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現存する日本最古のみりん専業メーカー 社員参加のもち米づくりプロジェクトに取り組む「九重味淋」
2013.09.25 更新

歴史と風格を感じさせる「九重味淋株式会社」の入り口。

創業は安永元(1772)年

「九重味淋」のある愛知県碧南市は、三河湾をのぞむ海浜地区だ。
隣は童話作家・新美南吉生誕の地である半田市。
古くから酒や酢などの醸造業が盛んで海運に恵まれ、江戸や大坂とも盛んに交易が行われていた。
あるとき、廻船問屋の石川八郎右衛門信敦は江戸でみりんがもてはやされているのを見聞し、
また全国各地からの情報で地元三河が本みりんの産地として適していると考え、自ら醸造に乗り出した。
時に安永元(1772)年、三河みりんの元祖「九重味淋」の誕生である。
八郎右衛門は製造したみりんを自分の船に積み込んで江戸に運んだ。
甘みがあってとろりとした本みりんは江戸時代には女酒とも呼ばれ、
女性がたしなむお酒として愛飲されていたという。
やがて、調味料としての旨味にそば屋や鰻屋が注目。本みりんは料理に欠かせない存在になっていった。
「九重味淋」の「淋」の字には“したたる”という意味があるそうだ。

「全国酒類品評会」で名誉大賞に輝く

「九重味淋」は碧南市の「臨海公園」のそばにあり、
その敷地は広大。高い塀が狭い路地に沿って延々と続く。
「昔は店に船を横付けして製品を運んだそうです」と、営業推進課の山崎達朗さん。
取材したのは8月半ば過ぎ。真夏の強烈な日差しが照りつける中、ちょっと歩くだけで汗が噴き出してくる。
駐車場に車を停め、クーラーの効いた涼しい部屋で「九重味淋」のDVDを視聴。
その後、山崎さんと同課係長の舟橋成彦さんとともにみりんを製造する蔵の中を案内していただいた。
蔵の入り口横には一斗甕(いっとがめ)と呼ばれる常滑焼の容器が
いくつもオブジェのように積み上げられていた。
昔はこの一斗甕にみりんを入れていたのだそう。
最初に訪れたのは蔵の2Fにある「九重みりん時代館」。
創業から現代にいたるまでの貴重な資料や写真、表彰状、文献、
製造に使われていた古道具などが整然と展示されている。
大正から昭和にかけて「全国酒類品評会」が行われていたが、
「九重味淋」の「九重櫻」はこの中で唯一、最高の「名誉大賞」に輝いており、
その伝統は今も脈々と受け継がれている。

蔵の前に立つ営業推進課係長の舟橋成彦さん(左)と同課の山崎達朗さん

蔵の2Fにある「九重みりん時代館」。
「全国酒類品評会」での名誉大賞の賞状ほか、九重味淋の歴史や貴重な資料を見ることができる

築300年の大蔵が醸す本みりん

みりんは酒類の中でも混成酒(再製酒)に分類される。
混成酒とは蒸留酒や醸造酒に果実や薬草、香辛料、甘味料などを加えたもので、
みりんの場合は、焼酎を原料に蒸したモチ米に米麹を混ぜたものを加え、
2カ月間ほど室温で熟成させた後、絞ってろ過する。
「九重味淋」のこだわりは、みりんの命ともいうべき甘味。
デンプン質が多く豊かな甘みを得られる国内産のモチ米に、自社で製造した香り高い米麹を加え、
清酒粕を蒸留して作った「粕とり焼酎」と合わせて攪拌。
こうしてできたもろみを「恩光蔵」と呼ばれる蔵に運び、櫂(かい)入れしながら2~3カ月かけて熟成させる。
恩光蔵には床板が張られ、タンクは半地下状態におかれている。
こうすることで、気温は常に18~20℃に保たれており、外の暑さが嘘のようだ。
やがて糖化熟成を終えたもろみは酒袋に詰められ、
槽(ふね)と呼ばれる圧搾機の中でゆっくりと2昼夜かけて搾られる。
「九重味淋」で使われている圧搾機は今では製造中止となってしまった昔ながらの「佐瀬式圧搾機」。
無理せず徐々に圧力をかけることで雑味が混じるのを防ぎ、みりん本来の味を保つことができるのだ。
搾り出された本みりんは半年から1年間大蔵の中で熟成され、
それぞれ微妙に異なる風味を均一化するためにタンクの中で混ぜあわされた後、ろ過される。
大蔵は築300年を経た黒塗総下見板張の土蔵造りの蔵。まさに、「九重味淋」の製造中枢。
蔵の中にはさまざまな微生物が住みつき、みりんの糖化熟成を助ける。
こうしてできあがった本みりんは黄金色の甘露。
いわゆるみりん風調味料とは比べ物にならない風味と旨味が溶け込んでいる。

(左)300年の歴史を持つ「大蔵」の外観。黒塗総下見板張の土蔵造りの蔵
(右)もろみの熟成を助けるために櫂入れを行いながら、2~3カ月半地下の状態にして寝かせておく。
温度は1年間を通じて18~20℃に保たれている

(左)糖化熟成したもろみを酒袋に入れて、「佐瀬式圧搾機」で2日間かけてゆっくりと絞る。
(右)搾った本みりんを半年から1年かけて寝かせる「大蔵」。
床から少し浮かせた状態で置いたタンクに木の蓋をかぶせている。
こうすることで、みりんが地面の温度から直接影響を受けるのを防ぎ、みりんが呼吸できるようにしている

「九重味淋」の代表銘柄「九重櫻」「三河本みりん」「本みりん」など。
「九重(ここのえ)」には、「幾重にも重なる」という意味のほかに「宮中」という意味もある。

三河みりん造りは原料のモチ米作りから

「九重味淋」では、5年前から社員教育の一環として、また地産地消を促進するために、
みりんの原料となる「モチ米づくりプロジェクト」に取り組むようになった。
「かつては地元産のモチ米で造られていた三河本みりんですが、
現在は地元での収量が少ないため、他地域で栽培されたモチ米を原料に製造されています。
わが社は三河地方はもちろん、現存する日本最古のみりんメーカー。
ならば一度原点に立ち戻ってモチ米づくりから始めてみようじゃないか
ということになったのです」と、舟橋さん。
現在はJAやモチ米生産者の協力を得て、ココノエモチやジュウゴヤモチという品種を栽培。
社員による田植えや草取りが行われている。
このプロジェクトを始めてから、社員のモチ米に対する見方や考え方も変わった。
「モチ米作りがこんなに手のかかるものだとは思わなかった」
「自然の恵みに感謝して、大切に使いたい」
「モチ米から自分たちで作っているので商品に対してよけい愛着がわく」という声が聞かれるようになった。
「これからも地産地消を意識して、三河みりんをPRしていきたいですね。
地元で採れた食材と合わせてお使いいただければとても嬉しいです」と、山崎さんは話してくれた。

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この冬、長良川まんぱくの取材の折、初めて「九重味淋株式会社」の「九重櫻」を知り、そのおいしさに感動。いつか必ず取材させていただきたいと思い、今回それが実現しました。自分たちで原料となるモチ米を栽培されているところもすばらしい。自分の店の商品がいかにして作られているかを知ることは社員としてもとても大切なことだと思いますし、そういう会社なら消費者としてはとても信頼できると思います。

(松島頼子)

施設情報

施設名 九重味淋株式会社
住所 愛知県碧南市浜寺町2丁目11番地
TEL&FAX TEL:0566-41-0708
FAX:0566-48-0993
URL 九重味淋株式会社

2013年8月21日現在の情報になります。

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