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自然農法で育てられた
甘さと香りが魅力の「デコタン」
2014.07.30 更新

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熊野灘に面した南伊勢町は、海の幸だけでなく山の幸にも恵まれたところ。
温暖な気候のなか明治時代からみかん作りが行われており、柑橘類は町の特産品のひとつです。
おいしいと評判の五ヶ所みかんをはじめ、さまざまな柑橘類を南伊勢町五ヶ所浦で作り続けている農事組合法人「土実樹(つみき)」でお話を伺いました。

より自然に近い農法をめざして

南伊勢町のメインストリート、国道260号沿いにある土実樹の直売店で、温かい笑顔と共に迎えてくれたのは代表の溝口安幸さん。ここ五ヶ所で祖父の代から続くみかん農園の三代目として、みかん作りに取り組んでいます。

「五ヶ所みかん」として県外にも出荷され親しまれている南伊勢町のみかん。
そのおいしさの理由を、「やはり気候と風土ですね。南伊勢町は一年を通して日照時間が長く、熊野灘に流れる黒潮の影響から冬でも温暖です。排水と通気性のよい土壌で海に面した南向きの段々畑という、柑橘の栽培環境に恵まれています」と溝口さん。

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たわわに実った五ヶ所みかんの畑。土実樹では樹上で完全に熟してから収穫。甘くてコクのあるみかんとして評判です。旬は10月から2月頃。マルチ栽培で糖度13度以上のものは「南伊勢ブランド」品に認定されています (写真提供 : 土実樹)

 
溝口さんの農園では、自然環境に配慮した栽培に取り組んでいます。

「南伊勢町は年間降雨量が2300mmと比較的雨が多く、台風もたびたび襲来する地域です。そのため激しい雨が降るとほ場の表面の土が流出し、伊勢志摩国立公園に指定されている美しい川や海を汚しかねません。そこで草生栽培を行い、土が流出しないよう心がけています」。

草生栽培とは、ほ場に草を生やしたまま農作物を作る栽培方法のこと。雑草の力を利用するもので、草の根が地中深く入ることで土壌の浸食防止や有機物の補給による肥沃化に効果があります。土中の生き物や微生物を増やし、生物多様性にもつながります。
こうした自然の力による土作りを行い、さらに化学合成農薬の使用は可能な限り控えて、地元で生産される有機肥料(堆肥)を活用。
その取り組みが認められ、「三重県エコファーマー認定」および「三重の安心食材登録生産者」を取得。昨年は全国環境保全型農業推進コンクールで奨励賞を受賞しました。

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土実樹代表の溝口さん。「お客さんに“おいしいみかんだね”と言ってもらえるのが、一番うれしいです」

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直売店ではみかんのほか、農園産の柑橘類を使ったジュースやアイスクリーム、ジャムなどの加工品も販売。みかん味のソフトクリームも人気です

いろんな味わいのみかんを販売

土実樹では五ヶ所みかんの他にポンカン、デコタン、せとか、セミノール、甘夏など、一年を通じて10種類以上の柑橘類を栽培しています。
店頭での販売は、10月から5月にかけて。収穫したばかりの新鮮でおいしいみかんが購入できるため、地元の人はもちろん、京都や滋賀、名古屋など遠方からのお客さんも多いそう。
店頭には旬を迎えた色鮮やかなみかんが数種類並び、どれにしようか迷うほど。

「うちでは必ず試食してから決めてもらいます。味が濃いもの、酸味があるもの、甘いものとみなさんそれぞれに好みがありますし、納得したものを買ってもらいたいので。箱詰めのものも中身を確認してから購入できます」。

土実樹の農園はお店のすぐ近くにあり、広さは現在約7ヘクタール。農園内のどの畑で収穫されたものか、生産履歴もきちんと分かるようになっています。

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店頭に並ぶセミノール。果汁たっぷりでおいしいみかんです。取材時(6月上旬)はちょうど今シーズンの販売が終わる頃でした

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みかん種別のジュースも販売。みかんそのものの味が楽しめます。飲み比べてみるのも楽しい(写真提供 : 土実樹)

さわやかな香りと甘さで人気の「デコタン」

たくさんのみかんがある中で特に人気の高いのが、1月から3月にかけて収穫時期を迎えるデコタン。
清美という品種にポンカンを交配して作られた新しい品種で、さわやかな香りと濃厚な甘み、酸味が特徴。「不知火」や「でこぽん」とも呼ばれるもので、ひとつ約700グラムとずっしり。大きなものだとひとつ500円から1000円と高価なみかんです。

「お客さんが好まれる味とサイズに育てるのに苦労しましたね。味がのりにくいみかんなので、マルチシートを敷いて水を与える量を調整したり、太陽光を反射させて日照時間を増やしたり、いろんな工夫をして味の薄まらない甘くておいしいデコタンを育てています」と溝口さん。

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特徴のてっぺんの凸部分の大きいものが甘みが濃くおいしいとのこと。果皮が剥きやすく、薄皮も薄いのでみかんのようにそのまま食べられます(写真提供 : 土実樹)

南伊勢ブランド「でこたんようかん」

土実樹自慢のデコタンを使った、「でこたんようかん」という商品があります。
開発したのは、南伊勢町の地域活性化グループ「てんぷな会」。溝口さん、そしてあおさの記事で紹介したマサヤの田岡さんもこの会の一員です。開発の中心メンバー、田岡さんにお話を伺いました。

「一番難しかったのが、デコタンの一番の魅力である味と香りを損なわないようにすることでしたね。老舗和菓子屋の職人さんにお願いして何度も試作しました。デコタンは皮の部分に一番香りがあるので、皮をそのまま刻んでいれています。ジュースも加えているので、オレンジ色は自然のものです。香料や着色料などの添加物は一切入れず、上品な甘さと口当たりにこだわりました」

出来上がったのは、ぷるんとやわらかで、すっきりとした甘さとデコタンの香りが楽しめるさわやかな羊羹。従来の羊羹のイメージを覆す、楽しくておいしいお菓子です。
発売開始から10年が経ち、今では伊勢土産としても人気の商品に成長。伊勢神宮の遷宮年だった昨年は、年間20万個を販売したそう。魅力ある町産品として「南伊勢ブランド」にも認定されています。

まちおこしから生まれた商品は世の中にたくさんありますが、でこたんようかんやあおさ焼酎のように「わがまちの魅力や宝を、よい形のもので伝えたい」という、まちの人たちのまっすぐな思いから生まれたものは、広く人に届く力を持つことを感じさせてくれます。

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でこたんようかん4個入り660円。「羊羹らしくない羊羹を目指した」と田岡さん。土実樹直売店、マサヤ、三重県内の土産物店などで販売。ネット通販での購入も可能です

【でこたんようかんHP】

2014年6月6日取材時の情報です
ライター : 梅田美穂

お問い合わせ
施設名 農事組合法人 土実樹
住所 三重県度会郡南伊勢町五ヶ所浦3958
TEL 0599-66-1201
営業時間
定休日
E-mail tumiki@amigo2.ne.jp
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