中旬です

 
「まず7月末から『愛甘水』と『あけみず』。8月は『幸水』で、9月は『豊水』。9月中旬から『あきづき』が始まって、『新高』と『歓月』が10月いっぱい。最後は11月中旬からの『愛宕』だね」。
と、品種別に収穫時期を教えてくれる池田さん。梨は夏の果物だと思っていましたが、年末までの5ヶ月もの長い期間、いろんな品種を収穫できるんですね。

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取材日の7月21日に選果場に届いたのは、早生品種の愛甘水。梨の上に載せられた数字の札で、生産者が分かるようになっています

 
一番出荷量が多い品種は「幸水」。酸味が少なく甘みがあり、ジューシーなおいしさで万人に愛される人気の梨です。もうひとつの主力商品が「豊水」。果肉がやわらかく、ほどよい甘さと酸味が楽しめます。また最近は「あきづき」の生産量も増えているそう。新高、豊水、幸水のいいところを併せ持った大玉梨で、人気上昇中とのこと。
初夏、盛夏、晩夏、初秋と季節の移り変わりに合わせて、味わいの異なる品種が楽しめるのも梨の魅力です。

日当りと風通しのよい梨園

猿投地区にある池田さんの梨園を見学しました。約2haのほ場で600本程の梨の木を育てており、普段は奥さんと娘さんと一緒に家族三人で運営しています。
ワイヤーを張った棚に梨の木が広々と枝を伸ばし、足下の草もきれいに刈り取られて風通しがよく、とても気持ちのいい場所です。

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よく手入れされた池田さんの梨園。緑の屋根の下に心地よい風が吹き抜けます。植えてから10〜20年くらいの木がよく実るのだそう

この日は幸水の収穫直前。枝にはおいしそうな梨がたくさん実っていました。ピーク時は朝5時半から12時頃まで収穫作業を行い、お昼過ぎには採れたての梨を選果場に運びます。「多い日は100ケース、個数でいえば2200個から2500個くらいを持って行きます」と池田さん。

「おいしい梨を作るコツは、日当りの管理と肥料だね」。通常、梨の栽培は実がある程度の大きさになると病害虫被害や色ムラを避けるために袋がけを行いますが、袋をかけると日光が遮断され、梨本来の味や甘さが損なわれます。池田さんの農園ではほとんどの品種が無袋栽培で、日焼けに弱い新高や愛宕、歓月のみ袋がけをしています。

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ステンレスのワイヤーを張り巡らせて棚を作り、そこに枝を這わせる「棚仕立て」で栽培。棚の高さは、メインで作業する人の身長プラス20センチに設定します。「女房は私より背が低いので、作業しづらいってよく言われるよ」と池田さん

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梨の実を食べに来るムクドリやヒヨドリ、カラスを追い払うために、スピーカーからワシの羽音や鳥の鳴き声を大音量で流します。イノシシによる食害も。「背伸びしてパン食い競走みたいに食べるんだよ」ですって!

低農薬で安心安全な梨づくり

梨づくりが忙しくなるのは、4月の開花の頃から。大きくたくさん実るように、つぼみや若い実を取り除く「摘蕾(てきらい)」や「摘果」作業を行います。梨は異なった品種でないと受精しない性質ですが、池田さんのほ場では1列ごとに梨の品種を変えて植えてあるので、風による自然交配が可能なのだそう。
夏から秋にかけての収穫時期が終わり、冬を迎えて葉が落ちた後、次の芽が吹くまでの間に枝の剪定や誘引を行い、新しいシーズンに備えます。

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棚の上に長く伸びた枝は、冬の間に剪定。一部は残し、棚に誘引して次に実をつける枝に仕立てます

 
農薬の使用については、「消費者のためにもできる限り減らすようにしています。今年はカメムシが大発生して大変でした」と池田さん。
さらに、梨の大敵である害虫のハマキムシやナシヒメシンクイの対策として、フェロモントラップや交信撹乱剤を利用。これは、ほ場に昆虫の性フェロモンを設置することで昆虫を捕獲したり、昆虫同士の交信を撹乱させて交尾できなくするもの。殺虫剤の使用を減らせる上、作業する農家や環境に安全で、作物への残留の心配もなく、安心安全な農作物を提供できる利点があります。

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赤いヒモ状のものが交信撹乱剤。ほ場内のあちこちにこれをつけることでオスがメスに出会う機会を少なくし、害虫の発生を減らします

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スプリンクラーで水を常に補給。もともと山だった場所を35年ほど前に整地し果樹園にしました。半月に一度下草を刈り、きれいなほ場をキープしています

最新設備でスムーズに選果

部会員たちが収穫した梨は、その日のうちに豊田市四郷町にあるJAの選果場へ運ばれます。コンテナごと選果ラインに載せ、まず人の目で一個ずつチェック。傷のあるものを省いたあと、光センサーで糖度や熟度、果色などを識別し、等階級毎に自動的に仕分けします。再び手作業で丁寧に箱詰めを行い、機械で蓋をしてパレット積みへと進みます。
そうして箱詰めされた梨たちは、「とよたの梨」として豊田市や名古屋市の市場を中心に、岡崎、浜松、三重へも出荷されていきます。

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ベルトコンベアでどんどん梨が運ばれてきます。ひとつずつ目でチェックし、よいものだけを選果ラインに戻します

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設備を3年ほど前にリニューアルし、パレット積みもコンピューター制御で自動化。等階級毎に仕分けして積み上げることができるのだそう

 
選果場には果物の直売所が併設されており、梨をはじめ季節の果物が並びます。贈答用の上等品のほか、規格外品も安く買えるとあって、連日たくさんの人が訪れます。
みずみずしくておいしい梨を味わうには、新鮮なものが手に入る直売場が一番。遠くても足を運ぶ価値あり!ですよ。

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この日の売り場には、梨のほかブドウや桃も並んでいました

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選果場併設の直売場。果物の季節のみ営業。営業日時、販売商品については問い合わせを

【JAあいち豊田HP ※直売場の営業について】

2014年7月21日、8月2日取材時の情報です
ライター : 梅田美穂

お問い合わせ
施設名 JAあいち豊田 猿投選果場・直売場
住所 愛知県豊田市四郷町森前187番地
TEL 0565-46-2225(直売所)
営業時間 10:00〜16:00
定休日 土曜ほか不定休 ※お問い合わせください 
E-mail
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