中部を動かすポータルサイトDochubu

トップページ 今月の特集 地元食を旅する DoChubuピックアップ アーカイブ

DoChubu

地域特産品のお茶の普及に取り組む、春日の小さなお茶農家「傳六茶園」
2013.07.10 更新

モザイク状の在来茶と整然と並んだやぶきたが共存する上ヶ流の茶畑

摘みたての新茶を味わう

5月19日(日)、薄曇りの空の下、
揖斐川町旧春日村にあるお茶農家「傳六茶園」主催のお茶摘み会が行われました。
この日の参加者は約40名。
大垣市をはじめ、岐阜市や遠くは東京都から来た人もあり、
ファミリーでの参加も多く見られました。
「傳六茶園」の森ひろみさんや里美さんなど女性たちがナビゲーターとなり、
まずは「春日モリモリ村」の駐車場に集合。そこから乗り合わせて、
「下ヶ流(しもがれ)茶工場」に移動し、荒茶ができるまでの工程を見学しました。

(左)「春日モリモリ村」駐車場で参加者に今日の日程を説明する森ひろみさんたち
(右)みんなで下ヶ流の茶工場に移動して見学

工場内は新茶の芳香が漂う

(左)揉捻機で茶の葉に力を加えることで水分を均一化する
(右)熱心に見学する子どもたち

(左)何回かに分けて揉みあげた茶葉を念入りに乾燥させる
(右)できあがったばかりの荒茶

荒茶とは仕上げ加工を施される前の状態のお茶をいいます。
お茶は荒茶の状態で工場から各製茶問屋に運ばれて選別・加工の後、
製品化されて市場に出ていきます。
湿度の高い空気を送りこんで加湿した生葉を蒸して冷却した後、
葉打ちをし、粗揉・揉捻・中揉・精揉といった順に機械で揉みほぐし、熱風を当てて乾燥。
水分含有率を5%程度にまで下げます。
こうすることで、お茶は長期保存に耐えうるようになり、香りも引き立つのです。
茶工場内にはお茶の香気が漂い、
子どもたちは機械の中でお茶がグルングルンと回る様子に目を輝かせていました。

この後、再び車で上ヶ流(かみがれ)地区に移動しました。
上ヶ流(かみがれ)地区は標高330mの高地にあり、人呼んで「日本のマチュピチュ」。
初めて訪れた人からは、まず間違いなくあまりの景観のすばらしさに歓声があがります。
ここには、在来茶の畑があります。
在来茶とは明治41年、静岡県の篤農家・杉山彦三郎が
「やぶきた」種を選抜する以前から日本に根付いていた昔ながらのお茶で、
地形の険しい春日では急峻な山の斜面に地中深くしっかりと根を張って風雪に耐え、
長い年月を生き抜いてきました。
こんもりと丸いモザイク状のかわいらしい樹形があちこちに出来ており、
整然としたヤブキタ種のお茶とならんで、春日の里を鮮やかな緑に彩ります。
今回はこの在来茶の畑で新茶摘みを体験。摘みたてのお茶の葉の天ぷらもふるまわれました。
お茶の新芽は摘んでも良し、食べてもおいしいのです。
郡上から来た歌唄い・井上博斗さんは
茶畑の間を歩きながら即興で茶摘み歌を歌い、場を盛り上げていました。
春日では在来・やぶきた共に一番茶しか摘み取りません。しかも、すべて無農薬栽培です。
最後に「傳六茶園」に寄って、手もみや焙烙(ほうろく)によるほうじ茶づくりを体験。
緑に囲まれた奥揖斐で、ゆったりまったりした1日を過ごすことができました。

新茶の芽を摘み取る参加者たち。最高級の茶葉は一芯二葉。
新芽の先端から2枚の葉がついたところだけを摘み取る

「こんなに採れたよ~!」

(左)「傳六茶園」入口 (右)お茶と一緒にハチミツやカリントウも販売

(左)お茶を窯煎りしてから、手もみ体験 (右)焙烙で煎茶を煎ってほうじ茶をつくる

(左)郡上から来た歌唄い・井上博斗さん。即興で茶摘み歌を唄い、場を盛り上げる
(右)茶器を焼く常滑焼の作家さんも茶摘み会に参加

茶園を盛り立てる、しっかり者の女性二人

現在「傳六茶園」でお茶の販売を担当するのは、
森里美さん、ひろみさんの義姉妹。二人は長男と次男のお嫁さんです。
物静かで控えめな里美さんは旧春日村香六の出身。実家はお茶農家で、
子どものころからお茶畑は身近な存在でした。
一方、ひろみさんは大垣市の出身。
社交性豊かで行動力のあるひろみさんは、5年前にご主人が退職して
ウインドサーフィンの店を始めたのをきっかけに、下ヶ流茶工場を手伝うようになりました。

「茶工場の手伝いをするようになってから、
お年寄りが一生懸命摘んできたお茶がとても安い値段で取り引きされている現実を知り、
お茶作りをやめる人が多いのも仕方がないんじゃないかなと思いましたが、
主人に『二人で動いてみたら、どうにかできるんじゃないか』と言われ、
おねえさんと二人でお茶の出張販売を始めたんです」と、話してくれました。
それまで、お茶の販売といえば、ほとんどが茶工場任せ。
最初はどこに売りに行ったらいいのかもわかりませんでしたが、
口コミを頼りに、岐阜市八幡神社で行われているてづくり市に出店。
「初めて自分たちの手で、直接お客様にお茶を売ることができました。
しかも、若い人たちの反応が良かった。
春日の奥地で無農薬で栽培しているお茶に興味を持ってくれたのが嬉しかったですね」

森里美さん(左)とひろみさん。女性二人で力を合わせ、販路を拡大

春日の在来茶を使って特産品を開発

以後、同じ揖斐郡内の旧久瀬村や旧坂内村の朝市などにも出店するようになり、
徐々に販路を拡大。100gのお茶50袋を売り切ることができました。
来シーズンはもう少し販売量を増やそうと考え、
ご主人が所属している揖斐川町商工会の研修に参加するうち、ネットワークも広がっていきました。
そんな時、池田町にある老舗和菓子屋「伊吹堂」や揖斐川町の「みわ屋」から、
「春日のお茶を使って特産品が作れないか」という話がありました。
こうして生まれたのが、こくのある大人の味で知られる「深煎りプリン」。
在来茶は「天空の古来茶」というネーミングでブランド化され、
二人は柳津や武芸川の道の駅、岐阜グランドホテル、南濃の道の駅などで、
お茶を販売するようになりました。
現在は名古屋市の「東別院手づくり朝市」などにも出店しています。

より多くの人たちに春日のお茶を飲んでもらいたい

お茶の販売を始めた当初は、どこへ行くにも二人一緒でした。
しかし、効率を考え、一人が販売、もう一人は茶畑の草取りというように、
分かれて行動するようになりました。
これによって、それまで一人で村の外に出ることのなかった里美さんも
積極的に販売に出かけるようになり、リピーターも増えてきました。
今回開催したお茶摘み会も今年で3回目。
最初は揖斐川町の商工会主催でしたが、現在は、自分たちで開催しています。

「理解ある地元の協力者の方々に助けられ、今年も無事開催することができました。
これからもたくさんの方々に春日のお茶を飲んでいただけるように頑張っていきたいです」と、
二人は笑顔で話してくれました。

編集員のココがオススメ!

揖斐川町を流れる粕川の源流に沿って広がる旧春日村は、緑豊かな揖斐川町の奥座敷。私の大好きな場所の一つです。急峻な山の斜面一帯に広がる在来茶の畑は、それは見事です。地域の伝統産業であるお茶をもっと多くの人たちに知ってもらいたいと、日々奮闘する二人の女性が支える「傳六茶園」。これからも末永く、頑張ってほしいです。

(松島頼子)

店舗情報

問い合わせ 傳六茶園
岐阜県揖斐郡揖斐川町春日六合936
定休日 日曜 ※臨時休業あり
TEL&FAX TEL:0585-57-2287
FAX:0585-57-2067
URL 傳六茶園

2013年5月19日現在の情報になります。

▼お店の場所を見る

トップに戻る
トップに戻る